【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に甲が死亡し相続が開始しました(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件第1次相続」といいます。)。
なお、甲の共同相続人は、いずれも甲の子である乙及び丙の2名です。
(2) 本件第1次相続に係る遺産分割協議が成立する前の令和X+2年5月1日に、乙が死亡し相続が開始しました(以下、乙の死亡により開始した相続を「本件第2次相続」といいます。)。
なお、乙の共同相続人は、乙の配偶者である丁及び乙の子である戊の2名です(以下、乙、丁及び戊を併せて「乙ら」といいます)。
(3) 丁及び戊は、令和X+2年10月1日に、本件第2次相続に係る遺産分割協議をし、丁が本件第1次相続に係る乙の相続分を含む全ての相続財産を取得することを主な内容とする当該分割協議が成立しましたが、本件第1次相続に係る遺産分割協議は未だ成立していません。
(4) 本件第1次相続に係る相続財産には、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(以下「本件土地」といいます。)及びその上に存する家屋が含まれていたところ、当該家屋は、本件第1次相続の開始日までは甲及び乙らの居住の用、本件第2次相続の開始日までは乙らの居住の用、その後は丁及び戊の居住の用に供されています。
2 質疑事項
本件第2次相続に係る相続税の申告に当たって、本件第1次相続に係る乙の相続分について相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第1項の規定を適用することができますか。また、本件土地に租税特別措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》第1項の規定を適用することができますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 民法関係
イ 民法第896第1項《相続の一般的効力》本文は、相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継しています。
ロ 民法第898条《共同相続の効力》第1項は、相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する旨規定しています。
(2) 相続税法関係
イ 相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第1項は、被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、同条第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第1号に掲げる金額が第2号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする旨規定しています(第1号及び第2号略。以下、相続税法第19条の2第1項の規定を「配偶者の税額軽減」といいます。)。
ロ 相続税法第19条の2第2項本文は、同条第1項の相続又は遺贈に係る同法第27条《相続税の申告書》の規定による申告書の提出期限(以下「申告期限」といいます。)までに、当該相続又は遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていない場合における配偶者の税額軽減の適用については、その分割されていない財産は、同項第2号ロの課税価格の計算の基礎とされる財産に含まれないものとする旨規定し、そのただし書は、その分割されていない財産が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該財産が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該財産の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合には、その分割された財産については、この限りでない旨規定しています。
ハ 相続税法基本通達
相続税法基本通達19の2-8《分割の意義》は、相続税法第19条の2第2項に規定する「分割」とは、相続開始後において相続又は包括遺贈により取得した財産を現実に共同相続人又は包括受遺者に分属させることをいい、その分割の方法が現物分割、代償分割若しくは換価分割であるか、またその分割の手続が協議、調停若しくは審判による分割であるかを問わないのであるから留意する旨定めています。
(3) 租税特別措置法(以下「措置法」といいます。)関係
イ 措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》第1項は、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。以下同じ。)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限る。以下「特例対象宅地等」といいます。)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(以下「選択特例対象宅地等」といいます。)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下「小規模宅地等」といいます。)に限り、相続税法第11条の2《相続税の課税価格》に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に所定の割合を乗じて計算した金額とする旨規定しています(以下、措置法第69条の4第1項に規定する課税の特例を「小規模宅地等の特例」といいます。)。
ロ 措置法第69条の4第4項本文は、小規模宅地等の特例は、申告期限までに共同相続人又は包括受遺者によって分割されていない特例対象宅地等については、適用しない旨規定し、そのただし書は、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から3年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかったことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなった日として政令で定める日の翌日から4月以内)に分割された場合には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない旨規定しています。
2 裁判例等
最高裁判所平成17年10月11日第三小法廷決定は、遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法第249条《共有物の使用》以下に規定する共有と性質を異にするものではなく、そうすると、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである旨判断しています。
3 回答
遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法第249条以下に規定する共有と性質を異にするものではなく、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となります。
そうすると、本件第2次相続に係る遺産分割協議により丁が取得した本件第1次相続に係る乙の相続分は、本件第1次相続に係る共有持分権であり、また、本件第2次相続に係る相続税の申告において分割が行われたか否かの判断は、本件第1次相続において分割が行われたか否かではなく、本件第2次相続において分割が行われたか否かにより判断すべきであるところ、本件第2次相続に係る遺産分割協議は既に成立し分割が行われています。
したがって、本件第2次相続に係る相続税の申告に当たって、ほかの要件を充足する限り、本件第1次相続に係る乙の相続分について配偶者の税額軽減を適用すること及び本件土地(乙の相続分に限ります。)に小規模宅地等の特例を適用することは、いずれも可能であるものと考えられます。
作成日:令和7年9月24日
