09-02_家屋の増改築と贈与税

 

【質疑内容】

親が所有する家屋(時価500万円)について、子が子自身の資金(1,000万円)で増改築をした場合の贈与税の課税関係について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 民法関係

イ 民法第242条《不動産の付合》本文は、不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する旨規定し、そのただし書は、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない旨規定しています。

ロ 民法第248条《付合、混和又は加工に伴う償金の請求》は、同法第242条から第247条《付合、混和又は加工の効果》までの規定の適用によって損失を受けた者は、同法第703条《不当利得の返還義務》及び第704条《悪意の受益者の返還義務等》の規定に従い、その償金を請求することができる。

(2) 相続税法関係

相続税法第9条本文は、同法第5条《贈与により取得したものとみなす場合》から第8条まで及び第3節《信託に関する特例》に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす旨規定し、そのただし書は、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない旨規定しています。

 

2 裁判例等

(1) 東京地方裁判所昭和51年2月17日判決は、原告は、付合によって増改築部分の所有権を取得し、増改築工事について何ら対価を支払っていないのであるから、相続税法第9条の適用を受ける場合に当たり、増加した資産に相当する経済的利益を夫から贈与により受けたものとみなされるべきである旨判断しています。

(2) 国税不服審判所平成29年5月24日裁決は、審査請求人(以下「請求人」といいます。)は、請求人の母が工事費用を負担した請求人所有の居宅(以下「本件居宅」といいます。)の改修工事(以下「本件改修工事」といいます。)は、建築確認申請が必要となるものではなく、固定資産税評価額が増加していないから民法第242条は適用されず、相続税法第9条に規定する「対価を支払わないで・・・利益を受けた」とはいえない旨主張する。しかしながら、本件改修工事のうち、本件居宅から容易に取り外せず、本件居宅の構成部分となっているもの、又は社会通念上本件居宅の一部分と認められる部分は、取引上の独立性を有しないといえるから本件居宅への付合(以下「本件付合」といいます。)が成立する。また、請求人の母は、請求人に対し、民法第248条に基づく費用償還請求権を行使する意思はおよそなく当該権利を放棄していたと認められることから、請求人は、付合による所有権取得に見合う債務を何ら負担していないということができる。したがって、本件付合が成立した時点で、請求人は、請求人の母から「対価を支払わないで・・・利益を受けた」といえ、相続税法第9条の規定を適用するのが相当である旨判断しています。

 

3 回答

(1) 親名義の家屋に子が増改築をする場合には、民法第242条の規定により、当該増改築部分は家屋の所有者である親の所有物となり、この場合、親が子に対して対価を支払わないときには、親は子から増築資金相当額1,000万円の利益を受けたものとして贈与税が課税されることとなります。

(2) しかし、子が支払う増築資金1,000万円に相当する家屋の持分を親から子へ移転させて共有とすれば、上記(1)の増築資金相当額1,000万円の贈与税の課税はされません(この場合、不動産登記における登記原因は、その実体から、代物弁済又は売買となります。)。

質疑の場合の親と子の持分は、次のとおりとなります。

親:1/3(  500万円/(500万円+1,000万円))

子:2/3(1,000万円/(500万円+1,000万円))

ただし、上記における親から子への家屋の持分の移転は、親から子に対する譲渡となり、譲渡益が生じるときは譲渡所得の課税の対象となります。この場合、共有とするための譲渡及び親子間の譲渡であることから、租税特別措置法第35条第1項に規定する居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を適用することはできません。

この場合の親の譲渡所得の収入金額は、次のとおりとなります。

収入金額:3,333千円(500万円×2/3)

(3) 上記(2)の方法以外で、上記(1)の増築資金相当額1,000万円の贈与税の課税を避ける方法としては、増改築を行う前に、あらかじめ親名義の家屋の3分の2の所有権を贈与により移転させておく方法があります。

この場合の受贈財産の価額は、次のとおりとなります。

受贈財産価額:3,333千円(500万円×2/3)

(4) 上記(2)の持分を移転させる時期は、贈与税の課税のみを考えれば、増改築前でも増改築後でも同様ですが、子が金融機関等からの借入金で増改築資金を調達する場合には、増改築等の前でないと、租税特別措置法第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》に規定する課税の特例の適用を受けられないため、注意する必要があります(自己が所有し、かつ、自己の居住の用に供する家屋について行う増改築等であることという要件を充足しないため。)。

 

 

作成日:令和7年9月24