【質疑内容】
貸し付けられている農地の評価について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
相続税法第23条《地上権及び永小作権の評価》は、地上権(借地借家法に規定する借地権又は民法第269条の2《地下又は空間を目的とする地上権》第1項の地上権に該当するものを除きます。)及び永小作権の価額は、その残存期間に応じ、その目的となっている土地のこれらの権利を取得した時におけるこれらの権利が設定されていない場合の時価に、残存期間が10年以下のものは100分の5など、同条に規定する所定の割合を乗じて算出した金額による旨定めています。
(2) 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)関係
イ 評価通達41《貸し付けられている農地の評価》は、耕作権、永小作権等の目的となっている農地の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる旨定めています。
(イ) 耕作権の目的となっている農地の価額は、評価通達37《純農地の評価》から評価通達40《市街地農地の評価》までの定めにより評価したその農地の価額(以下「自用地としての価額」といいます。)から、評価通達42《耕作権の評価》の定めにより評価した耕作権の価額を控除した金額によって評価する。
(ロ) 永小作権の目的となっている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、相続税法第23条の規定により評価した永小作権の価額を控除した金額によって評価する。
(ハ) 区分地上権の目的となっている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、評価通達43-2《区分地上権の評価》の定めにより評価した区分地上権の価額を控除した金額によって評価する。
(ニ) 区分地上権に準ずる地役権の目的となっている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、評価通達43-3《区分地上権に準ずる地役権の評価》の定めにより評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって評価する。
ロ 評価通達42《耕作権の評価》は、耕作権の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる旨定めています。
(イ) 純農地及び中間農地に係る耕作権の価額は、評価通達37及び38《中間農地の評価》に定める方式により評価したその農地の価額に、評価通達別表1に定める耕作権割合(耕作権が設定されていないとした場合の農地の価額に対するその農地に係る耕作権の価額の割合をいいます。以下同じ。)を乗じて計算した金額によって評価する。
(ロ) 市街地周辺農地、市街地農地に係る耕作権の価額は、その農地が転用される場合に通常支払われるべき離作料の額、その農地の付近にある宅地に係る借地権の価額等を参酌して求めた金額によって評価する。
ハ 評価通達43-2は、農地に係る区分地上権の価額は、評価通達27-4《区分地上権の評価》の定めを準用して評価する旨定めています。
ニ 評価通達43-3は、農地に係る区分地上権に準ずる地役権の価額は、その区分地上権に準ずる地役権の目的となっている承役地である農地の自用地としての価額を基とし、評価通達27-5《区分地上権に準ずる地役権の評価》の定めを準用して評価する旨定めています。
2 回答
(1) 貸し付けられている農地の評価の評価
イ 永小作権とは、民法第270条《永小作権の内容》に規定する小作料を支払って他人の土地に耕作又は牧畜をなす権利をいい、耕作権とは、賃借権に基づいて土地を耕作することができる権利をいいます。また、区分地上権とは、民法第269条の2《地下又は空間を目的とする地上権》に規定する地下又は空間を目的とする地上権をいい、区分地上権に準ずる地上権とは、地価税法施行令第2条《借地権等の範囲》第1項に規定する特別高圧架空電線の架設等を目的として地下又は空中について上下の範囲を定めて設定されたもので、建造物の設置を制限するものをいいます。
ロ そして、貸し付けられている農地の価額は、自用地としての価額から、①耕作権の目的となっている農地の場合には耕作権の価額を控除した金額によって、②永小作権の目的となっている農地の場合には相続税法第23条の規定により評価した永小作権の価額を控除した金額によって、③区分地上権の目的となっている農地の場合には評価通達43-2の定めにより評価した区分地上権の価額を控除した金額によって、及び④区分地上権に準ずる地役権の目的となっている農地の場合には評価通達43-3の定めにより評価した区分地上権に準ずる地役権の価額を控除した金額によって、それぞれ評価することとなります。
なお、農地に賃借権等の権利を設定するためには農地法第3条の定めるところにより原則として農業委員会の許可を受けなければならないため、いわゆるやみ小作については耕作権の価額を控除して評価することはできません。
(2) 生産緑地地区内の農地を特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の定めるところにより地方公共団体に市民農園として貸し付けている場合の農地の評価
生産緑地地区内の農地を特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の定めるところにより地方公共団体に市民農園として貸し付けている場合の当該市民農園は、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律に規定する特定農地貸付けの用に供するためのものであり、農地所有者と農地の借手である地方公共団体との間で行われる賃貸借及び当該地方公共団体と市民農園の借手である住民との間で行われる賃貸借については、農地法第18条《農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限》に定める賃貸借の解約制限の規定の適用はないものとされています。
したがって、当該市民農園の用に供されている農地は耕作権の目的となっている農地には該当しないため、当該市民農園は、生産緑地としての利用制限に係る斟酌と賃貸借契約の期間制限に係る斟酌とを行って評価することとなります。この場合の、賃貸借契約の期間制限に係る斟酌は、原則として、評価通達87《賃借権の評価》(2)の定めに準じて、賃借権の残存期間に応じ、その賃借権が地上権であるとした場合に適用する法定地上権割合の2分の1に相当する割合とされています。
ただし、次の要件の全てを満たす市民農園の用に供されている農地については、残存期間が20年以下の法定地上権割合に相当する20%の斟酌をすることとして差し支えないとして取り扱われており、この場合には、相続税又は贈与税の申告書に、①土地の賃貸借契約書及び相続人等からの継続貸し付け同意申出書など、次の要件を充足することを明らかにする書類を添付する必要があります。
なお、生産緑地地区内の農地で、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律の定めるところにより地方公共団体以外の者に市民農園として貸し付けられている農地及び都市農地の貸借の円滑化に関する法律の定めるところにより市民農園として貸し付けられている農地についても、同様に生産緑地としての利用制限に係る斟酌と賃貸借契約の期間制限に係る斟酌とを行うこととなります。
イ 地方自治法第244条の2の規定により条例で設置される市民農園であること
ロ 土地の賃貸借契約に次の事項が定められ、かつ、相続税及び贈与税の課税時期後において引き続き市民農園として貸し付けられること
(イ) 貸付期間が20年以上であること
(ロ) 正当な理由がない限り貸付けを更新すること
(ハ) 農地所有者は、貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないこと
(3) 特定市民農園の用地として貸し付けられている土地の評価
イ 特定市民農園とは、次の各基準のいずれにも該当する借地方式による市民農園であって、都道府県及び政令指定都市が設置するものは農林水産大臣及び建設大臣から、その他の市町村が設置するものは都道府県知事からその旨の認定書の交付を受けたものをいいます。
(イ) 地方公共団体が設置する市民農園整備促進法第2条第2項の市民農園であること
(ロ) 地方自治法第244条の2第1項に規定する条例で設置される市民農園であること
(ハ) 当該市民農園の区域内に設けられる施設が、市民農園整備促進法第2条第2項第2号に規定する市民農園施設のみであること
(ニ) 当該市民農園の区域内に設けられる建築物の建築面積の総計が、当該市民農園の敷地面積の100分の12を超えないこと
(ホ) 当該市民農園の開設面積が500㎡以上であること
(ヘ) 市民農園の開設者である地方公共団体が当該市民農園を公益上特別の必要がある場合その他正当な事由なく廃止(特定市民農園の要件に該当しなくなるような変更を含む。)しないこと
(ト) 土地所有者と地方公共団体との土地貸借契約に次の事項の定めがあること
A 貸付期間が20年以上であること
B 正当な事由がない限り貸付けを更新すること
C 土地所有者は、貸付けの期間の中途において正当な事由がない限り土地の返還を求めることはできないこと
ロ 特定市民農園の用地として貸し付けられている土地の評価
特定市民農園の用地として貸し付けられている土地の価額は、その土地が特定市民農園の用地として貸し付けられていないものとして、評価通達の定めにより評価した価額から、その価額に100分の30を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価することとなります。
なお、この取扱いの適用を受けるに当たっては、相続税又は贈与税の申告書に、当該土地が課税時期において特定市民農園の用地として貸し付けられている土地に該当する旨の地方公共団体の長の証明書(相続税又は贈与税の申告期限までに、その土地について権原を有することとなった相続人、受遺者又は受贈者全員から当該土地を引き続き当該特定市民農園の用地として貸し付けることに同意する旨の申出書の添付があるものに限る。)を添付する必要があります。
(4) 農用地利用集積計画の公告による賃借権に基づき貸し付けられている農地の評価
農用地利用集積計画の公告による賃借権に係る賃借権は、農地法第17条《農地又は採草放牧地の賃貸借の更新》本文の賃貸借の法定更新などの適用が除外されており、耕作権としての強い権利が生じるものではないものの、一般の賃借権と同様に、私法上の保護を受けていることから、この農用地利用集積計画の公告による賃借権に基づき貸し付けられている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、その価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することとなります。
なお、その賃貸借に基づく賃借権の価額(その農地の自用地としての価額の100分の5相当額)については、相続税又は贈与税の課税価格に算入する必要はありません。
(5) 農地中間管理機構に賃貸借により貸し付けられている農地の評価
農地中間管理機構に貸し付けられている農地の賃貸借は、農地法第17条本文の賃貸借の法定更新の規定の適用が除外され、また、同法第18条第1項本文の規定の適用が除外されるなど、耕作権としての強い権利が生じるものではないものの、一般の賃借権と同様に、私法上の保護を受けていることから、農地中間管理機構に賃貸借により貸し付けられている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、その価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することとなります。
なお、農地法第3条第1項第14号の2の規定に基づき農地中間管理機構に貸し付けられている農地のうち、賃貸借期間が10年未満のものについては、農地法第17条本文及び同法18条第1項本文の規定が適用されるため、耕作権の目的となっている農地として評価することとなります。また、その賃貸借に基づく賃借権の価額(その農地の自用地としての価額の100分の5相当額)については、相続税又は贈与税の課税価格に算入する必要はありません。
(6) 認定事業計画に基づき貸し付けられている農地の評価
都市農地の貸借の円滑化に関する法律第4条の認定を受けた事業計画(以下「認定事業計画」といいます。)に従って賃借権が設定されている農地の賃貸借は、都市農地の貸借の円滑化に関する法律第8条により、農地法第17条本文の賃貸借の法定更新などの適用が除外されており、耕作権としての強い権利が生じるものではないものの、一般の賃借権と同様に、私法上の保護を受けていることから、認定事業計画に従って賃借権が設定されている農地については、その農地の自用地としての価額から、その価額に100分の5を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することとなります。
なお、都市農地の貸借の円滑化に関する法律は、原則として、生産緑地法第3条第1項の規定により定められた生産緑地地区の区域内の農地を対象としていることから、その農地の自用地としての価額は、財産評価基本通達40-3《生産緑地の評価》により評価した価額になります。また、その賃貸借に基づく賃借権の価額(その農地の自用地としての価額の100分の5相当額)については、相続税又は贈与税の課税価格に算入する必要はありません。
(7) 10年以上の期間の定めのある賃貸借により貸し付けられている農地の評価
農地について10年以上の期間の定めのある賃貸借は、農地法第18条第1項本文の適用が除外されており、耕作権としての強い権利が生じるものではないものの、一般の賃借権と同様に、私法上の保護を受けていることから、10年以上の期間の定めのある賃貸借により貸し付けられている農地の価額は、その農地の自用地としての価額から、その価額の100分の5を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価することとなります。
なお、その賃貸借に基づく賃借権の価額(その農地の自用地としての価額の100分の5相当額)については、相続税又は贈与税の課税価格に算入する必要はありません。
作成日:令和7年9月24日
