【質疑内容】
相続税の還付申告書の提出期限について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
イ 相続税法第27条《相続税の申告書》第1項は、相続又は遺贈(当該相続に係る被相続人からの贈与により取得した財産で同法第21条の9《相続時精算課税の選択》第3項の規定の適用を受けるものに係る贈与を含みます。以下同じ。)により財産を取得した者及び当該被相続人に係る相続時精算課税適用者は、当該被相続人からこれらの事由により財産を取得したすべての者に係る相続税の課税価格に係る相続税額があるときは、その相続の開始があつたことを知った日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨規定しています。
また、相続税法第27条第3項は、相続時精算課税適用者は、同条第1項の規定により申告書を提出すべき場合のほか、同法第33条の2《相続時精算課税に係る贈与税額の還付》第1項の規定による還付を受けるため、同法第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る相続税の課税価格、還付を受ける税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出することができる旨規定しています。
ロ 相続税法第33条の2第1項は、税務署長は、同法第21条の15から第21条の18までの規定により相続税額から控除される同法第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与税の税額(同法第21条の8《在外財産に対する贈与税額の控除》の規定による控除前の税額とし、延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する税額を除きます。)に相当する金額がある場合において、当該金額を当該相続税額から控除してもなお控除しきれなかった金額があるときは、同法第27条第3項の申告書に記載されたその控除しきれなかった金額(同法第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産に係る贈与税について同法第21条の8の規定の適用を受けた場合にあっては、当該金額から同条の規定により控除した金額を控除した残額)に相当する税額を還付する旨規定しています。
ハ 相続税法基本通達27-8《還付を受けるための申告書の提出期限》は、相続税法第27条第3項に規定する申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができるのであるから留意する旨定めています。
(2) 国税通則法関係
イ 国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第2項柱書及び同項第4号は、納税義務は、相続税については、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含みます。)による財産の取得の時に成立する旨規定しています。
ロ 国税通則法第74条《還付金等の消滅時効》第1項は、還付金等に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって、時効により消滅する旨規定しています。
また、国税通則法第74条第2項は、同法第72条《国税の徴収権の消滅時効》第2項及び第3項の規定は、同法第74条第1項の場合について準用する旨規定しています。
なお、国税通則法第72条第2項は、国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする旨規定し、同条第3項は、国税の徴収権の時効については、この節に別段の定めがあるものを除き、民法の規定を準用する旨規定しています。
2 裁判例等
東京地方裁判所令和2年11月4日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
(1) 相続時精算課税に係る贈与税相当額の還付金請求権は、国税通則法74条1項所定の「還付金等に係る国に対する請求権」に該当するところ、同項は、当該請求権は、「その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって、時効により消滅する。」と規定している。そして、同項所定の「その請求をすることができる」とは、法律上権利行使の障害がなく、権利の性質上、その権利行使が現実に期待のできるものであることを要すると解するのが相当である。
(2) 相続時精算課税に係る贈与税担当額の還付金請求権は、相続税還付申告書を提出することによって請求をすることができる。そして、相続税法上、同還付金請求権について申告期限の定めはないところ、相続の開始時に相続税の納税義務が発生する(国税通則法15条2項4号)一方で、同還付金請求権がある場合には、その額の算定も可能となるから、同還付金請求権に係る同法74条1項所定の「その請求をすることができる日」は、相続開始の日と解すべきである。したがって、同還付金請求権は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過した時点で時効消滅する。
3 回答
(1) 相続時精算課税の適用を受ける財産について課せられた贈与税があるときは、相続税額から当該贈与税の税額に相当する金額を控除し、なお控除しきれない金額があるときは、相続税法第27条第3項に規定する申告書である相続税の還付申告書を提出することにより、その控除しきれない金額に相当する税額の還付を受けることができます。
(2) そして、還付金に係る国に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって時効により消滅することから、相続税の還付申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができることとなります。
なお、相続税の還付申告書については、国税通則法第2条《定義》第6号の規定により 「納税申告書」に当たることとされていることから、還付税額を過少に記載した相続税の還付申告書の提出をした者は、同法第23条《更正の請求》第1項に規定する更正の請求をすることができるところ、相続税の還付申告書は、法定申告期限の定めがないことから、同法第23条第1項に規定する更正の請求の期限の起算日は、「当該申告書を提出した日」として取り扱われています(相続税法基本通達27-9《還付を受けるための申告に係る更正の請求》)。
作成日:令和7年12月3日
