21の2-02_贈与契約に当たっての留意事項

 

【質疑内容】

甲は、孫に対して、10年間にわたり毎年200万円の現金を贈与することを検討しています。

この場合、当該孫との間で贈与契約を締結するに当たって留意すべき事項について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令

(1) 民法関係

イ 民法第549条《贈与》は、贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる旨規定しています。

ロ 民法第550条《書面によらない贈与の解除》本文は、書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる旨規定し、そのただし書は、履行の終わった部分については、この限りでない旨規定しています。

(2) 民事訴訟法関係

民事訴訟法第228条《文書の成立》第4項は、私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する旨規定しています。

(3) 相続税法関係

イ 相続税法第21条の2《贈与税の課税価格》第1項は、贈与により財産を取得した者がその年中における贈与による財産の取得について第1条の4《贈与税の納税義務者》第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、その者については、その年中において贈与により取得した財産の価額の合計額をもって、贈与税の課税価格とする旨規定しています。

ロ 相続税法第21条の10《相続時精算課税に係る贈与税の課税価格》は、相続時精算課税適用者が特定贈与者からの贈与により取得した財産については、特定贈与者ごとにその年中において贈与により取得した財産の価額を合計し、それぞれの合計額をもって、贈与税の課税価格とする旨規定しています。

ハ 相続税法第24条《定期金に関する権利の評価》第1項柱書及び同項第1号は、定期金給付契約で当該契約に関する権利を取得した時において定期金給付事由が発生しているものに関する権利の価額は、有期定期金の場合には、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額による旨規定しています。

() 当該契約に関する権利を取得した時において当該契約を解約するとしたならば支払われるべき解約返戻金の金額

() 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該契約に関する権利を取得した時において当該一時金の給付を受けるとしたならば給付されるべき当該一時金の金額

() 当該契約に関する権利を取得した時における当該契約に基づき定期金の給付を受けるべき残りの期間に応じ、当該契約に基づき給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額に、当該契約に係る予定利率による複利年金現価率(複利の計算で年金現価を算出するための割合として財務省令で定めるものをいいます。)を乗じて得た金額

(4) 相続税法基本通達(以下「相続税通達」といいます。)関係

イ 相続税通達1の3・1の4共-8《財産取得の時期の原則》の柱書及び(2)は、贈与による財産の取得時期は、書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時によるものとする旨定めています。

ロ 相続税通達24-1《「定期金給付契約に関する権利」の意義》は、相続税法第24条に規定する「定期金給付契約に関する権利」とは、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいい、毎期に受ける支分債権ではなく、基本債権をいうのであるから留意する旨定めています。

 

2 回答

本質疑の内容を前提として、甲と乙との間で贈与契約を締結するに当たって留意すべき事項は、次のとおりです。

(1) 贈与契約書の作成

イ 質疑の内容を前提とすると、まず、相続税法第24条に規定する定期金給付契約に関する権利、いわゆる定期贈与と認められないことが重要となります。この定期金給付契約に関する権利とは、相続税通達24-1の定めにより、契約によりある期間定期的に金銭その他の給付を受けることを目的とする債権をいうことから、一定期間にわたり定期的に贈与を行うことが贈与者及び受贈者間で契約されている場合には、その契約の時点で、定期金給付契約に関する権利の贈与として、相続税法第24条第1項第1号の規定により評価した上で、贈与税の課税関係が生じることとなります。

ロ 贈与は、民法第549条の規定により、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずることから、贈与者の贈与の意思表示だけなく、受贈者の贈与を受ける意思表示を必要とする契約であり、贈与による財産の取得時期については、相続税通達1の3・1の4共-8の定めにより、書面によるものについてはその契約の効力の発生した時と取り扱われています。

したがって、贈与の都度、贈与者の贈与をする旨の意思表示及び受贈者の贈与を受ける旨の意思表示をし贈与契約を締結した上で、これを処分証書である贈与契約書にして、当該各意思表示を明確にするとともに、贈与者及び受贈者(受贈者が未成年である場合には法定代理人である親権者)双方が署名又は押印(実印がベスト)をすれば、民事訴訟法第228条第4項の規定により、当該贈与契約書が贈与者及び受贈者の意思に基づいて作成されたと認められることで、当該贈与契約書の成立の真正が認められれば、特段の事情がない限り、当該贈与契約書に記載されたとおりの法律行為が行われたものと推定されることとなります。

ただし、一定期間にわたり定期的に贈与を行うことが贈与者及び受贈者間で契約されていると認められないことが重要であることから、例えば、当該贈与契約書に「毎年200万円を贈与する」などと記載することのないよう留意してください。

なお、現金を贈与した場合の贈与契約書については、印紙を貼付する必要はありません。

(2) 現金の授受の方法

イ 現金の授受の方法は、現金そのものを授受する方法及び振込みにより授受する方法があるところ、いずれの方法を採用するにせよ、贈与の履行の事実を残しておくことが重要となります。

ロ 贈与者固有の預貯金口座から受贈者固有の預貯金口座に贈与する金員を振り込む方法によるのがベストですが、贈与する金員を現金により授受する場合には、できれば同日中に、贈与者は贈与者固有の預貯金口座から贈与する金額に相当する現金を出金し受贈者に引き渡すとともに、受贈者は受贈者固有の預貯金口座に当該現金を入金し、贈与の履行の事実を客観的に確認できるようにします(この場合、出金した日(時間)が入金した日(時間)よりも後になることはありえないことに留意してください。)。

(3) 贈与を受けた現金の管理及び運用等

イ 実際に贈与があったか否かを判断する場合には、授受された現金の管理及び運用等の状況が最も重要なものの一つとなります。例えば、①贈与契約書などの形式を整えていたとしても受贈者とする者が当該贈与契約書の存在を知らないような場合、②贈与者とする者が受贈者とする者の預貯金通帳、印鑑及びキャッシュカードなどを保管し管理しているような場合、③入金する預貯金口座の名義が旧姓となっている場合や住所を移転しているにもかかわらず旧住所となっている場合などには、課税庁である税務署は、贈与者が死亡した場合の相続税の調査において、贈与の事実自体を否認し、贈与者である被相続人の相続財産であると認定してくるおそれがあります。

ロ 実際に贈与があったことを明確にするためには、まず、贈与契約書を2通作成し、贈与者及び受贈者がそれぞれ1通ずつ保管することとすれば、受贈者が贈与の事実を知らなかったということは避けられるものと考えられます。

次に、受贈者が贈与を受けた現金の処分権限を有すること、すなわち、当該現金を贈与者が自由に使えるような状態にあることです。この点については、贈与を受けた現金を入金した預貯金口座に係る預貯金通帳、印鑑及びキャッシュカードなどを受贈者が必ず保管・管理していることが必要となります。ほかには、例えば、贈与を受けた現金を、給与などが振り込まれているような受贈者固有の預貯金口座に入金することが考えられます。

なお、受贈者が未成年の場合には、法定代理人である親権者が管理することとなりますが、贈与された現金を、当該親権者が自身のために費消等をすることは、厳に避ける必要があります。

 

 

作成日:令和7年9月24