【質疑内容】
保証債務や連帯債務がある場合の債務控除の可否について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法第13条《債務控除》第1項柱書及び同項第1号は、相続又は遺贈により財産を取得した者が同法第1条の3《相続税の納税義務者》第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含みます。)の金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定しています。
(2) 相続税法第14条第1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る旨規定しています。
(3) 相続税法基本通達14-3《保証債務及び連帯債務》は、保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする旨定めています。
イ 保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。
ロ 連帯債務については、連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、当該負担金額を控除し、連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者(以下14-3において「弁済不能者」という。)があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除すること。
2 裁判例等
(1) 東京地方裁判所昭和54年5月10日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
連帯保証債務についても、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、連帯保証人がその債務を履行しなければならない場合で、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額については債務控除の対象とすることができると解される。
(2) 東京地方裁判所昭和59年4月26日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
保証債務(連帯保証債務を含む。)は、保証人において将来現実にその債務を履行するか否か不確実であるばかりでなく仮に将来その債務を履行した場合でも、その履行による損失は、法律上は主たる債務者に対する求債権の行使によって補填されるものであるから、原則として相続税法14条1項に定める「確実と認められる」債務には該当しない。しかしながら、相続開始時の現況により(相続税法22条)、主たる債務者が弁済不能にある場合には、一般的に保証人においてその債務を履行しなければならないことが確実であり、かつ、その履行すべき債務について主たる債務者に対して求償権を行使しても返還を受ける見込みがない場合には、保証債務の履行による損失が補填されないこととなる。したがって、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償しても返還を受ける見込みがない場合には、保証債務についても、右にいう「確実と認められる」債務に該当するものとして、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることができると解される。
債務者(主たる債務者)が弁済不能の状態にあるか否かは、一般に債務者が破産、和議、会社更生あるいは強制執行等の手続開始を受け、又は事業閉鎖、行方不明、刑の執行等により債務超過の状態が相当期間継続しながら、他からの融資を受ける見込みもなく、再起の目途が立たないなどの事情により事実上債権の回収ができない状況にあることが客観的に認められるか否かで決せられるべきである。
3 回答
(1) 保証債務及び連帯債務
保証債務は、債権者と保証人との契約によって生ずるもので、保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しない場合に、保証人がその主たる債務者に代ってその債務を履行する従たる債務をいいます。保証人が死亡した場合、保証債務は、一般的には相続の対象になるものとされ、債権者が、保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべきことを請求することができ、また、主たる債務者に対して催告をした後であっても、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ、執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産について執行すべき旨抗弁することができます。そして、保証人がその債務を履行した場合は、保証人は、主たる債務者に対して求償権を取得することとなります。
また、連帯債務とは、数人の債務者が同じ内容の給付について、それぞれが独立に全部の給付をなすべき債務を負担し、そのうちの1人が債務を履行すれば債権は消滅するものをいいます。各債務者の債務は保証債務と異なり、主従の関係はなく、それぞれ独立であるものの、連帯債務者の1人が、自分の出損によって総債務者の共同の免責を得たときは、他の債務者に対してその負担部分に応じた償還を求め得るものとされています。
(2) 保証債務と債務控除
保証債務(連帯保証債務を含みます。)は、保証人において将来現実にその債務を履行するか否かは不確実であり、仮に将来その債務を履行した場合でも、その履行による損失は、法律上は主たる債務者に対する求債権の行使によって補填されるものであることから、原則として、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められる」債務には該当しないため、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることはできないものと解されます。
しかしながら、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償しても返還を受ける見込みがない場合には、相続税法第14条第1項に規定する「確実と認められる」債務に該当するものとして、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることができるものと解されます。
(3) 連帯債務と債務控除
連帯債務については、連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合には、その負担部分の金額について、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることができるものと解されます。
また、連帯債務者のうちに資力を喪失するなど弁済することができない状態にある者があり、かつ、求償権を行使しても弁済を受ける見込みがなく、その者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合には、その負担しなければならないと認められる部分の金額もまた、その債務控除を受けようとする者の負担部分として、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とすることができるものと解されます。
作成日:令和7年12月3日
