01-02_埋蔵文化財包蔵地の評価

 

【質疑内容】

埋蔵文化財包蔵地の評価について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 文化財保護法関係

イ 文化財保護法第1条《この法律の目的》は、この法律は、文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする旨規定しています。

ロ 文化財保護法第92条《調査のための発掘に関する届出、指示及び命令》第1項本文は、土地に埋蔵されている文化財(以下「埋蔵文化財」といいます。)について、その調査のため土地を発掘しようとする者は、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもって、発掘に着手しようとする日の30日前までに文化庁長官に届け出なければならない旨規定し、そのただし書は、文部科学省令の定める場合は、この限りでない旨規定しています。

また、文化財保護法第92条第2項は、埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、同条第1項の届出に係る発掘に関し必要な事項及び報告書の提出を指示し、又はその発掘の禁止、停止若しくは中止を命ずることができる旨規定しています。

ハ 文化財保護法第93条《土木工事等のための発掘に関する届出及び指示》第1項本文は、土木工事その他埋蔵文化財の調査以外の目的で、貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」といいます。)を発掘しようとする場合には、同法第92条第1項の規定を準用する旨規定し、この場合において、同項中「30日前」とあるのは、「60日前」と読み替えるものとする旨規定しています。

また、文化財保護法第93条第2項は、埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、文化庁長官は、同条第1項で準用する同法第92条第1項の届出に係る発掘に関し、当該発掘前における埋蔵文化財の記録の作成のための発掘調査の実施その他の必要な事項を指示することができる旨規定しています。

ニ 文化財保護法第96条《遺跡の発見に関する届出、停止命令等》第1項本文は、土地の所有者又は占有者が出土品の出土等により貝づか、住居跡、古墳その他遺跡と認められるものを発見したときは、同法第92条第1項の規定による調査に当たって発見した場合を除き、その現状を変更することなく、遅滞なく、文部科学省令の定める事項を記載した書面をもって、その旨を文化庁長官に届け出なければならない旨規定し、そのただし書は、非常災害のために必要な応急措置を執る場合は、その限度において、その現状を変更することを妨げない旨規定しています。

また、文化財保護法第96条第2項本文は、文化庁長官は、同条第1項の届出があった場合において、当該届出に係る遺跡が重要なものであり、かつ、その保護のため調査を行う必要があると認めるときは、その土地の所有者又は占有者に対し、期間及び区域を定めて、その現状を変更することとなるような行為の停止又は禁止を命ずることができる旨規定し、そのただし書は、その期間は、3月を超えることができない旨規定しています。

(2) 相続税法関係

イ 相続税法第13条《債務控除》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者が同法第1条の3《相続税の納税義務者》第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定しています。

() 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(第1号)

() 被相続人に係る葬式費用(第2号)

ロ 相続税法第14条第1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定しています。

ハ 相続税法第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による旨規定しています。

(3) 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)関係

評価通達1《評価の原則》の(2)は、財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による旨定め、その(3)は、財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する旨定めています。

 

2 裁判例等

国税不服審判所平成20年9月25日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。

(1) 相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、同法に特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、ここにいう時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額、すなわち、客観的な交換価値を示す価額をいうものと解される。

しかしながら、財産の客観的な交換価値は必ずしも一義的に確定されるものではないことから、課税実務上は、財産評価の一般的基準が評価通達によって定められ、さらに、同通達の定めに基づき、路線価など、土地や土地の上に存する権利の価額の具体的な評価基準が国税局長によって定められており、これらに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされている。

また、評価通達では、宅地の評価は市街地的形態を形成する地域にある宅地においては路線価方式による旨定めているところ、この路線価は、売買実例価額、地価公示価格及び不動産鑑定士などの地価事情に精通した者の鑑定評価額や意見価格などを基に、評価上の安全性等を考慮して地価公示価格と同水準の価格の80%程度に評定することとされている。

ところで、評価通達1の(3)は、財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する旨定めており、これは相続税法第22条に規定する時価の考え方に照らし相当と解される。そうすると、評価通達に基づき路線価方式で土地を評価する場合であっても、その土地の価額に影響を及ぼすべき客観的なその土地固有の事情については、①その事情が、路線価の評定に当たって考慮されているもの及び②その事情が類型的に想定できるとして、評価通達上具体的な考慮の方法が定められているもの以外に該当する場合には、その評価に当たって、所要の考慮を検討するのが相当である。

(2) 本件各土地は、周知の埋蔵文化財包蔵地に該当すると認められるJ貝塚の区域内に所在し、実際にその一部に貝塚が存在していることから、宅地開発に係る土木工事等を行う場合には、文化財保護法第93条の規定に基づき、埋蔵文化財の発掘調査を行わなければならないことが明らかである。しかも、その発掘調査費用は、その所有者(事業者)が負担することになり、その金額も、発掘調査基準に基づき積算したところ約〇億円もの高額になる。そうすると、上記宅地開発における埋蔵文化財の発掘調査費用の負担は、一般的利用が宅地であることを前提として評価される本件各土地において、その価額(時価)に重大な影響を及ぼす本件各土地固有の客観的な事情に該当すると認められ、本件各土地に接面する路線に付されている路線価は、周知の埋蔵文化財包蔵地であることを考慮して評定されたものとは認められず、また、財産評価通達上に発掘調査費用の負担に係る補正方法の定めも認められないことから、本件各土地の評価上、当該事情について、所要の検討をするのが相当である。そして、周知の埋蔵文化財包蔵地についての発掘調査費用の負担は、土壌汚染地について、有害物質の除去、拡散の防止その他の汚染の除去等の措置に要する費用負担が法令によって義務付けられる状況に類似するものと認められる。土壌汚染地の評価方法については、課税実務上、その土壌汚染がないものとして評価した価額から、浄化・改善費用に相当する金額等を控除した価額による旨の国税庁資産評価企画官情報に基づく取扱いをしているところ、これは、土壌汚染地について、土壌汚染対策法の規定によってその所有者等に有害物質の除去等の措置を講ずる必要が生じその除去等の費用が発生することなどの要因が、当該土壌汚染地の価格形成に影響を及ぼすことを考慮したものであり、この取扱いは当審判所においても相当と認められる。そこで、本件各土地に存する固有の事情の考慮は、類似する状況における土地評価方法についての取扱いを明らかにした本件情報に準じて行うものとし、本件各土地は、本件各土地が周知の埋蔵文化財包蔵地ではないものとして評価した価額から、埋蔵文化財の発掘調査費用の見積額の80%に相当する額を控除した価額により評価することが相当と認められる。

 

3 回答

国税庁は、埋蔵文化財包蔵地の評価について、土壌汚染地の評価に準じて評価する課税実務上の取扱いを踏まえ、令和6年6月21日付資産評価企画官情報第3号・資産課税課情報第11号「土壌汚染地等の評価の考え方について(情報)」により、改めてその考え方を整理・明確化したところ、その考え方は、要旨、次のとおりです。(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hyoka/240705/pdf/01.pdf

(1) 文化財保護法の概要

文化財保護法は、文化財を保存し、かつ、その活用を図り、もって国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とするところ(文化財保護法1)、同法に規定する貝づか、古墳その他埋蔵文化財を包蔵する土地として周知されている土地(以下「周知の埋蔵文化財包蔵地」という。)については、次に掲げる措置などがとられる。

イ 土木工事等を目的として周知の埋蔵文化財包蔵地を発掘しようとする場合には、文化庁長官に届け出なければならず、文化庁長官は、埋蔵文化財の保護上特に必要があると認めるときは、発掘調査の実施その他の必要な事項(試掘調査、発掘調査、現状保存等)を指示することができる(文化財保護法93)。

ロ 土地の所有者等が出土品の出土等により貝づか、住居跡、古墳その他遺跡と認められるものを発見したときは、その現状を変更することなく、遅滞なく、文化庁長官に届け出なければならない(文化財保護法96)。

(2) 埋蔵文化財包蔵地の評価方法

イ 基本的な考え方

埋蔵文化財包蔵地の評価方法については、下記のとおり、①原価方式、②比較方式及び③収益還元方式の3つの評価方式が考えられる。

① 原価方式

埋蔵文化財包蔵地の価額=文化財がないものとした場合の価額-発掘調査費用に相当する金額

② 比較方式

埋蔵文化財による影響が評価対象地と類似する土地の売買実例を収集し、これに比較準拠する方式

③ 収益還元方式

埋蔵文化財包蔵地の価額=純収益÷還元利回り

これらのうち、②比較方式は、多数の売買実例が収集できるときには、有効な方法であると考えられるが、埋蔵文化財包蔵地の売買実例の収集は困難であり、③収益還元方式についても、埋蔵文化財による影響を総合的に検討した上で純収益及び還元利回りを決定することは困難であることから、②及び③のいずれの方式についても標準的な評価方法とすることは難しいと考えられる。

一方、①原価方式は、「文化財がないものとした場合の価額」から「発掘調査費用に相当する金額」を控除する方法として、国税不服審判所の裁決事例においてもその合理性が認められているなど、課税実務上の取扱いとして定着している合理的な評価方法であると考えられる。

ロ 埋蔵文化財包蔵地の意義等

埋蔵文化財包蔵地として評価する土地は、課税時期において、埋蔵文化財を包蔵する土地とする。

なお、埋蔵文化財を包蔵する可能性があるなどの潜在的な段階では、埋蔵文化財包蔵地として評価することはできない。

また、評価対象地が周知の埋蔵文化財包蔵地に該当しない場合であっても、埋蔵文化財を包蔵する土地は、以下の理由から周知の埋蔵文化財包蔵地と同様に発掘調査等を実施することもあるため、埋蔵文化財包蔵地の評価の適用があることとする。

① 周知の埋蔵文化財包蔵地以外から文化財が出土した場合にも、文化財保護法第96条《遺跡の発見に関する届出、停止命令等》の規定に基づく届出義務があり、文化財の重要度に応じて土地の所有者等に経済的負担が生ずる可能性がある。

② 地方公共団体の取扱いによっては、周知の埋蔵文化財包蔵地に隣接する場合や一定の敷地面積以上の開発が行われる場合にも、試掘調査や発掘調査を実施することがある。

ハ 評価方法

埋蔵文化財包蔵地の価額は、文化財がないものとした場合の価額から発掘調査費用に相当する金額を控除した金額によって評価する。

() 文化財がないものとした場合の価額

文化財がないものとした場合の価額は、文化財がないものとして路線価等に基づき評価した価額をいう。

() 発掘調査費用に相当する金額

発掘調査費用に相当する金額は、文化財がないものとした場合の価額が地価公示価格水準の8割程度とされていることとのバランスから、発掘調査費用の見積額の80%相当額とする。

なお、発掘調査費用の見積額は、課税時期において最も合理的と認められる措置に基づき算定するのが相当である。

また、①土地所有者において発掘調査費用の負担が生じない土地のほか、②評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用状況や発掘調査の実施状況等を踏まえ、発掘調査費用が生ずる蓋然性が低いと認められる土地については(注)、発掘調査費用に相当する金額はないものとして取り扱う

(注)例えば、評価対象地において、既に評価対象地が存する地域における標準的な土地の利用が実現している場合には、現状の利用を継続するのが一般的と考えられ、また、評価対象地の周辺において、その地域における標準的な土地の利用を実現する建物が、発掘調査を実施することなく建築等されている場合には、評価対象地においても発掘調査を実施することなく同種の建物の建築等を行うことができるものと考えられることから、原則としてこのような場合には、発掘調査費用が生ずる蓋然性が低いと認められる。

() 使用収益制限による減価及び心理的要因による減価

埋蔵文化財包蔵地においては、発掘調査を実施することにより土地の使用収益に支障がなくなることとなるため、「使用収益制限による減価に相当する金額」を控除する必要はないものと考えられる。

また、評価対象地の地中に埋蔵文化財が存することに起因する心理的要因による減価は通常想定されないことからすると、埋蔵文化財包蔵地の評価において「心理的要因による減価に相当する金額」を控除する必要はないものと考えられる。

(3) 発掘費用の額が確定している場合の取扱い

課税時期において、①評価対象地について発掘費用が確定している場合には、その発掘費用の額(課税時期において未払になっている金額に限る。)は、その土地の評価額から控除するのではなく、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められる債務」として、相続財産の価額から控除すべき債務に計上し、他方、評価対象地は発掘調査を了したものとして評価するのが相当である。

 

 

作成日:令和7年9月24