【質疑内容】
甲は、令和X年中に、〇〇市〇〇町〇丁目〇番地に所在する家屋及びその敷地(以下、当該家屋及び当該敷地を併せて「本件不動産」といいます。)を譲渡し、令和X年分の所得税及び復興特別所得税について、当該譲渡に係る譲渡所得の金額を計算した上で、法定申告期限までに申告書を提出しました。
甲は、令和X+1年8月に至り、本件不動産の譲渡に租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)第35条第1項に規定する居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を適用することを失念しており、更正の請求をしようと考えていますが、当該更正の請求は認められますか(居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の適用要件を充足しているものとします。)。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 国税通則法関係
国税通則法第23条《更正の請求》第1項柱書及び同項第1号は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定しています。
(2) 措置法関係
イ 措置法第35条第1項柱書及び同項第1号並びに同条第2項柱書及び同項第1号は、個人の有する資産が、その居住の用に供している家屋で政令で定めるものの譲渡又は当該家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)の譲渡をした場合に該当することとなった場合には、その年中にその該当することとなった全部の資産の譲渡に対する措置法第31条《長期譲渡所得の課税の特例》第1項に規定する長期譲渡所得の金額から3,000万円(長期譲渡所得の金額のうち当該資産の譲渡に係る部分の金額が3,000万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除する旨規定しています(以下、措置法第35条第1項に規定する課税の特例を「本件特例」といいます。)。
ロ 措置法第35条第12項は、同条第1項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨その他の財務省令で定める事項の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する旨規定しています。
ハ 措置法第35条第13項は、措置法第35条第12項は、税務署長は、確定申告書の提出がなかった場合又は同条第12項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があった場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があった場合に限り、同条第1項の規定を適用することができる旨規定しています。
2 回答
本件特例の適用を受けるためには、措置法第35条第12項の規定により、その譲渡があった日の属する年分の確定申告書に本件特例の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、本件特例の適用に係る書類の添付が必要であるところ、甲が提出した当初の申告書や譲渡所得の内訳書には、本件特例の適用を受けようとする旨の記載及び所定の書類の添付がなかったものと認められます。
また、本件特例の適用を受けるためには、当初申告要件を充足する必要があることから、本件特例の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、本件特例の適用に係る書類の添付がある更正の請求書を提出したとしても、措置法第35条第12項に規定する「やむを得ない事情」がない限り、本件特例の適用は認めらません。
さらに、措置法第35条第12項に規定する「やむを得ない事情」とは、天災、交通途絶その他本人の責めに帰すことができない客観的事情をいうところ、甲は、失念していたのみであり、単なる税法の不知という甲の主観的な事情にすぎないことから、同項に規定する「やむを得ない事情」があったとは認められません。
そして、国税通則法第23条第1項第1号は、申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときに適用することができるところ、甲が提出した当初の申告書にこれらのことはいずれも認められません。
したがって、甲が更正の請求をしたとしても、本件特例を適用することは認められないものと考えられます。
【参考】
1 税法に当てはめて、厳格に解釈すると、上記の回答のとおりとなります。すなわち、措置法に規定する譲渡所得の課税の各種特例などには、多くの場合、本件特例と同様、当初申告要件が適用要件の一つとされており、また、これらの各種特例は、原則として、選択適用であり、選択する場合には、当初申告において選択した上で、各種特例を適用する旨の申告をしなければなりません。
2 ところで、「昭和43年改正税法のすべて」には、宥恕規定の拡充として、次のとおり記述されています。
「従来、確定申告害の提出または確定申告書への記載がない場合であっても、税務署長においてやむを得ない事情があると認めるときは、更正、決定を受けるまでの間に―定の書類を提出することを条件として特例を適用できることとされていた収用等の場合の課税の特例等譲渡所得に関する特例措置については、更正、決定までの間ととくに期間を限定する理由に乏しく、また、法の無知に対する救済措置はできるだけ緩和すべきであるという意見もあること等の事情を考慮して、更正、決定を受けた後においても、 所要の書類の提出があれば、特例を適用できることとされました。」
3 譲渡所得の各種特例の適用における「やむを得ない事情」とは、天災、交通途絶その他本人の責めに帰すことのできない客観的事情と解されるところ、上記「昭和43年改正税法のすべて」の記載の考え方、すなわち、「昭和43年改正税法のすべて」においては、譲渡所得の各種特例に関しての宥恕規定は、法の無知に対する救済措置でもあるということが基本的な考え方とされており、この趣旨も踏まえ、課税庁においては、実務上、翌年分以降にも影響を及ぼすような特例などを除き、税法の不知や事実の誤認などの納税者の主観的事情についてもこれに含まれるものとして取り扱っているようです。
本質疑のような事例があった場合には、課税庁である税務署に相談してはいかがでしょうか。
作成日:令和7年9月24日
