【質疑内容】
財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)183の(2)に定める非経常的な利益の判断基準について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
評価通達183《評価会社の1株当たりの配当金額等の計算》の柱書は、評価通達180《類似業種比準価額》の評価会社の「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの利益金額」及び「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」は、それぞれ次による旨定め、その(2)の本文は、「1株当たりの利益金額」は、直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除きます。)に、その所得の計算上益金に算入されなかった剰余金の配当(資本金等の額の減少によるものを除きます。)等の金額(所得税額に相当する金額を除きます。)及び損金に算入された繰越欠損金の控除額を加算した金額(その金額が負数のときは、零とする。)を、直前期末における発行済株式数で除して計算した金額とする旨定め、そのただし書は、納税義務者の選択により、直前期末以前2年間の各事業年度について、それぞれ法人税の課税所得金額を基とし上記に準じて計算した金額の合計額(その合計額が負数のときは、零とする。)の2分の1に相当する金額を直前期末における発行済株式数で除して計算した金額とすることができる旨定めています。
2 裁判例等
東京地方裁判所令和元年5月14日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
(1) 評価通達183の(2)において、法人税の課税所得金額を基として1株当たりの利益金額を算定することとされているのは、評価会社と上場株式の発行会社の利益計算の窓意性を排除し、両者の利益金額について、同一の算定基準によって計算した実質利益の額を基として比較するのが合理的であることによるものと解される。また、評価会社の利益金額の計算上、固定資産の売却益や火災の際の保険差益などの非経常的な利益を除外することとされているが、これは、類似業種比準方式における比準要素としての利益金額について、評価会社の経常的な収益力を表すものを採用し、これと類似業種の利益金額とを比較対照して、評価会社の経常的収益力を株式の価額に反映させるためである。
(2) このように、評価通達183の(2)は、類似業種の利益金額と比較した評価会社の経常的収益力を適切に株価に反映させるために、偶発的な利益を除外することを定めたものというべきであるから、評価通達183の(2)が評価会社の「1株当たりの利益金額」の算定に際して除外される「非経常的な利益」として固定資産売却益や保険差益を挙げているのも、これらの利益が通常は偶発的な取引によるものであることからその例として示したものにすぎず、これらの利益は、飽くまでも偶発的な取引による非経常的な利益に当たる場合に除外されるものと解すべきである。
(3) そして、ある利益が評価会社の「1株当たりの利益金額」の計算に際して除外される非経常的な利益に当たるか否かは、その利益が固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断すべきものではなく、評価会社の事業の内容、当該利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮した上で、実質的に判断するのが相当であると解される。
(4) 固定資産売却益であっても、毎期継続的に売買が繰り返されるような固定資産の売却益の場合には、その利益が会社の経常的収益力を構成することは明らかであるから、評価通達183の(2)について固定資産売却益が常に非経常的な利益に当たることを定めたものと解することはできない。また、評価通達183の(2)の趣旨は、上記のとおり評価会社の経常的収益力を適切に評価することにあるところ、評価通達の適用上、上記のように非経常的な利益であるとはいえない固定資産売却益を控除する取扱いをした場合には、評価会社の経常的収益力を過小に評価することとなり、適正な株価を算定するという同通達の趣旨から逸脱することになることからも、同通達183の(2)が固定資産売却益を課税所得金額から控除すべき旨を定めたものということもできない。
3 回答
評価通達183の(2)に定める非経常的な利益の判断基準について、上記2のとおり、ある利益が評価会社の「1株当たりの利益金額」の計算に際して除外される非経常的な利益に当たるか否かは、その利益が固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断すべきものではなく、評価会社の事業の内容、当該利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮した上で、実質的に判断するのが相当であると考えられます。
したがって、例えば、固定資産売却益であっても、毎期継続的に売買が繰り返されるような固定資産の売却益の場合には、その利益が会社の経常的収益力を構成することは明らかであることから、非経常的な利益には該当しないものと考えられます。
作成日:令和7年9月24日
