相続税対策(第1次相続と第2次相続)

1 第1次相続と第2次相続

(1) 夫婦と子2人の4人家族を想定します。

まず、夫に相続が開始したとします。これが第1次相続です。

次に、その後、妻に相続が開始したとします。これが第2次相続です。

(2) 第1次相続に係る納付すべき相続税額だけを考えるのであれば、相続税法第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》第1項に規定する配偶者の税額軽減を最大限に活用すれば、第1次相続に係る配偶者の納付すべき相続税額は最少となります。すなわち、法定相続分又は1億6,000千万円までは、配偶者の納付すべき相続税額は零円(0円)となります。

しかしながら、第1次相続に係る納付すべき相続税額だけでなく、第2次相続を見据えて、第1次相続に係る納付すべき相続税額及び第2次相続に係る納付すべき相続税額の合計額が最少となるような対策も、相続税対策としては必要となります。

(3) 一般的に、第2次相続では、法定相続人の数が減ることから、①相続税法第12条《相続税の非課税財産》第1項第5号に規定する保険金の非課税限度額、②同項第6号に規定する退職手当金等の非課税限度額及び③同法第15条《遺産に係る基礎控除》第1項に規定する遺産に係る基礎控除額が減り、また、④同法第16条《相続税の総額》に規定する相続税の総額の計算に関しても影響を及ぼすほか、⑤配偶者の税額軽減を適用する余地はなく、⑥租税特別措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》を適用すべき土地がなくなることも想定されることから、第2次相続に係る相続税の負担は大きくなる傾向にあります。

 

2 第1次相続及び第2次相続に係る各納付すべき相続税額の試算

(1) 試算に当たっての前提条件

上記1の(1)の相続関係を基に、第一次相続及び第2次相続に係る各納付すべき相続税額を試算してみたいと思いますが、試算に当たって、次のとおりの前提条件を設定します。

イ 夫が所有している土地は、夫及び妻が居住の用に供している家屋の敷地のみで、当該敷地の第1次相続の開始時点での評価額は50,000千円(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用後の額は10,000千円)で、第2次相続が開始するまで地価変動はないものとし、また、妻が所有する土地はないものとします。

ロ 長男及び長女は、いずれも夫及び妻とは別居で生計を別にしており、それぞれが所有する家屋に居住しているものとします。

ハ ①夫は、契約者(掛金の負担者)及び被保険者を夫、受取人を妻とする生命保険契約(死亡保険金の額は15,000千円)を、②妻は、契約者(掛金の負担者)及び被保険者を妻、受取人を夫(夫の死亡後は長男及び長女各2分の1の割合)とする生命保険契約(死亡保険金の額は15,000千円)を、それぞれ生命保険会社と契約していたものとします。

ニ 上記以外については、夫が所有する財産の額は140,000千円、妻が所有する財産の価額は50,000千円とします。

ホ 第1次相続及び第2次相続において、債務及び葬式費用の金額は、いずれもないものとします。

(2) 第1次相続及び第2次相続に係る各納付すべき相続税額の試算

イ 第1次相続において配偶者の税額軽減を最大限適用する場合

() 第1次相続に係る納付すべき相続税額           (単位:千円)

区 分

各人の合計

長男

長女

取得財産の価額

150,000

150,000

0

0

課税価格

150,000

150,000

0

0

基礎控除額

48,000

-

-

-

相続税の総額

14,950

-

-

-

算出税額

14,950

14,950

0

0

配偶者の税額軽減額

14,950

14,950

-

-

納付すべき相続税額

0

0

0

0

(注)取得財産の価額は、①土地10,000千円(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例適用後の価額)、②死亡保険金0円(非課税限度額(5,000千円×3人)控除後の価額)及び③その他の財産140,000千円の合計150,000千円となります。

() 第2次相続に係る納付すべき相続税額     (単位:千円)

区 分

各人の合計

長男

長女

取得財産の価額

260,000

130,000

130,000

課税価格

260,000

130,000

130,000

基礎控除額

42,000

-

-

相続税の総額

53,200

-

-

算出税額

53,200

26,600

26,600

配偶者の税額軽減額

-

-

-

納付すべき相続税額

53,200

26,600

26,600

(注)取得財産の価額は、①土地50,000千円(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例適用不可)、②死亡保険金5,000千円(非課税限度額(5,000千円×2人)控除後の価額)、③第1次相続の夫の死亡保険金15,000千円、④夫のその他相続財産140,000千円及び③その他の財産50,000千円の合計260,000千円となります。

ロ 第1次相続及び第2次相続ともに法定相続分どおり相続する場合

() 第1次相続に係る納付すべき相続税額           (単位:千円)

区 分

各人の合計

長男

長女

取得財産の価額

150,000

75,000

37,500

37,500

課税価格

150,000

75,000

37,500

37,500

基礎控除額

48,000

-

-

-

相続税の総額

14,950

-

-

-

算出税額

14,950

7,475

3,737.5

3,737.5

配偶者の税額軽減額

7,475

7,475

-

-

納付すべき相続税額

7,475

0

3,737.5

3,737.5

(注)取得財産の価額は、①土地10,000千円(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例適用後の価額)、②死亡保険金0円(非課税限度額(5,000千円×3人)控除後の価額)及び③その他の財産140,000千円の合計150,000千円となります。

() 第2次相続に係る納付すべき相続税額     (単位:千円)

区 分

各人の合計

長男

長女

取得財産の価額

185,000

92,500

92,500

課税価格

185,000

92,500

92,500

基礎控除額

42,000

-

-

相続税の総額

28,900

-

-

算出税額

28,900

14,450

14,450

配偶者の税額軽減額

-

-

-

納付すべき相続税額

28,900

14,450

14,450

(注)取得財産の価額は、①土地50,000千円(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例適用不可)、②死亡保険金5,000千円(非課税限度額(5,000万円×2人)控除後の価額)、③第1次相続の夫の死亡保険金15,000千円、④夫のその他相続財産65,000千円及び③その他の財産50,000千円の合計185,000千円となります。

(3) 第1次相続及び第2次相続に係る各納付すべき相続税額の試算結果

上記(2)では、①第1次相続において配偶者の税額軽減を最大限適用する場合と②第1次相続及び第2次相続ともに法定相続分どおり相続する場合の二つの場合で試算してみましたが、両者を比較すると、①の場合には、第1次相続及び第2次相続に係る各納付すべき税額の合計額は53,200千円、②の場合には、第1次相続及び第2次相続に係る各納付すべき税額の合計額は36,375千円となり、実に16,825千円の差が生じることとなります(ほかにも分割の割合により異なる結果となります。)。

このように、相続税対策においては、第1次相続だけでなく、第2相続を見据えた対策をすることが重要となります。 

 

 

作成日:令和7年9月24