【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年2月1日に死亡した甲の共同相続人は、いずれも甲の子である乙及び丙の2名です。
(2) 甲の相続財産のうち、土地などの不動産については、遺産分割協議が成立したのですが、有価証券及び預貯金など不動産以外の財産については、甲に係る相続税の申告期限までに遺産分割協議が成立する見込みはありません。
2 質疑事項
乙及び丙は、甲に係る相続税の課税価格をどのように計算すればよいですか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法第55条《未分割遺産に対する課税》本文は、相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2《寄与分》を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする旨規定しています。
(2) 相続税法基本通達55-1《「民法の規定による相続分」の意義》は、相続税法第55条本文に規定する「民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分」とは、民法第900条から第902条まで及び第903条に規定する相続分をいうのであるから留意する旨定めています。
2 回答
(1) 積上げ説(積上げ方式)と穴埋め説(穴埋め方式)
イ 積上げ説(積上げ方式)
積上げ説(積上げ方式)とは、未分割財産の価額に法定相続分の割合を乗じて計算した額を、分割済財産の価額に加算する方法です。
ロ 穴埋め説(穴埋め方式)
穴埋め説(穴埋め方式)とは、分割済財産を特別受益と同様に考え、民法第903条の規定に準じ、相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から、分割済財産の価額を控除して、未分割財産に係る相続分の割合を計算する方法です。
(2) 裁判例等
イ 東京地方裁判所平成17年11月4日判決は、要旨、次のとおり判断しています。
遺産の一部の分割がされ、残余が未分割である場合においては、遺産の一部の分割によって、遺産全体に対する各共同相続人の相続分の割合が変更されたものと解すべき理由はないから、各共同相続人は、未分割財産の分割に際しては、他の相続人に対し、遺産全体に対する自己の相続分に応じた価格相当分から既に分割を受けた遺産の価格を控除した価格相当分について、その権利を主張することができるものと解するのが相当である。そして、相続税法第55条本文は、遺産の一部の分割がされ、残余が未分割である場合の課税価格の計算が、上記のような実体上の権利関係に従って行われるように規定されたものと解されるから、被告の主張するいわゆる「穴埋め説」による解釈が相当である。
ロ 国税不服審判所平成27年6月3日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。
相続税法第55条の規定は、相続財産の全部又は一部がいまだ分割されていない時点では、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、未分割の個々の財産について具体的な主張をすることはできないが、未分割の財産全体について自己の相続分の割合に応じた持分的な権利を主張できることを踏まえて、相続税の申告又は課税をする場合において、相続財産の全部又は一部が分割されていないときは、未分割の財産については、持分的な割合に従って当該未分割の財産を取得したものとして課税価格を計算するものとしている。
そして、相続財産の一部のみが分割された場合、そのことによって、相続財産全体に対する各共同相続人の相続分の割合が変更されることはないから、各共同相続人は、他の共同相続人に対し、相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から既に分割を受けた財産の価額を控除した残りの価額相当分について、その権利を主張することができる。
そうすると、相続税法第55条に規定する「民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算する」とは、相続税の申告又は課税をする場合、各共同相続人が相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から既に分割を受けた財産の価額を控除した残りの価額相当分を取得したものとして計算する方法、すなわち穴埋方式により課税価格を計算することをいうと解するのが相当である。
なお、相続税法第55条に規定する「民法(第904条の2を除く。)の規定による相続分」とは、原則として、民法第900条から第903条《特別受益者の相続分》までに規定する相続分をいうのであるから、共同相続人の中に被相続人から贈与を受けた者がいる場合には、同法第903条の規定により、相続財産の価額に被相続人から贈与を受けた財産の価額を加える、いわゆる持戻計算(以下「持戻計算」という。)を行うこととなるので、被相続人から贈与を受けた財産の価額については、相続財産の価額への持戻計算を行った上で、穴埋方式により課税価格を計算することとなる。
(3) 回答
各共同相続人が相続財産全体に対する自己の相続分に応じた価額相当分から既に分割を受けた財産の価額を控除した残りの価額相当分を取得したものとして計算する方法、すなわち穴埋め方式により課税価格を計算することとなります。
作成日:令和7年9月24日
