相続税対策(共同住宅の建築)

1 共同住宅及びその敷地の評価

(1) 貸家建付地及び貸家の評価

イ 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)26《貸家建付地》は、貸家の敷地の用に供されている宅地(貸家建付地)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する旨定めています。

その宅地の

自用地として

の価額

その宅地の

自用地として

の価額

×

借地権

割 合

×

借家権

割 合

×

賃貸割合

また、評価通達26(2)は、「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による旨定めており、その注書の2は、次の算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない旨定めています。

Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計

当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)

ロ 評価通達89《家屋の評価》及び評価通達別表1は、家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額に1.0の倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めています。

ハ 評価通達93《貸家の評価》は、貸家の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する旨定めています。

評価通達89《家屋の評価》、89-2《文化財建造物である家屋の評価》又は92《附属設備等の評価》の定めにより評価したその家屋の価額(A)

×

借家権

割 合

×

賃貸割合

(2) 家屋の固定資産税評価額

家屋の固定資産税評価額は、固定資産評価基準の定めにより評価することとされており、家屋の評価は、木造家屋及び木造家屋以外の家屋の区分に従い、各個の家屋について評点数を付設し、当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法により評価することとされています。

そして、家屋の評点数は、再建築費評点数を基礎として、これに損耗の状況による減点補正率(経年減点補正率)を乗じて付設されます。

すなわち、簡単にいえば、家屋の固定資産税評価額は、再建築価格に経年減点補正率を乗じて算出されます。

家屋の新築の際には、(真偽は定かではありませんが)家屋の建築費の50%から70%程度が固定資産税評価額の目安といわれています(正確には、固定資産税評価額の決定を待つしかありません。)。

 

2 共同住宅の建築及び賃貸

(1) 例えば、評価通達に基づき評価した価額が200,000千円となる土地があり、当該土地の上に100,000千円で共同住宅を建築し、賃貸の用に供するとします。

この場合、借地権割合を50%、借家権割合を30%及び賃貸割合を100%とすれば、

土地の価額=200,000千円-(200,000千円×50%×30%×100%)=170,000千円

となり、相続財産の価額を30,000千円減らすことができます。

また、共同住宅の建築費を100,000千円、固定資産税評価額を60,000千円とすれば、

共同住宅の価額=60,000千円-(60,000千円×0.3×100%)=42,000千円

となり、共同住宅の建築費用を借入金で賄う場合には、更に節税効果が高まります。

(2) ただし、投資採算性を十分に検討しておく必要があります。すなわち、100,000千円の投資をして、当該投資した資金を回収することができるか否かです。上記(1)では、賃貸割合を100%として試算しましたが、全室賃借人が入るのか、空室のリスクはどの程度か、賃貸の用に供するために必要な経費はどの程度かかるのか、定期的で比較的小規模な修繕、大規模な修繕に要する費用はどの程度のスパンでどの程度かかるのか、設備の陳腐化に伴う当該設備の更新を考慮しているかなど検討すべきことは多々あります。

また、建築費を借入金で賄う場合には、借入利息の支払も考慮しなければなりませんし、建築費を自己資金で賄う場合には、建築費を支払った後の預貯金等の残高で相続税の納税資金を賄うことができるのかをも検討しておく必要があります。

 

【追記】

「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」は、デジタル化が進む経済社会に対応した税務・税制のあり方について議論することを目的として、政府税制調査会の下に設置された専門家会合です。

そして、令和7年1113日に開催された第4回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合において、国税庁説明資料として、「財産評価を巡る諸問題」が示されました(当該説明資料は内閣府ホームページの「https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/7digital-noukan4kai3.pdf」に掲載されています。)。この「財産評価を巡る諸問題」において、賃貸不動産や不動産小口化商品を利用した相続税及び贈与税に関連した種々の問題点が散見されるとして、いくつかの事例が示されています。

 

近々、財産評価基本通達の改正(又は個別通達の新設)が想定されるため注意する必要があります。 

 

作成日:令和7年9月24

追記日:令和7年12月3日