【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に死亡した甲の相続人は、甲の子である乙のみです(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます)。
(2) 甲の相続財産には、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(以下「本件土地」といいます。)が含まれていたところ、本件土地は、8階建の共同住宅(以下「本件共同住宅」といいます。)の敷地として利用されていました。
(3) 本件共同住宅は、総室数16室の共同住宅で、本件相続の開始日において、総室数16室のうち、12室は賃貸の用に供されていましたが、4室は空室でした(以下、当該空室で あった4室の部分を「本件各空室部分」といいます。)。
(4) 甲(本件相続の開始後は乙)は、本件共同住宅の管理を株式会社Aに委託していたところ、当該会社は、本件各空室部分の各賃借人の退去後、速やかに新たな賃借人の募集を行い、いずれも本件相続の開始後に、それぞれ新たな賃借人と賃貸借契約が締結されました。
なお、本件相続の開始日前後の空室期間は、最も長いもので約1年2か月、最も短いもので約3か月でした。
2 質疑事項
本件共同住宅は財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)93《貸家の評価》の定め、本件土地は評価通達26《貸家建付地》の定めにより、それらの価額を評価することになると思いますが、評価通達93及び評価通達26に定める賃貸割合をいずれも100%として評価しても差し支えありませんか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法関係
相続税法第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しています。
(2) 評価通達
イ 評価通達26は、貸家の敷地の用に供されている宅地(貸家建付地)の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する旨定めています。
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その宅地の 自用地として の価額 |
- |
その宅地の 自用地として の価額 |
× |
借地権 割 合 |
× |
借家権 割 合 |
× |
賃貸割合 |
また、評価通達26の(2)は、「賃貸割合」は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合による旨定めており、その注書の2は、次の算式の「賃貸されている各独立部分」には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない旨定めています。
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Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 |
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当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A) |
ロ 評価通達93は、貸家の価額は、次の算式により計算した価額によって評価する旨定めています。
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評価通達89《家屋の評価》、89-2《文化財建造物である家屋の評価》又は92《附属設備等の評価》の定めにより評価したその家屋の価額(A) |
- |
A |
× |
借家権 割 合 |
× |
賃貸割合 |
(3) 国税庁ホームページの質疑応答事例
国税庁ホームページの質疑応答事例「貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲」の【回答要旨】の2において、アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、その部分が、①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか、④空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうかなどの事実関係から総合的に判断する旨掲載されています。
(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/04/12.htm)
2 裁判例等
評価通達93及び26が貸家及び貸家建付地の評価額につき減額を認めているのは、貸家及び貸家建付地は建物及びその敷地の利用について制約を受けることなどにより建物及び敷地等の経済的価値が低くなることを考慮したものであると解され、構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合には当該独立部分及びこれに対応する敷地等の部分については法令上の制約がなく減価を考慮する必要がないことから、課税時期において現実に貸し付けられている独立部分の割合(賃貸割合)に応じた減額を認めることとしたものと解されます。もっとも、継続的に賃貸の用に供されている独立部分が課税時期にたまたま賃貸されていなかったような場合にまで当該独立部分を賃貸されていないものとして賃貸割合を算出することは、必ずしも不動産の取引実態等に即したものとはいえません。そこで、評価通達26の注書の2は、構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が継続的に賃貸されていたにもかかわらず課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められる場合には、例外的に当該独立部分(一時的空室部分)を賃貸部分と同様に取り扱うこととしたものと解されます。このような評価通達の趣旨に照らせば、構造上区分された複数の独立部分からなる家屋の一部が課税時期に賃貸されていない場合において、当該独立部分が一時的空室部分といえるためには、当該独立部分の賃貸借契約が課税時期前に終了したものの引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在し、現実に賃貸借契約終了から近接した時期に新たな賃貸借契約が締結されたなど、課税時期前後の賃貸状況等に照らし実質的にみて課税時期に賃貸されていたと同視し得ることを要することとなります(参考:大阪高等裁判所平成30年1月12日判決)。
3 回答
本件共同住宅は、独立して賃貸その他の用に供することができる各独立部分によって構成されているところ、本件各空室部分は、本件相続の開始日において空室であったものですが、その賃貸状況をみると、本件相続の開始日前後の空室期間は、最も長いもので約1年2か月、最も短いもので約3か月に及んでおり、本件各空室部分について、本件相続の開始前に賃貸借契約が終了した後も引き続き賃貸される具体的な見込みが客観的に存在したにもかかわらず、新たな賃貸借契約が締結されなかったことについて合理的な理由が存在したなどの事情は認められず、むしろ、本件各空室部分の賃借人を速やかに募集していたということを前提とすれば、そのような募集状況にあったにもかかわらず、最短のもので約3か月超も賃貸されていないことからすれば、上記のような事情はなかったものと推認されます。
そうすると、本件共同住宅の管理の状況や賃借人の募集の状況等の諸事情を考慮したとしても、本件各空室部分が実質的にみて本件相続の開始日に賃貸されていたと評価し得るものであるということはできないから、本件各空室部分が「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」に該当するものとは認められないものと考えられます。
したがって、本件共同住宅及び本件土地の各価額の評価に当たって、賃貸割合を100%として評価することはできないものと考えられます。
作成日:令和7年9月24日
