【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年2月1日に死亡した甲(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます。)の共同相続人は、甲の配偶者である乙並びにいずれも甲の子である丙及び丁の3名です。
(2) 甲の相続財産は総額124,000千円ですが、丙は、平成X年3月1日に、甲から、生計の資本としてA土地(贈与時の価額:10,000千円、相続開始時の価額12,000千円)を贈与により取得しており、また、丁は、令和X-2年4月1日に、甲から、生計の資本としてB土地(贈与時の価額:13,000千円、相続開始時の価額14,000千円)を贈与により取得しています(丙及び丁は、いずれも暦年課税方式により贈与税の申告をしています。)。
(3) 本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」といいます。)の法定申告期限は、令和X年12月1日ですが、それまでに遺産分割協議が成立する見込みはありません。
2 質疑事項
乙、丙及び丁は、本件相続税の課税価格をどのように計算すればよいですか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法第27条《相続税の申告書》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨規定しています。
(2) 相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》本文は、相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2《寄与分》を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする旨規定しています。
(3) 相続税法基本通達55-1《「民法の規定による相続分」の意義》は、相続税法第55条本文に規定する「民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分」とは、民法第900条から第902条まで及び第903条に規定する相続分をいうのであるから留意する旨定めています。
2 回答
(1) 被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者は、当該財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合には、相続の開始があった日の翌日から10月以内に、相続税の申告書を、被相続人の死亡の時における住所地を所轄する税務署長に提出しなければならず、相続財産が分割されていない場合であっても、相続税の申告期限が延長されることはなく、上記の期限までに提出しなければなりません。
そのため、相続財産の遺産分割協議が成立していないときは、各相続人などが民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして相続税の課税価格を計算することとなります。
なお、相続財産が未分割の場合には、相続税の特例である小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や配偶者の税額の軽減の規定などは適用できません(民法に規定する相続分又は包括遺贈の割合で申告した後に、相続財産の分割が行われ、その分割に基づき計算した税額と申告した税額とが異なるときは、実際に分割した財産の額に基づいて修正申告又は更正の請求をすることができます。)。
(2) 相続税法基本通達55-1は、相続税法第55条本文に規定する民法の規定による相続分を明らかにしたもので、同法第900条は法定相続分の規定、同法第901条は代襲相続人の相続分の規定、同法第902条は被相続人による相続分の指定に関する規定及び同法第903条は共同相続人中に被相続人から生前贈与や遺贈を受けた者がいる場合の特別受益者の相続分に関する規定です。
(3) 質疑の場合は、共同相続人中に特別受益者がいることから、次のとおりとなります。
イ 民法第903条の規定による相続分の価額
(イ) 相続財産(未分割財産)の価額
124,000千円
(ロ) 特別受益の価額(相続開始時の価額)
12,000千円(丙の贈与分)+14,000千円(丁の贈与分)=26,000千円
(ハ) みなす相続財産の価額
124,000千円+26,000千円=150,000千円
(ニ) 具体的な相続分の価額
乙:150,000千円×1/2=75,000千円
丙:150,000千円×1/2×1/2-12,000千円=25,500千円
丁:150,000千円×1/2×1/2-14,000千円=23,500千円
ロ 本件相続税の課税価格
乙:75,000千円
丙:25,500千円
丁:23,500千円+13,000千円(相続税法第19条による加算額)=37,000千円
作成日:令和7年9月24日
