1 相続税法における贈与税の非課税財産
(1) 相続税法第21条の3《贈与税の非課税財産》第1項柱書及び同項第2号は、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものの価額は、贈与税の課税価格に算入しない旨規定しています。
(2) 相続税法第21条の4《特定障害者に対する贈与税の非課税》第1項は、特定障害者(同法第19条の4《障害者控除》第2項に規定する特別障害者(同法第1条の4《贈与税の納税義務者》第1項第2号から第4号までの規定に該当する者を除き、以下「特別障害者」といいます。)及び同法第19条の4第2項に規定する障害者(特別障害者を除きます。)のうち精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者その他の精神に障害がある者として政令で定めるもの(同法第1条の4第1項第2号から第4号までの規定に該当する者を除きます。)をいいます。以下同じ。)が、信託会社その他の者で政令で定めるもの(以下「受託者」といいます。)の営業所、事務所その他これらに準ずるものでこの法律の施行地にあるものにおいて当該特定障害者を受益者とする特定障害者扶養信託契約に基づいて当該特定障害者扶養信託契約に係る財産の信託がされることによりその信託の利益を受ける権利(以下「信託受益権」といいます。)を有することとなる場合において、政令で定めるところにより、その信託の際、当該信託受益権につきこの項の規定の適用を受けようとする旨その他必要な事項を記載した申告書(以下「障害者非課税信託申告書」といいます。)を納税地の所轄税務署長に提出したときは、当該信託受益権でその価額のうち6,000万円(特定障害者のうち特別障害者以外の者にあっては、3,000万円)までの金額(既に他の信託受益権について障害者非課税信託申告書を提出している場合には、当該他の信託受益権でその価額のうちこの項の規定の適用を受けた部分の価額を控除した残額)に相当する部分の価額については、贈与税の課税価格に算入しない旨規定しています。
2 相続税法における贈与税の非課税規定の活用
(1) 相続税法第21条の3第1項第2号(生活費又は教育費の贈与)
イ 非課税の概要
扶養義務者相互間において、生活費又は教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち通常必要と認められるものについては、贈与税は非課税となります。
ロ 扶養義務者とは
扶養義務者とは、①配偶者、②直系血族及び兄弟姉妹、③家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族、④3親等内の親族で生計を一にする者をいいます。
ハ 生活費とは
生活費とは、その者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます。)をいい、また、治療費や養育費その他これらに準ずるもの(保険金又は損害賠償金により補てんされる部分の金額を除きます。)も生活費に含まれます。
なお、生活費とは、例えば次に掲げるような費用等です。
(イ) 日常の衣食住に必要な費用
(ロ) 治療費、養育費
(ハ) 婚姻後の日常生活を営むために必要な家具什器等(家具、寝具及び家電製品等)又は当該家具什器等の購入費用(その全額を家具什器等の購入費用に充てた場合に限られます。)。
(ニ) 検査・検診代、分娩・入院費など出産に要する費用(保険等により補てんされる部分を除きます。)
(ホ) 新生児のための寝具、産着等ベビー用品の購入費
ニ 教育費とは
教育費とは、被扶養者の教育上通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいい、義務教育費には限られないため、幼稚園、高校、大学、各種学校等の義務教育以外の教育に要する費用も含まれます。
なお、教育費とは、例えば次に掲げるような費用等です。
(イ) 学資、教材費、文具費等
(ロ) 通学のための交通費、学級費、修学旅行参加費
ホ 通常必要と認められるものとは
通常必要と認められるものとは、贈与を受けた者(被扶養者)の需要と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいいます。
ヘ 注意点
(イ) 贈与税が非課税となる生活費又は教育費は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与を受けた財産であることから、数年間分の生活費又は教育費を一括して贈与を受けた場合において、その財産が生活費又は教育費に充てられずに預貯金となっている場合、株式や家屋の購入費用に充てられた場合などのように、その生活費又は教育費に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。
なお、教育費については、別途、租税特別措置法第70条の2の2に直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度が設けられています。
(ロ) 結婚式・披露宴の費用を誰(子(新郎・新婦)、その親(両家))が負担するかは、その結婚式・披露宴の内容、招待客との関係・人数や地域の慣習などによって様々であると考えられますが、それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき者それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与には当たりません。
なお、結婚・子育て資金については、別途、租税特別措置法第70条の2の3に直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度が設けられています。
(2) 相続税法第21条の4第1項(特定障害者に対する贈与税の非課税)
国内に居住する特定障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を取得した場合には、その信託の際に「障害者非課税信託申告書」を信託会社などの営業所を経由して特定障害者の納税地の所轄税務署長に提出することにより、信託受益権の価額のうち、6,000万円(特別障害者以外の者は3,000万円)までの金額に相当する部分については贈与税が非課税とされます。
この特定障害者に対する贈与税の非課税制度は、贈与税の非課税制度であるため、委託者は個人に限られますが、扶養親族等の有無の制限はありません。
相続税対策として、また、特定障害者の方の生活費などに充てるためにも、この制度を活用できると考えられます。
作成日:令和7年9月24日
