相続税対策(会社の設立)

1 会社の設立

個人で共同住宅及びその敷地を所有し不動産所得を得ている者を例に検討してみたいと思います。

なお、会社を設立する場合には、定款の作成や登記などの設立に関する事務や費用等を要しますが、今回の検討では、省略させていただきます。

 

2 会社の設立による相続税対策

(1) 前提条件

個人(被相続人と想定する者で、以下、便宜上「本件被相続人」といいます。)が所有する共同住宅(以下「本件家屋」といいます。)の固定資産税評価額を40,000千円、その敷地(以下「本件土地」といいます。)の自用地としての価額を100,000千円、借地権割合を50%、借家権割合を30%、賃貸割合を90%とすると、相続の際の価額は、本件家屋が29,200千円(40,000千円-40,000千円×30%×90%)及び本件土地が86,500千円(100,000千円-100,000千円×50%×30%×90%)となります。

(2) 会社の設立

不動産管理会社(以下「本件会社」といいます。)を設立しますが、この場合、出資者を被相続人とすると、本件会社の株式が相続財産となりますので、その推定相続人が出資して、本件会社を設立した方がより節税効果が高まります。

また、不動産管理の方式には、一般的に、①所有権移転方式、②サブリース方式及び③管理委託方式があり、それぞれの方式により節税効果が異なりますので、以下、各方式ごとに検討したいと思います。

なお、いずれの方式によっても、被相続人及びその家族を役員としたり、あるいは従業員として雇用すれば、給与などを支払うこととなり、当該給与などは、本件会社の所得金額の計算上損金に算入することができます。さらに、当該家族に対しては、贈与税を負担することなく、給与などとして財産を移転することができますし(ただし、勤務実態があることや当該給与等が勤務内容に照らして相当な額であることが必要となりますので注意してください。)、相続開始時に、本件被相続人に対して、個人にはない退職金を支払うこともできます。

(3) 本件会社の設立による相続税対策

イ 所有権移転方式

() 本件被相続人から本件会社へ本件家屋の所有権を移転し、本件被相続人と本件会社は、本件土地に係る賃貸借契約を締結するとともに、本件会社と本件家屋の各賃借人は、本件家屋(各室ごとに)に係る賃貸借契約を締結します。

() この場合、無償で所有権を移転すると、本件家屋の時価相当額について、本件会社に対して、受贈益として法人税が課税されるとともに、本件会社の株価が上昇することから、その株主に対して、相続税法第9条の規定により贈与税が課税されることとなり、また、有償で所有権を移転すると、本件被相続人に対して、譲渡所得として所得税が課税されることとなります。

なお、有償で所有権を移転する場合には、売買価格をいくらにするかという問題がありますが、本件家屋の未償却残高で売却すれば、譲渡益は算出されず、所得税法第59条(みなし譲渡所得)の問題も生じないため、譲渡所得の課税関係は生じないものと考えられます。

また、有償で移転する場合には、このほか、本件会社が本件家屋を購入する代金の資金調達の問題があります(資金がない場合には、本件被相続人への未払金とするなど、とりあえず本件被相続人との貸借関係として整理する方法もありますが、相続開始時点で未払金が残っていると、未収金として本件被相続人の相続財産となりますので注意してください。)

() そして、借地権の取引慣行のある地域で、権利金等の授受がなく借地権を設定すると、本件会社に対して、借地権の認定課税がされることから、これを避けるため、税務署長に対して「土地の無償返還に関する届出書」を提出するか又は相当の地代の授受をします。

() 以降、本件被相続人及び本件会社は、本件土地の地代の授受をすることとなり、本件被相続人は、当該地代について不動産所得として所得税が課税され、本件会社は、所得金額の計算上、本件家屋の家賃が益金の額に算入されるとともに、当該地代が損金の額に算入されます。

() そうすると、相続財産としては、本件家屋の価額は零円となり、本件土地の価額は80,000千円(100,000千円-100,000×20)となります(ただし、本件家屋の売却代金は相続財産となります。)。

ロ サブリース方式

() 本件被相続人と本件会社は、本件家屋1棟に係る賃貸借契約を締結するとともに(いわゆる1棟貸しです。)、本件会社と本件家屋の各賃借人は、本件家屋(各室ごとに)に係る賃貸借契約を締結します(すなわち転貸です。)。

() 以降、本件被相続人及び本件会社は、本件家屋1棟の家賃の授受をすることとなり、本件被相続人は、当該家賃について不動産所得として所得税が課税され、本件会社は、所得金額の計算上、本件家屋の各賃借人からの家賃が益金の額に算入されるとともに、本件被相続人へ支払う家賃が損金の額に算入されます。

() そうすると、相続財産としては、本件家屋の価額は28,000千円(40,000千円-40,000×30%)となり、本件土地の価額は85,000千円(100,000千円-100,000千円×50%×30%)となります。

ハ 管理委託方式

() 本件被相続人と本件会社は、本件家屋に係る管理委託契約を締結し、本件会社は本件家屋に係る管理を行い、本件被相続人は、本件会社に対して、管理委託手数料を支払いますが、各賃借人との賃貸借契約は、従前のとおりとなります。

() 以降、本件被相続人及び本件会社は、本件家屋の管理委託手数料の授受をすることとなり、本件被相続人は、各賃借人からの家賃について不動産所得として所得税が課税され、本件会社は、所得金額の計算上、当該管理委託手数料が益金の額に算入されます。

() そうすると、相続財産としては、本件家屋の価額は29,200千円(40,000千円-40,000千円×30%×90%)となり、本件土地の価額は86,500千円(100,000千円-100,000千円×50%×30%×90%)となります。

(4) 本件会社の設立による相続税対策の効果

上記(1)を前提とすれば、所有権移転方式が一番効果は高いと考えられますが、実際には、条件の違い等により、会社設立による節税効果が得られる場合もあれば、得られない場合もあります。

したがって、会社設立による節税を考慮する場合には、必ず相続税に精通した税理士に相談してください。

 

 

作成日:令和7年9月24