32-04_分割確定に伴う更正の請求(期限徒過の場合)

 

【質疑内容】

1 事実関係

(1) 令和X年2月1日に死亡した甲(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます。)の共同相続人は、いずれも甲の子である乙及び丙の2名です。

(2) 乙及び丙は、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」といいます。)について、相続により取得した財産の全部が未分割であるとして、相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定に基づき、民法の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算し、法定申告期限までに申告書を提出しました。

(3) 乙及び丙は、遺産分割協議を行い、令和X+6年2月1日に、甲の相続財産の全てを乙が取得することを主な内容とする当該分割協議が成立しました。

2 質疑事項

丙は、遺産分割協議が成立した令和X+6年2月1日の翌日から4月以内に本件相続税の更正の請求書を提出すべきところ、このことを令和X+6年8月1日まで失念していました。

今からでも本件相続税に係る更正の請求書を提出すれば認められる余地はありますか。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 相続税法関係

イ 相続税法第32条《更正の請求の特則》第1項は柱書及び同項第1号は、相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、同法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2《寄与分》を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったことにより当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、当該事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求(国税通則法第23条《更正の請求》第1項の規定による更正の請求をいいます。)をすることができる旨規定しています。

ロ 相続税法第55条本文は、相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする旨規定し、そのただし書は、その後において当該財産の分割があり、当該共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなった場合においては、当該分割により取得した財産に係る課税価格を基礎として、納税義務者において申告書を提出し、若しくは同法第32条第1項に規定する更正の請求をし、又は税務署長において更正若しくは決定をすることを妨げない旨規定しています。

(2) 国税通則法関係

イ 国税通則法第23条第1項本文及び同項第1号は、納税申告書を提出した者は、当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等につき更正をすべき旨の請求をすることができる旨規定しています。

ロ 国税通則法第23条第2項は、納税申告書を提出した者又は同法第25条《決定》の規定による決定を受けた者は、次の()ないし()のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、次の()ないし()に定める期間の満了する日が同法第23条第1項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限ります。)には、同項の規定にかかわらず、次の()ないし()に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求をすることができる旨規定しています。

() その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含みます。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内(第1号)

() その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たってその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があったとき 当該更正又は決定があった日の翌日から起算して2月以内(第2号)

() その他当該国税の法定申告期限後に生じた()又は()に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき 当該理由が生じた日の翌日から起算して2月以内(第3号)

 

2 回答

(1) 相続税又は贈与税の納税申告書を提出した者の一般的な事由による更正の請求ができるのは、国税通則法第23条第1項に規定する場合(通常の場合)及び同条第2項に規定する場合(一般的な後発的事由に基づく場合)ですが、相続税又は贈与税については、同条第1項及び第2項に規定する事由に該当しない場合、すなわち、課税価格又は相続税額若しくは贈与税額が国税に関する法律の規定に従って計算されている場合、あるいは同法に規定する一般的な後発事由にも該当しない場合であっても、相続、遺贈又は贈与により財産を取得した者の負担の公平を図るため、課税価格又は税額を更正すべきであると認められる場合があり、相続税法第32条第1項は、その場合の相続税法特有の事由を規定しています。

(2) 相続税法第32条第1項は柱書及び同項第1号を適用するためには、①相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者であること、②同法第55条の規定により分割されていない財産について民法(第904条の2を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたこと、③その後当該財産の分割が行われたこと、④共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったことにより当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったこと及び⑤当該事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求をすることが必要であるところ、丙が本件相続税に係る更正の請求をしたとしても、上記⑤の要件を充足しません(国税通則法第23条第1項又は第2項の要件も充足しません。)

したがって、丙が本件相続税の更正の請求書を提出したとしても、認められる余地はありません。

 

【参考】

次の法令を適用すれば、税務署長の職権による減額更正処分の余地があることから、一度、所轄税務署の資産課税部門へ相談されてはいかがでしょうか。

① 国税通則法第70条《国税の更正、決定等の期間制限》第1項柱書及び同項第1号は、更正又は決定は、その更正又は決定に係る国税の法定申告期限から5年を経過した日以後においては、することができない旨規定しています。

② 国税通則法第71条《国税の更正、決定等の期間制限の特例》第1項柱書は、更正決定等で次の各号に掲げるものは、当該各号に定める期間の満了する日が同法第70条の規定により更正決定等をすることができる期間の満了する日後に到来する場合には、同条の規定にかかわらず、当該各号に定める期間においても、することができる旨規定し、同法第71条第1項第2号は、申告納税方式による国税につき、その課税標準の計算の基礎となった事実のうちに含まれていた無効な行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたこと、当該事実のうちに含まれていた取り消しうべき行為が取り消されたことその他これらに準ずる政令で定める理由に基づいてする更正(納付すべき税額を減少させる更正又は純損失等の金額で当該課税期間において生じたもの若しくは還付金の額を増加させる更正若しくはこれらの金額があるものとする更正に限ります。)又は当該更正に伴い当該国税に係る加算税についてする賦課決定については、当該理由が生じた日から3年間と規定しています。

③ 国税通則法施行令第30条《国税の更正、決定等の期間制限の特例に係る理由》は、国税通則法第71条第1項第2号に規定する政令で定める理由は、国税通則法施行令第24条《還付加算金》第4項に規定する理由とする旨規定し、同項は、その理由として、国税通則法第23条第2項第1号及び第3号(国税通則法施行令第6条《更正の請求》第1項第5号に掲げる理由を除きます。)並びに国税通則法以外の国税に関する法律の規定により更正の請求の基因とされている理由(修正申告書の提出又は更正若しくは決定があったことを理由とするものを除きます。)で当該国税の法定申告期限後に生じたものとする旨規定しています。

 

 

作成日:令和7年9月24