00-03_投資一任契約における上場株式等に係る取引の税務上の取扱い

 

【質疑内容】

甲は、投資一任契約に係る業務の認可を受けた投資顧問業者であるA証券会社との間で、投資一任契約を締結し、投資顧問料など投資一任契約に係る費用を支払っています。

当該投資一任契約に係る口座(以下「ラップ口座」といいます。)における上場株式等に係る取引の税務上の取扱いについて説明してください。

 

【回答内容】

1 所得区分

投資一任契約は、所有期間1年以下の上場株式等の売買を行うものであり、また、顧客が報酬を支払って、有価証券の投資判断を金融商品取引業者等に一任し、契約期間中に営利を目的として継続的に上場株式等の売買を行っていると認められることから、当該上場株式等の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に該当するものと取り扱われています。

 

2 投資一任契約に係る費用の額

投資一任契約に係る費用の額については収入金額を得るために直接必要な費用に該当するものと認められるため、所得税法第37条《必要経費》第1項の規定により、上場株式等の譲渡に係る事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入することができます。

なお、令和4年分以降、ラップ口座を特定口座で利用している場合には、投資一任契約に係る費用の額は、「令和〇年分特定口座年間取引報告書」の「②取得費及び譲渡に要した費用の額等」の各欄の金額に含まれて所得の金額の計算がされており、この場合には、「摘要」欄に「投資一任契約に係る費用の額〇〇〇円」などと表示されています(投資一任契約に係る費用の額を重複控除しないよう留意してください。)。

 

【参考】

1 投資一任契約

投資一任契約とは、投資家が投資判断の全部又は一部を金融商品取引業者等に一任し、その投資判断に基づき投資家のために投資を行うのに必要な権限をその金融商品取引業者等に委任することを内容とする契約をいい(金融商品取引法第2条第8項第12号ロ)、投資一任契約に基づいて資産の管理・運用を委託する口座のことを投資一任口座といいます。

すなわち、投資一任契約とは、投資に関連する取引を行う際に必要な権限を委任する契約のことで、投資一任契約が締結されると、金融商品取引業者等が投資家に代わり投資全般の管理・運用を行うこととなります。

また、投資一任契約に基づくサービスを総称して投資一任サービスといわれています。この投資一任サービスは、様々な金融機関が取り扱っており、その名称や商品性は、これを取り扱う金融機関によって異なりますが、一般的に「ファンドラップ」や「SMA(Separately Managed Accountの略)」などは投資一任サービスのことを指しています。

 

2 令和3年度税制改正

上記【回答内容】のとおり、ラップ口座における上場株式等の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に該当するものと取り扱われています。

また、投資一任契約に係る成功報酬や固定報酬などの費用は、これらの所得の金額の計算上必要経費に算入することができますが、このためには確定申告を行うことが必要とされていました。

この投資一任契約に係る費用について、投資家の利便性向上等の観点から、令和3年度税制改正において次の見直しが行われました。

(1) 源泉徴収選択口座における還付

居住者等の源泉徴収選択口座を開設している金融商品取引業者等は、その源泉徴収選択口座においてその年中に行われた対象譲渡等につきその者が締結した投資一任契約に基づきその金融商品取引業者等に支払うべき費用の額のうちその対象譲渡等に係る事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額でその年1231日(次に掲げる場合には、それぞれ次に定める日)において取得費等の金額の総額並びに信用取引に係る差益金額及び差損金額の計算上処理された金額に含まれないものがある場合には、その居住者等に対し、その費用の金額(その金額がその源泉徴収選択口座においてその年最後に行われた対象譲渡等に係る源泉徴収口座内通算所得金額を超える場合には、その超える部分の金額を控除した金額)の15%相当額の所得税を還付しなければならないこととされました。

イ その源泉徴収選択口座が開設されている金融商品取引業者等が解散又は事業の廃止をした場合 その解散又は廃止の日

ロ その源泉徴収選択口座につき特定口座廃止届出書の提出があった場合 その提出があった日

ハ その源泉徴収選択口座につき特定口座開設者死亡届出書の提出があった場合 その提出があった日

これに伴い、上場株式等の源泉徴収選択口座内調整所得金額についての所得税徴収高計算書に記載する「源泉徴収選択口座内調整所得金額の総額」は、上記の費用の金額の総額を控除した金額とされました。

(2) 特定口座年間取引報告書の記載事項の追加

特定口座年間取引報告書には、「その年中の取得費及び譲渡に要した費用の額等の合計額の総額」を記載することとされていますが、その特定口座が開設されている金融商品取引業者等に対して投資一任契約に基づき支払うべき費用の額のうちその年中に行われたその特定口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡又は信用取引等に係る上場株式等の譲渡に係る事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額で取得費等の金額の総額並びに信用取引に係る差益金額及び差損金額の計算上処理された金額に含まれないものがある場合には、その必要経費に算入されるべき金額を加算して記載することとされました。

また、この必要経費に算入されるべき金額がある場合には、その旨及びその必要経費に算入されるべき金額を摘要の欄に記載することとされました。

(3) 上記(1)及び(2)適用関係

上記(1)の改正は、令和4年1月1日以後に行われる譲渡等について適用し、同日前に行われた譲渡等については従前どおりとされています。

また、上記(2)の改正は、令和4年以後の各年において開設されている特定口座に係る報告書について適用し、令和3年以前の各年において開設されていた特定口座に係る報告書については従前どおりとされています。

 

 

作成日:令和7年9月24