【質疑内容】
被相続人の医療費に係る相続税の債務控除と所得税の医療費控除について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
イ 相続税法第13条《債務控除》第1項は、相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限ります。)により財産を取得した者が同法第1条の3《相続税の納税義務者》第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定しています。
(イ) 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)(第1号)
(ロ) 被相続人に係る葬式費用(第2号)
ロ 相続税法第14条第1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定しています。
(2) 所得税法関係
イ 所得税法第73条《医療費控除》第1項は、居住者が、各年において、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合において、その年中に支払った当該医療費の金額(保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額を除きます。)の合計額がその居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額の100分の5に相当する金額(当該金額が10万円を超える場合には、10万円)を超えるときは、その超える部分の金額(当該金額が200万円を超える場合には、200万円)を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額から控除する旨規定し、同条第3項は、同条第1項の規定による控除は、医療費控除という旨規定しています。
ロ 所得税基本通達73-1《生計を一にする親族に係る医療費》は、所得税法第73条第1項に規定する「自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費」とは、医療費を支出すべき事由が生じた時又は現実に医療費を支払った時の現況において居住者と生計を一にし、かつ、親族である者に係る医療費をいう旨定めています。
ハ 所得税基本通達73-2《支払った医療費の意義》は、所得税法第73条第1項に規定する「その年中に支払った当該医療費」とは、その年中に現実に支払った医療費をいうのであるから、未払となっている医療費は現実に支払われるまでは控除の対象とならないことに留意する旨定めています。
2 回答
(1) 相続税における債務控除の要件及び所得税における医療費控除の要件
イ 相続税における債務控除の要件
相続税における債務控除の要件は次のとおりですが、相続を放棄した者、制限納税義務者及び特定受遺者が被相続人の医療費を負担したとしても、相続税の課税価格の計算上、債務控除をすることはできないことに留意してください。
(イ) 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含みます。)であること。
(ロ) 当該債務は確実と認められるものであること。
ロ 所得税における医療費控除の要件
所得税における医療費控除の要件は次のとおりです。
(イ) 納税者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払ったこと。
(ロ) その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること。
(2) 被相続人の医療費に係る相続税の債務控除と所得税の医療費控除
イ 被相続人の相続開始前に支払った医療費
(イ) 被相続人が負担した場合
被相続人の相続開始前に支払った医療費で被相続人が当該医療費を負担していた場合には、相続開始時点において、未払医療費はないため、相続税の課税価格の計算上債務控除をすることはできません。
なお、被相続人の相続開始前に支払った医療費で被相続人が当該医療費を負担していた場合には、被相続人の所得税の準確定申告において、医療費控除の対象とすることができます。
(ロ) 相続人が負担した場合
被相続人の相続開始前に支払った医療費で相続人が当該医療費を負担していた場合には、相続開始時点において、未払医療費はないため、相続税の課税価格の計算上債務控除をすることはできません(ただし、相続人が単に立て替えて支払ったにすぎない場合には、被相続人の債務で相続開始の際現に存するものであり、かつ、確実と認められるものであることから、被相続人の当該相続人に対する未払金として、相続税の課税価格の計算上債務控除をすることができます。)。
なお、被相続人の相続開始前に支払った医療費で相続人が当該医療費を負担していた場合には、自己と生計を一にする親族に係る医療費は、医療費を支出すべき事由が生じた時又は現実に医療費を支払った時の現況において自己と生計を一にする親族に係る医療費をいうことから、被相続人と生計を一にしていた相続人の医療費控除の対象となります。
ロ 被相続人の相続開始後に支払った医療費
(イ) 被相続人の相続開始後に支払った医療費は、被相続人の債務で相続開始の際現に存するものであり、かつ、確実と認められるものであることから、相続税の課税価格の計算上債務控除をすることができます。
(ロ) その年の医療費控除の対象となる医療費の金額は、その年中に実際に支払われた金額に限られることから、被相続人の死亡後に支払われた医療費は、仮に相続財産から支払われたとしても、被相続人の準確定申告において、医療費控除の対象とすることはできません。
他方、自己と生計を一にする親族に係る医療費は、医療費を支出すべき事由が生じた時又は現実に医療費を支払った時の現況において自己と生計を一にする親族に係る医療費をいうことから、被相続人と生計を一にしていた相続人の医療費控除の対象となります。
作成日:令和7年9月24日
