相続税対策(生前贈与)

1 関係法令

(1) 暦年課税方式による贈与

イ 相続税法第19条《相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前7年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産(同法第21条の2《贈与税の課税価格》第1項から第3項まで、第21条の3《贈与税の非課税財産》及び第21条の4《特定障害者に対する贈与税の非課税》の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの(特定贈与財産を除きます。)に限ります。以下「加算対象贈与財産」といいます。)の価額(加算対象贈与財産のうち当該相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、同法第15条《遺産に係る基礎控除》から第18条《相続税額の加算》までの規定を適用して算出した金額(加算対象贈与財産の取得につき課せられた贈与税があるときは、当該金額から当該財産に係る贈与税の税額(同法第21条の8《在外財産に対する贈与税額の控除》の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。)として政令の定めるところにより計算した金額を控除した金額)をもって、その納付すべき相続税額とする旨規定しています。

ロ 相続税法第19条第2項は、同条第1項に規定する特定贈与財産とは、同法第21条の6《贈与税の配偶者控除》第1項に規定する婚姻期間が20年以上である配偶者に該当する被相続人からの贈与により当該被相続人の配偶者が取得した同項に規定する居住用不動産又は金銭で次に掲げる場合に該当するもののうち、次に掲げる場合の区分に応じ、次に定める部分をいう旨規定しています。

() 当該贈与が当該相続の開始の年の前年以前にされた場合で、当該被相続人の配偶者が当該贈与による取得の日の属する年分の贈与税につき相続税法第21条の6第1項の規定の適用を受けているときは、同項の規定により控除された金額に相当する部分(第1号)

() 当該贈与が当該相続の開始の年においてされた場合で、当該被相続人の配偶者が当該被相続人からの贈与について既に同法第21条の6第1項の規定の適用を受けた者でないとき(政令で定める場合に限ります。)は、同項の規定の適用があるものとした場合に、同項の規定により控除されることとなる金額に相当する部分(第2号)

(2) 相続時精算課税方式による贈与

イ 相続税法第21条の15第1項は、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で同法第21条の9《相続時精算課税の選択》第3項の規定の適用を受けるもの(同法第21条の2第1項から第3項まで、第21条の3、第21条の4及び第21条の10《相続時精算課税に係る贈与税の課税価格》の規定により当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限ります。)の価額から同法第21条の11の2《相続時精算課税に係る贈与税の基礎控除》第1項の規定による控除をした残額を相続税の課税価格に加算した価額をもって、相続税の課税価格とする旨規定しています。

ロ 相続税法第21条の15第3項は、同条第1項の場合において、同法第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(同法第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。)に相当する金額を控除した金額をもって、その納付すべき相続税額とする旨規定しています。

ハ 相続税法第21条の16第1項は、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で同法第21条の9第3項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第1節《相続税》の規定を適用する旨規定しています。

ニ 相続税法第21条の16第3項は、同条第1項の規定により特定贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされた財産に係る第1節の規定の適用については、次に定めるところによる旨規定しています。

() 当該財産の価額は、相続税法第21条の16第1項の贈与の時における価額とする(第1号)。

() 当該財産の価額から相続税法第21条の11の2第1項の規定による控除をした残額を同法第11条の2の相続税の課税価格に算入する(第2号)。

ホ 相続税法第21条の16第4項は、同条第1項の場合において、同法第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産につき課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額(同法第21条の8の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。)に相当する金額を控除した金額をもって、その納付すべき相続税額とする旨規定しています。

 

2 生前贈与の活用

(1) 暦年課税方式による贈与

イ 相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人から加算対象期間に暦年課税に係る贈与によって取得した加算対象贈与財産があるときは、その者の相続税の課税価格に加算対象贈与財産の贈与時の価額を加算することとなります(相続又は遺贈により財産(相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産を含みます。)を取得しなかった者の場合には、相続税の課税価格に加算する必要はありません。)。

また、加算対象贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された者の相続税の計算上控除されることとなります。

なお、上記の加算対象期間とは、相続税の課税価格に加算される暦年課税に係る贈与の対象期間をいい、贈与の時期が令和5年1231日までの場合は、相続開始前3年間、当該時期が令和6年1月1日以降の場合は、下表のとおりです。

被相続人の相続開始日

加算対象期間

令和8年1231日まで

相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)

令和9年1月1日以降

令和121231日まで

令和6年1月1日から死亡の日までの間

令和13年1月1日以降

相続開始前7年以内(死亡の日から遡って7年前の日から死亡の日までの間)

ロ 加算対象贈与財産は、被相続人から生前に暦年課税に係る贈与によって取得した財産のうち加算対象期間内に贈与されたもので、加算対象期間内に贈与されたものであれば、贈与税の課税の有無に関わりなく加算の対象となるため、暦年課税に係る贈与税の基礎控除額110万円以下の贈与財産、死亡した年に贈与された財産の価額も加算することとなります。

なお、被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

() 贈与税の配偶者控除の適用を受けた又は相続開始の年と同年中の贈与で贈与税の配偶者控除適用を受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額

() 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額

() 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額(当該金額のうち、贈与者の死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があることに留意してください。)

() 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額(当該金額のうち、贈与者の死亡時の管理残額については、相続等により取得したものとみなして、相続税の課税価格に加算される場合があることに留意してください。)

ハ 控除する贈与税額は、相続税の課税価格に加算された加算対象贈与財産に係る贈与税の税額です(延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額は含まれないことに留意してください。)。

ニ ①加算対象贈与財産のうち相続開始日前3年以内に取得した財産の場合には、加算対象贈与財産の贈与時の価額(暦年課税に係る贈与税の基礎控除前の価額)を相続税の課税価格に加算することとなり、②加算対象贈与財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の場合には、加算対象贈与財産の贈与時の価額(暦年課税に係る贈与税の基礎控除前の価額)の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算することとなります。

ホ 被相続人の生前に暦年課税方式による贈与を活用すれば、相続財産を減らし、相続人などの財産を増やすことができますが、次の点に留意してください。

() 相続又は遺贈により財産(相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産を含みます。)を取得した者

加算対象贈与財産のうち、①相続開始日前3年以内に取得した財産の場合には加算対象贈与財産の贈与時の価額が、②相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産の場合には、加算対象贈与財産の贈与時の価額の合計額から100万円を控除した残額が、それぞれ相続税の課税価格に加算されます(暦年課税方式による贈与が相続開始日前7年以内ではない場合には、相続税の課税価格には加算されません。)。

() 相続又は遺贈により財産(相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産を含みます。)を取得しなかった者

相続又は遺贈により財産(相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産を含みます。)を取得しなかった者の場合には、贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算する必要はありません。

なお、相続又は遺贈により取得した財産には相続又は遺贈により取得したものとみなされる財産が含まれることから、例えば、相続人ではない孫に対して贈与をしたとしても、死亡保険金の受取人が当該孫である場合には、当該死亡保険金は遺贈により取得したものとみなされるため、当該贈与の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算する必要があります。

(2) 相続時精算課税方式による贈与

イ 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者又は特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者は、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産の贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額)を、当該特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算することとなります。

ロ 相続時精算課税適用財産に課せられた贈与税の額は、加算された者の相続税の計算上控除されることとなります(延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額は含まれないことに留意してください。)。

ハ 相続時精算課税を選択した年分以降に特定贈与者から贈与を受けた財産全てが相続税の課税価格に加算されることとなります。

ニ 相続財産に加算する相続時精算課税適用財産の価額は、原則として、贈与時の価額となります。

なお、相続時精算課税適用者が、特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物について、その贈与の日からその特定贈与者の死亡に係る相続税の申告書の提出期限までの間に、令和6年1月1日以後に災害によって一定の被害を受けた場合には、その相続税の課税価格への加算の基礎となるその土地又は建物の価額は、その贈与の時における価額から、その災害による被災価額を控除した残額とすることができる特例があります。

ホ 被相続人の生前に相続時精算課税方式による贈与を活用すれば、相続財産を減らし、相続人などの財産を増やすことができますが、次の点に留意してください。

() 特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得した相続時精算課税適用者だけではなく、特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者についても、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産の贈与時の価額(令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額)を、当該特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算する必要があります。

() 令和6年1月1日以後に特定贈与者からの贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、当該財産の価額から相続時精算課税に係る基礎控除の額を控除した残額が当該特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算されることとなるため、相続時精算課税適用者が特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかった場合で、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産の価額が相続時精算課税に係る基礎控除の額を超えないときは、当該特定贈与者に係る相続税の課税価格に加算される金額はないこととなります。

しかし、この場合においても、加算対象期間のうち相続時精算課税の適用を受ける年分の前において、当該特定贈与者から暦年課税方式による贈与により取得した財産があるときは、その財産の価額は相続税の課税価格に加算されることとなります。

(3) 暦年課税方式による贈与又は相続時精算課税方式による贈与の選択

イ 暦年課税方式による贈与又は相続時精算課税方式による贈与のいずれにするかは、それぞれのメリット及びデメリット、贈与による財産の価額並びに贈与をする予定期間期間等を考慮した上で、慎重に検討する必要があります。

ロ 例えば、毎年110万円の現金を20年間贈与するとし、現に20年後に相続が開始した場合、暦年課税方式による贈与の場合には、相続税の課税価格に加算される価額は670万円((110万円×4年-100万円)+(110万円×3年)=670万円)となり、他方、相続時精算課税方式による贈与の場合には、相続税の課税価格に加算される価額は零円となります。

また、例えば、毎年200万円の現金を20年間贈与するとし、現に20年後に相続が開始した場合、暦年課税方式による贈与の場合には、相続税の課税価格に加算される価額は1,300万円((200万円×4年-100万円)+(200万円×3年)=1,300万円)となり、他方、相続時精算課税方式による贈与の場合には、相続税の課税価格に加算される価額は1,800円((200万円-110万円)×20年=1,800万円)となります。 

 

 

作成日:令和7年9月24