【質疑内容】
1 事実関係
(1) 甲は、令和X年5月1日に、乙に対し、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(以下「本件土地」といいます。)を売却する旨の契約を締結し、同日、乙から手付金を受領しました。
(2) 本件土地の売買契約に係る契約書第〇条には、本件土地に対して賦課される固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税等」といいます。)は、1月1日を起算日として、引渡完了日の前日までの分を売主である甲の負担とし、引渡完了日以降の分を買主である乙の負担として、引渡完了日において清算する旨定められています。
(3) 甲は、令和X年5月31日に、乙から残金及び固定資産税等に相当する額(以下「本件未経過固定資産税等相当額」といいます。)を受領するとともに、乙に対し、本件土地を引き渡しました。
2 質疑事項
譲渡所得の金額の計算上、本件未経過固定資産税等相当額は総収入金額に算入されますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 所得税法関係
イ 所得税法第33条《譲渡所得》第1項は、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう旨、同条第3項は、譲渡所得の金額は、その年中の資産の譲渡による所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨それぞれ規定しています。
ロ 所得税法第36条《収入金額》第1項は、その年分の各種所得の金額の計算上収入金額とすべき金額又は総収入金額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その年において収入すべき金額とする旨規定しています。
(2) 地方税法関係
イ 地方税法第343条《固定資産税の納税義務者等》第1項は、固定資産税は、固定資産の所有者に課する旨、同条第2項は、同条第1項の所有者とは、土地又は家屋については、登記簿又は土地補充課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に所有者として登記又は登録がされている者をいう旨それぞれ規定しています。
ロ 地方税法第359条《固定資産税の賦課期日》は、固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする旨規定しています。
ハ 地方税法第702条《都市計画税の課税客体等》第1項は、市町村は、当該市町村の区域で都市計画法第5条《都市計画区域》の規定により都市計画区域として指定されたもののうち同法第7条《区域区分》第1項に規定する市街化区域内に所在する土地及び家屋に対し、当該土地又は家屋の所有者に都市計画税を課することができる旨、地方税法第702条第2項は、同条第1項の所有者とは、当該土地又は家屋に係る固定資産税について同法第343条において所有者とされる者をいう旨それぞれ規定しています。
ニ 地方税法第702条の6《都市計画税の賦課期日》は、都市計画税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の1月1日とする旨規定しています。
2 裁判例等
(1) 東京地方裁判所平成27年6月30日判決及び東京高等裁判所平成28年3月10日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
固定資産税は、固定資産の所有の事実に担税力を認めて課される一種の財産税であり、都市計画税は、都市計画事業等によって土地又は家屋の所有者がそれらの利用価値の増大、価格の上昇等の利益を受けることに着目して課される目的税であって、いずれも、各年ごとに、その賦課期日(当該年度の初日の属する年の1月1日)における土地又は家屋の所有者を納税義務者として課されるものであり、当該年度の賦課期日後に所有者の異動が生じたとしても、新たに所有者となった者が当該賦課期日を基準として課される固定資産税等の納税義務を負担することはない。
したがって、賦課期日とは異なる日をもって固定資産の売買契約を締結するに際し、買主が売主に対し、売主が納税義務を負担することになる固定資産税等の税額のうち売買契約による所有権移転後の期間の部分に相当する金額を支払うことを合意した場合、この合意に基づく金額の支払は、固定資産税等に係る買主の納税義務に基づくものではないことが明らかである。
そして、この合意は、固定資産の売買契約を締結するに際し、売主が1年を単位として納税義務を負う固定資産税等につき買主がこれを負担することなく当該固定資産を購入するという期間があるという状況を調整するために個々的に行われるものであることからすると、この合意に基づく金額は、実質的には、当該固定資産の購入の代価の一部を成すものと解することが相当である。
(2) 国税不服審判所令和6年2月13日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。
譲渡所得に対する課税の趣旨からすると、資産の譲渡の対価として収入すべき金額については、その名目いかんにかかわらず、譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されるべきであると解するのが相当である。
また、固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者に対して課されるものであって、賦課期日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたとしても、新たな所有者が当該固定資産のその年の固定資産税等の納税義務を負担するものではないから、本件土地建物の売買契約における固定資産税等の負担及び清算に関する定めは、新たな債権債務関係を発生させる合意内容の一つというべきである。
したがって、当該合意に基づいて買主から請求人に支払われた本件未経過固定資産税等相当額は、本件土地建物の譲渡の対価の一部であると認められることから、請求人の譲渡所得の金額の計算上、総収入金額に算入されることとなる。
3 回答
(1) 地方税法第343条第1項及び第2項、同法第359条、同法第702条第1項及び第2項並びに同法第702条の6は、上記1の(2)のとおり規定しているところ、これらの規定によれば、固定資産税等は、その賦課期日である毎年1月1日現在における固定資産の所有者に対して課されるものであって、その所有期間に対応して課されるものではなく、賦課期日後に当該固定資産の所有者に異動が生じたとしても、新たな所有者が当該固定資産のその年の固定資産税等の納税義務を負担するものではありません。
(2) そうすると、固定資産税等の賦課期日以後の令和X年5月31日に乙に本件土地の所有権が移転し、本件土地の所有者に異動が生じたとしても、乙が本件土地の固定資産税等の納税義務を負担するものではないから、本件契約における固定資産税等の負担及び清算に関する定めは、新たな債権債務関係を発生させる合意内容の一つというべきであり、本件未経過固定資産税等相当額は、本件契約の合意内容に基づいて支払われた本件土地建物の譲渡の対価の一部であると認められるため、資産の譲渡の対価として収入すべき金額となります。
(4) したがって、甲の譲渡所得の金額の計算上、本件未経過固定資産税等相当額を総収入金額に算入することとなります。
作成日:令和7年9月24日
