相続税対策(土地の購入)

1 路線価及び評価倍率の評定等

(1) 財産評価基準書

相続税法第22条《評価の原則》は、同法第3章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しており、ここにいう時価とは、課税時期における当該財産の客観的な交換価値をいうものと解されています。

しかしながら、客観的交換価値は、必ずしも一義的に確定されるものではないから、これを個別に評価する方法をとった場合には、その評価方式等により異なる評価額が生じたり、課税庁の事務負担が過大となり、大量に発生する課税事務の迅速な処理が困難となったりするおそれがあります。そこで、課税実務上は、特別の定めのあるものを除き、相続財産評価の一般的基準が財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)によって定められ、原則としてこれに定められた画一的な評価方式によって相続財産を評価することとされています。

このように、相続税及び贈与税において、土地等の価額は、時価により評価することとされているところ、相続税及び贈与税の申告に当たり、納税者が土地等の時価を把握することは必ずしも容易ではないことから、相続税及び贈与税の申告の便宜並びに課税の公平を図る観点から、各国税局(国税事務所)では、毎年、全国の民有地について、土地等の価額の基準となる路線価及び評価倍率を評定した上で、財産評価基準書として公開しています。

(2) 路線価及び評価倍率の評定

路線価は、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額及び精通者意見価格等を基として、公示価格と同水準の価額(時価)のおおむね8割程度を目途として、各国税局長(国税事務所長)が路線ごとに1㎡当たりの価額として評定しています。

また、評価倍率も路線価と同様、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基として、公示価格と同水準の価額(時価)のおおむね8割程度を目途として、各国税局長(国税事務所長)が地価事情の類似する地域ごとに評定しています。

すなわち、路線価又は評価倍率を用いて評価通達に基づき評価した土地等の価額は、時価のおおむね8割程度の価額となります。

 

2 土地の購入

(1) 土地を購入した場合には、上記1のとおり、時価と評価通達に基づき評価した価額との割合の差を利用して相続財産の価額を減らすことができます。

例えば、時価100,000千円の土地を時価に相当する100,000千円で購入した場合、(理論上)路線価又は評価倍率を用いて評価通達に基づき評価した土地等の価額は80,000千円となり、20,000千円の相続財産を減らすことができます(相続税対策として行う場合にどの程度の効果があるかは、実際に、路線価又は評価倍率を用いて評価通達に基づき土地の価額を評価する必要があります。)。

(2) ただし、次のようなリスクがあることも考慮に入れておく必要があります。

イ 地価変動のリスク

地価上昇であればともかく、地価下落があると、そもそも相続財産を目減りさせてしまいます。

ロ 固定資産税及び都市計画税等のコストの負担

賃貸の用に供するなど使用目的のある土地であればよいのですが、使用目的もなく、遊休地となる場合には、固定資産税及び都市計画税などのコストを負担しなければなりません。

ハ 評価通達6項の適用のおそれ

課税庁が評価通達6項を適用して評価してくるおそれがあります。

※ 評価通達6《この通達の定めにより難い場合の評価》は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する旨定めています。

 

【追記】

「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」は、デジタル化が進む経済社会に対応した税務・税制のあり方について議論することを目的として、政府税制調査会の下に設置された専門家会合です。

そして、令和7年1113日に開催された第4回経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合において、国税庁説明資料として、「財産評価を巡る諸問題」が示されました(当該説明資料は内閣府ホームページの「https://www.cao.go.jp/zei-cho/content/7digital-noukan4kai3.pdf」に掲載されています。)。この「財産評価を巡る諸問題」において、賃貸不動産や不動産小口化商品を利用した相続税及び贈与税に関連した種々の問題点が散見されるとして、いくつかの事例が示されています。

 

近々、財産評価基本通達の改正(又は個別通達の新設)が想定されるため注意する必要があります。 

 

作成日:令和7年9月24

追記日:令和7年12月3日