【質疑内容】
土地の売却に際して支払った抵当権抹消に係る登記費用は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の譲渡に要した費用(以下「譲渡費用」といいます。)となりますか。また、住所変更登記に係る登記費用は、譲渡費用となりますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 所得税法第33条《譲渡所得》第3項は、譲渡所得の金額は、その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及び譲渡費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定しています。
(2) 所得税基本通達33-7《譲渡費用の範囲》は、所得税法第33条第3項に規定する譲渡費用とは、資産の譲渡に係る次に掲げる費用(取得費とされるものを除きます。)をいう旨定め、その注書は、譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する旨定めています。
イ 資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用
ロ イに掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含みます。以下同じ。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用
2 裁判例等
(1) 最高裁判所平成18年4月20日第一小法廷判決は、要旨、次のとおり判断しています。
譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会に、これを清算して課税する趣旨のものである。
しかしながら、所得税法上、抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっているわけではなく、原則として、資産の譲渡により実現した所得が課税の対象となっているものである。そうであるとすれば、資産の譲渡に当たって支出された費用が所得税法第33条第3項にいう譲渡費用に当たるかどうかは、一般的、抽象的に当該資産を譲渡するために当該費用が必要であるかどうかによって判断するのではなく、現実に行われた資産の譲渡を前提として、客観的に見てその譲渡を実現するために当該費用が必要であったかどうかによって判断すべきものである。
(2) 国税不服審判所平成16年9月16日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。
譲渡所得の金額の計算上控除すべき譲渡費用とは、譲渡資産を譲渡するために直接要した費用及び譲渡資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用をいうものと解されるところ、抵当権抹消登記費用は債務の弁済等により担保される債権が消滅したことに基因して生じる費用であり、土地を譲渡するために直接要した費用及び土地の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用には該当しない。
3 回答
(1) 土地の売却に際して支払った抵当権抹消に係る登記費用は、債務の弁済等により担保される債権が消滅したことに基因して生じる費用であり、土地を譲渡するために直接要した費用とは認められないため、譲渡費用とはなりません(土地の売買に係る契約書の契約内容に基づき支出したものであるとしても、債権者に対する抵当債権消滅の結果、抵当権設定者である自己のためになしたものであるから、譲渡を実現するために直接必要な費用とは認められません。)。
(2) また、氏名や住所変更登記に係る費用は、所有者の氏名や住所が変更された際に、その事実を法務局に登記する手続ですが、氏名や住所変更登記は土地の譲渡そのものに直接関係する費用ではなく、土地を譲渡するために直接要した費用とは認められないため、譲渡費用とはなりません。
作成日:令和7年9月24日
