33-33_契約不適合責任

 

【質疑内容】

1 事実関係

(1) 甲は、令和X年10月1日に、乙に対し、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地及びその上に存する建物(以下「本件建物」といいます。)を総額5,000万円で売却する旨の契約を締結し、同月末までに、乙から売却代金の全額を受領するとともに、当該土地及び本件建物を乙に引き渡しました。

なお、当該契約に係る契約書第〇条には、「売主は、買主に対し、引き渡された土地建物が品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、引渡し完了時から1年以内に通知を受けたものに限り、契約不適合責任を負う。」旨定められています。

(2) 甲は、令和X年分の所得税及び復興特別所得税について、上記(1)により譲渡した土地及び本件建物に係る譲渡所得の金額を計算した上で、法定申告期限までに申告しました。

(3) 乙は、本件建物に係る建物状況調査を実施した結果、近い将来、雨漏りを起こす可能性が極めて高いことが判明したため、令和X+1年5月1日に、甲に対し、契約不適合責任の履行として、同年6月末までに、雨漏りの防止に係る修繕工事を行うよう求めましたが、甲は、これに応じませんでした。

(4) 乙は、令和X年8月末までに、自身で工事業者を手配し雨漏りの防止に係る修繕工事を行い、当該工事の代金200万円を負担した上で、改めて、甲に対し、契約不適合責任の履行を求めたところ、甲は、乙に対し、雨漏りの防止に係る修繕工事代金相当額200万円を支払いました。

2 質疑事項

甲は、令和X年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求により、上記(1)により譲渡した土地及び本件建物に係る譲渡所得の金額の計算上、雨漏りの防止に係る修繕工事代金相当額200万円を控除することができますか。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 民法関係

イ 民法第415条《債務不履行による損害賠償》第1項本文は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる旨規定し、そのただし書は、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない旨規定しています。

ロ 民法第483条《特定物の現状による引渡し》は、債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らしてその引渡しをすべき時の品質を定めることができないときは、弁済をする者は、その引渡しをすべき時の現状でその物を引き渡さなければならない旨規定しています。

ハ 民法第541条《催告による解除》本文は、当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる旨規定し、そのただし書は、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない旨規定しています。

ニ 民法第562条《買主の追完請求権》第1項本文は、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる旨規定し、そのただし書は、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる旨規定しています。

ホ 民法第563条《買主の代金減額請求権》第1項は、同法第562条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる旨規定しています。

(2) 所得税法関係

イ 所得税法第33条《譲渡所得》第1項は、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう旨、同条第3項は、譲渡所得の金額は、その年中の資産の譲渡による所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用(以下「譲渡費用」といいます。)の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨それぞれ規定しています。

ロ 所得税基本通達33-7《譲渡費用の範囲》は、所得税法第33条第3項に規定する譲渡費用とは、資産の譲渡に係る次に掲げる費用(取得費とされるものを除きます。)をいう旨定め、その注書は、譲渡資産の修繕費、固定資産税その他その資産の維持又は管理に要した費用は、譲渡費用に含まれないことに留意する旨定めています。

() 資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用その他当該譲渡のために直接要した費用

() ()に掲げる費用のほか、借家人等を立ち退かせるための立退料、土地(借地権を含みます。)を譲渡するためその土地の上にある建物等の取壊しに要した費用、既に売買契約を締結している資産を更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除したことに伴い支出する違約金その他当該資産の譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用

 

2 回答

(1) 契約不適合責任

契約不適合責任とは、売買契約などで、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合に、売主などが買主などに対して負う責任のことで、令和2年4月の民法改正により、従来の瑕疵担保責任に代わり導入されました。具体的には、商品の品質不良や数量不足、種類違いなどが該当し、契約不適合責任の内容は、主に、次のイないしホの四つからなります。

イ 損害賠償請求

売主(債務者)がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、民法第415条第1項本文の規定に基づき、買主(債権者)は、これによって生じた損害の賠償を請求することができるというものです。

売買契約は当事者間の意思の合致により成立するもので、目的物の品質は当事者間の意思による契約内容によって定まることから、売主(債務者)にはその契約内容に沿った引渡責任を負わせるとともに、その責任が果たされないのであれば、契約の内容自体から導かれる「契約上の責任」を売主(債務者)は果たしていない、すなわち、民法第415条第1項本文に規定する債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときに当たるとして、売主(債務者)に債務不履行責任を負わせるというものです。

ロ 契約解除

売主(債務者)がその債務を履行しない場合で、買主(債権者)が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、買主(債権者)は、民法第541条の規定に基づき契約の解除をすることができるというもので、原則として、売主(債務者)の帰責事由は不要とされています。

ハ 履行の追完請求

引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、民法第562条第1項本文の規定に基づき、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができるというものです。

ニ 代金減額請求:

買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、民法第563条第1項の規定に基づき、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができるというものです。

(2) 回答

本質疑における各事実からすれば、甲及び乙が締結した売買契約には、契約不適合責任について約されているところ、近い将来、雨漏りを起こす可能性が極めて高いことが判明したため、本件建物は品質に関して乙の契約の目的に適合しないものとなったものと認められます。

そこで、乙は、甲に対し、契約不適合責任の履行として追完を請求したところ、甲がこれに応じなかったことから、乙自身による追完(雨漏りの防止に係る修繕工事)を行い、甲に対し、改めて契約不適合責任を追及し、甲から乙に対し、雨漏りの防止に係る修繕工事代金相当額200万円支払いがなされたものであると認められます。

そうすると、乙の雨漏りの防止に係る修繕工事代金相当額200万の支払いは、代金減額請求がされたものと同視することができるため、売買代金が事後的に減額されたことに基づく支払であると解し、売買代金に見合う価値はなかったとして、収入金額が事後的に変更(減額)されたものと解するのが相当であると考えられます。

したがって、甲は、令和X年分の所得税及び復興特別所得税の更正の請求により、譲渡した土地及び本件建物に係る譲渡所得の金額の計算上、雨漏りの防止に係る修繕工事代金相当額200万円を収入金額から控除することができるものと考えられます。

 

 

作成日:令和7年9月24