【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に死亡した甲の相続人は、甲の子である乙のみです(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます)。
(2) 甲の相続財産には、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(地目は宅地、地積は3,000㎡で、以下「本件土地」といいます。)が含まれていたところ、本件土地は、国道〇号に接面しており、貸店舗の敷地として利用されていました。
(3) 本件土地は、都市計画法第7条《区域区分》第3項に規定する市街化調整区域に所在しているところ、本件相続の開始時において、都市計画法第34条第10号(以下「10号区域」といいます。)に規定する地区計画又は集落地区計画の区域及び同条第11号(以下「11号区域」といいます。)に規定する条例指定区域に所在する宅地には該当していませんでしたが、同条第12号(以下「12号区域」といいます。)に基づき、宅地分譲に係る開発行為が可能な土地です。
2 質疑事項
本件土地の価額を、財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)20-2《地積規模の大きな宅地の評価》に定める地積規模の大きな宅地に準じて評価することができますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
相続税法第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しています。
(2) 評価通達
イ 評価通達20-2(以下「本件通達」といいます。)は、地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、それ以外の地域においては、1,000㎡以上の地積の宅地をいい、次の(イ)から(ハ)までのいずれかに該当するものを除きます。以下「地積規模の大きな宅地」といいます。)で、評価通達14-2《地区》に定める地区(以下「地区区分」といいます。)のうち、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区として定められた地区に所在するものの価額は、評価通達15《奥行価格補正》から評価通達20《不整形地の評価》までの定めにより計算した価額に、その宅地の地積の規模に応じ、所定の算式により求めた規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価する旨定めています。
(イ) 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条《定義》第12項に規定する開発行為(以下、単に「開発行為」という。)を行うことができる区域を除く。)に所在する宅地
(ロ) 都市計画法第8条《地域地区》第1項第1号に規定する工業専用地域に所在する宅地
(ハ) 容積率(建築基準法第52条《容積率》第1項に規定する建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。)が10分の40(東京都の特別区においては10分の30)以上の地域に所在する宅地
ロ 評価通達21-2《倍率方式による評価》の本文は、倍率方式により評価する宅地の価額は、その宅地の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により土地課税台帳等に登録された基準年度の価格等をいう。以下同じ。)に地価事情の類似する地域ごとに、その地域にある宅地の売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として国税局長の定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定め、そのただし書は、倍率方式により評価する地域に所在する評価通達20-2に定める地積規模の大きな宅地の価額については、本項本文の定めにより評価した価額が、その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を評価通達14《路線価》に定める路線価とし、かつ、その宅地が評価通達14-2に定める普通住宅地区に所在するものとして評価通達20-2の定めに準じて計算した価額を上回る場合には、評価通達20-2の定めに準じて計算した価額により評価する旨定めています。
ハ 都市計画法第34条柱書は、同法第33条《開発許可の基準》の規定にかかわらず、市街化調整区域に係る開発行為(主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除きます。)については、当該申請に係る開発行為及びその申請の手続が同条に定める要件に該当するほか、当該申請に係る開発行為が同法第34条各号(一部抜粋)のいずれかに該当すると認める場合でなければ、都道府県知事は、開発許可をしてはならない旨規定しています。
(イ) 地区計画又は集落地区計画の区域(地区整備計画又は集落地区整備計画が定められている区域に限ります。)内において、当該地区計画又は集落地区計画に定められた内容に適合する建築物又は第一種特定工作物の建築又は建設の用に供する目的で行う開発行為(第10号)
(ロ) 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であっておおむね50以上の建築物(市街化区域内に存するものを含みます。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあっては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの(第11号)
(ハ) 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの(第12号)
2 裁判例等
国税不服審判所令和6年3月6日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。
(1) 相続税法第22条について
相続税法第22条は、同法第3章において特別の定めのあるものを除くほか、相続又は遺贈により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところ、ここにいう時価とは、相続開始時における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
しかし、相続財産の客観的な交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法を採った場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が重くなり、迅速かつ適切な課税事務の処理が困難となったりするおそれがある。
この点、相続税法は、一定の例外を除いて財産の評価の方法について直接定めていないが、これは、上記のような納税者間の公平の確保、納税者及び課税庁双方の便宜、経費の節減等の観点から、評価に関する通達により全国一律の統一的な評価の方法を定めることを予定し、これによって財産の評価がされることを当然の前提とする趣旨であると解するのが相当である。
相続税法の上記趣旨からすれば、相続財産の評価に当たっては、当該財産に適用される評価通達に定められた評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有するものであり、かつ、評価通達に定める評価方法によって評価することが適正な時価を求めることができない結果となるなど、評価通達に定める評価方法によるべきではない特別の事情がない限り、評価通達に定められた評価方法によって画一的に評価することが相当である。
(2) 本件通達について
本件通達では、適用対象となる宅地を「地積規模の大きな宅地」と定義付け、その宅地の地積の規模に応じた減額の補正を行う旨定めている。
この補正は、「地積規模の大きな宅地」を戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価のうち、主に地積の大きさに基因する①道路、公園等の公共公益的施設用地などのいわゆる「潰れ地」の負担による減価、②住宅用地として利用するために必要な上下水道等の供給処理施設の工事費用や公共公益的施設の整備費用等の負担による減価及び③開発分譲業者の事業収益・事業リスク等の負担による減価を評価対象宅地の価額に反映させるとともに、その適用対象については、評価通達の地区区分や都市計画法の区域区分等を基にすることにより明確化を図ったものであり、このような本件通達に定める評価方法は、適正な時価を算定する方法として相続税法第22条に定める「時価」の解釈に沿ったものであり、合理性を有するものと認められる。
また、本件通達は、上記のとおり、戸建住宅用地として分割分譲する場合に発生する減価を反映させること及び適用可否の判断の明確化を図ることを趣旨とするものであることから、その適用対象を「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲をもって定めているものであり、「地積規模の大きな宅地」から、①市街化調整区域(10号区域又は11号区域を除く。)に所在する宅地、②工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地及び3指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地を除くこととしているのも、これらの宅地が法的規制やその標準的な利用方法等に照らして本件通達の趣旨にそぐわないことを理由とするものであって、合理性を有するものと認められる。
3 回答
(1) 本件通達において、市街化調整区域内に所在する宅地は、原則として「地積規模の大きな宅地」から除かれるとされているところ、これについては、市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」であり(都市計画法第7条第3項)、原則として宅地開発を行うことができない地域であることから(同法第29条《開発行為の許可》、同法第33条、同法第34条)、戸建住宅用地としての分割分譲に伴う減価が発生することが想定されていないため、「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」を対象とする本件通達は、原則として適用できないとする趣旨のものです。
しかしながら、本件通達は、市街化調整区域に所在する宅地であっても、10号区域又は11号区域に所在する宅地に限って、「地積規模の大きな宅地」に含むとし、本件通達の適用対象としています。これについては、市街化調整区域であっても、都市計画法第34条第10号の規定により、地区計画の区域内又は集落地区計画の区域内においては、当該地区計画又は集落地区計画に適合する開発行為を行うことができ、また、同条第11号の規定により、条例指定区域内においても、同様に開発行為を行うことができることから、同条第10号又は同条第11号の規定に基づき宅地分譲に係る開発行為を行うことができる区域、すなわち、10号区域又は11号区域については、戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能である上に、都市計画運用指針及び開発許可制度運用指針の定めに鑑みると、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域といえるため、これらの区域に所在する宅地を、本件通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むこととしたものと解するのが相当です。
(2) また、12号区域に所在する宅地については、10号区域又は11号区域に所在する宅地と異なり、本件通達の適用対象となる「地積規模の大きな宅地」に含まれていないところ、都市計画法第34条第12号の規定は、同条第14号に相当する開発行為の中には、開発審査会の審査基準のうち定型的なものを条例で定めることにより、開発審査会の議を経ずとも許可することができるものがあるため、そのようなものについて手続の迅速化・合理化を図る趣旨のものです。そして、同号に相当する開発行為としては、分家に伴う住宅、収用対象事業の施行による移転等による建築物、社寺仏閣、研究施設等の建築物の用に供するものが予定されているのであるから、同条第12号の規定に基づく開発行為の対象となる宅地は、仮に宅地分譲に係る開発行為が可能な区域に所在していたとしても、本件通達が適用対象とする「戸建住宅用地としての分割分譲が法的に可能であり、かつ、戸建住宅用地として利用されるのが標準的である地域に所在する宅地」の範囲に含むべきものではないとしたものと解するのが相当です。
(3) 本件土地は、市街化調整区域に所在する宅地であって、10号区域又は11号区域に所在しないことから、上記(1)及び(2)のとおり、本件通達の適用対象とはなりません。
したがって、本件各土地の価額を、評価通達20-2に定める地積規模の大きな宅地に準じて評価することはできません。
作成日:令和7年9月24日
