【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に死亡した甲(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます。)の共同相続人は、いずれも甲の子である乙、丙及び丁の3名です。
(2) 甲は、甲が有する全ての財産を、乙及び丙に各2分の1の割合で相続させる旨の遺言書(以下「本件遺言書」といいます。)を作成しており、令和X年10月1日に、A家庭裁判所において検認手続がなされました。
(3) 乙及び丙は、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」といいます。)について、いずれも本件遺言書に基づき課税価格及び納付すべき相続税額を計算した上で、法定申告期限までに申告書を提出しました。
(4) 丁は、令和X+1年3月1日に、乙及び丙に対し、遺留分侵害額の請求をしたところ、同年8月1日に、乙及び丙と丁の間で、①乙及び丙が丁の遺留分を侵害していることを認め、②それぞれ丁に対し金銭を支払うことを主な内容とする合意が成立しました(以下、当該合意を「本件合意」といいます。)。
(5) 本件合意に基づき、①乙は、令和X+1年11月1日に、本件相続税の更正の請求書を提出し、②丙は、同年12月15日に、本件相続税の更正の請求書を提出しました(以下、乙が提出した当該請求書に係る請求を「本件乙更正請求」といい、丙が提出した当該請求書に係る請求を「本件丙更正請求」といいます)。
2 質疑事項
本件乙更正請求及び本件丙更正請求は、いずれも認められますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
相続税法第32条《更正の請求の特則》第1項柱書及び同項第3号は、相続税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことにより当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求(国税通則法第23条《更正の請求》第1項の規定による更正の請求をいいます。)をすることができる旨規定しています。
(2) 国税通則法関係
国税通則法第23条第1項本文及び同項第1号は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定しています。
2 裁判例等
(1) 相続税法第32条第1項の趣旨
相続税又は贈与税の納税申告書を提出した者の一般的な事由による更正の請求ができるのは、国税通則法第23条第1項に規定する場合(通常の場合)及び同条第2項に規定する場合(一般的な後発的事由に基づく場合)ですが、相続税又は贈与税については、同条第1項及び第2項に規定する事由に該当しない場合、すなわち、課税価格又は相続税額若しくは贈与税額が国税に関する法律の規定に従って計算されている場合、あるいは同法に規定する一般的な後発事由にも該当しない場合であっても、相続、遺贈又は贈与により財産を取得した者の負担の公平を図るため、課税価格又は税額を更正すべきであると認められる場合があり、相続税法第32条第1項は、その場合の相続税法特有の事由を規定しています。
(2) 国税不服審判所平成29年1月6日裁決
国税不服審判所平成29年1月6日裁決は、要旨、次のとおり裁決しています。
請求人らは、本件における各更正の請求は、相続税の法定申告期限から5年以内に行っているから、国税通則法第23条第1項所定の要件を満たす旨主張する。
しかしながら、国税通則法第23条第1項は、課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあった場合に更正の請求をすることができる旨規定しているところ、請求人らは、期限内申告時及び修正申告時において未分割財産がいまだ分割されていなかったため、相続税法第55条の規定に基づき、これを法定相続分の割合に従って取得したものとしてその課税価格を計算したものであり、この点について、国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は計算に誤りがあったとは認められないから、当該各更正の請求は、通則法第23条第1項所定の要件を満たすものではない。
3 回答
本件合意が成立したのは、令和X+1年8月1日であるところ、ほかに遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したのが同日以外であると認める証拠もないから、令和X+1年8月1日に、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したものと認められます。
そうすると、本件乙更正請求は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日の翌日から4月以内になされたものと認められますが、本件丙更正請求は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日の翌日から4月以内になされたものとは認められません(本件丙更正請求は、上記2の(2)のとおり、国税通則法第23条第1項に基づく更正の請求にも該当しません。)。
したがって、本件乙更正請求は認められますが、本件丙更正請求は認められないものと考えられます。
作成日:令和7年9月24日
