(措)37の11の3-02_特定口座内で譲渡した上場株式等の取得費

 

【質疑内容】

甲は、令和X年中に源泉徴収選択口座において、上場株式を譲渡しましたが、令和X年分の上場株式等の譲渡所得の金額の計算上、概算取得費を取得費とすることができますか。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 所得税法関係

イ 所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定しています。

ロ 所得税法第48条《有価証券の譲渡原価等の計算及びその評価の方法》第3項は、居住者が2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券につき同法第38条第1項の規定によりその者の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、政令で定めるところにより、それぞれの取得に要した金額を基礎として同法第48条第1項の規定に準じて評価した金額とする旨規定しています。

所得税法施行令第105条《有価証券の評価の方法》第1項第1号は、総平均法とは、有価証券をその種類及び銘柄(以下、このハにおいて「種類等」といいます。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その年1月1日において有していた種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額とその年中に取得した種類等を同じくする有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して計算した価額をその1単位当たりの取得価額とする方法をいう旨規定しています。

所得税法施行令第118条《譲渡所得の基因となる有価証券の取得費等》第1項は、居住者が所得税法第48条第3項に規定する2回以上にわたって取得した同一銘柄の有価証券で譲渡所得の基因となるものを譲渡した場合には、その譲渡につき同法第38条第1項の規定によりその者の当該年分の譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、当該有価証券を最初に取得した時(その後既に当該有価証券の譲渡をしている場合には、直前の譲渡の時。以下、このニにおいて同じ。)から当該譲渡の時までの期間を基礎として、当該最初に取得した時において有していた当該有価証券及び当該期間内に取得した当該有価証券につき所得税法施行令第105条第1項第1号(総平均法)に掲げる総平均法に準ずる方法によって算出した1単位当たりの金額により計算した金額とする旨規定しています。

所得税基本通達3816《土地建物等以外の資産の取得費》は、土地建物等以外の資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、当該収入金額の100分の5に相当する金額を取得費として譲渡所得の金額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする旨定めています。

(2) 租税特別措置(以下「措置法」といいます。)法関係

イ 措置法第第37条の11《上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例》第1項は、居住者が、平成28年1月1日以後に上場株式等の譲渡をした場合には、当該上場株式等の譲渡による譲渡所得については、所得税法第22条《課税標準》及び同法第89条《税率》並びに同法第165条《総合課税に係る所得税の課税標準、税額等の計算》の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該上場株式等の譲渡に係る譲渡所得の金額として政令で定めるところにより計算した金額に対し、上場株式等に係る課税譲渡所得等の金額の100分の15に相当する金額に相当する所得税を課する旨規定し、措置法第37条の11第2項柱書及び同項第1号は、「上場株式等」とは、株式等で金融商品取引所に上場されているものをいう旨規定しています。

措置法第37条の11の3《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項は、居住者が、同条第3項第2号に規定する上場株式等保管委託契約に基づき同項第1号に規定する特定口座に係る振替口座簿に記載若しくは記録がされ、又は特定口座に保管の委託がされている上場株式等(以下「特定口座内保管上場株式等」という。)の譲渡をした場合には、政令で定めるところにより、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額と当該特定口座内保管上場株式等以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額とを区分して、これらの金額を計算するものとする旨規定しています。

措置法第37条の11の3第3項第1号は、特定口座とは、居住者が、同条第1項の規定の適用を受けるため、金融商品取引法第2条《定義》第9項に規定する金融商品取引業者、同条第11項に規定する登録金融機関又は投資信託及び投資法人に関する法律第2条《定義》第11項に規定する投資信託委託会社(以下「金融商品取引業者等」という。)の営業所に、政令で定めるところにより、その口座の名称、当該金融商品取引業者等の営業所の名称及び所在地、その口座に設ける勘定の種類、その口座に係る振替口座簿に記載若しくは記録がされ、又はその口座に保管の委託がされている上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算につき措置法第37条の11の3第1項の規定の適用を受ける旨その他の財務省令で定める事項を記載した届出書(以下「特定口座開設届出書」という。)の提出をして、当該金融商品取引業者等との間で締結した上場株式等保管委託契約に基づき設定された上場株式等の振替口座簿への記載若しくは記録若しくは保管の委託(以下「保管の委託等」という。)に係る口座をいう旨規定しています。

措置法第37条の11の3第3項第2号は、上場株式等保管委託契約とは、同条第1項の規定の適用を受けるために同項の居住者が金融商品取引業者等と締結した上場株式等の保管の委託等に係る契約で、その契約書において、上場株式等の保管の委託等は当該保管の委託等に係る口座に設けられた特定保管勘定(当該契約に基づき当該口座に保管の委託等がされる上場株式等につき、当該保管の委託等に関する記録を他の取引に関する記録と区分して行うための勘定をいう。)において行うこと、当該特定保管勘定においては当該居住者の次に掲げる上場株式等のみを受け入れること、当該特定保管勘定において保管の委託等がされている上場株式等の譲渡は当該金融商品取引業者等への売委託による方法、当該金融商品取引業者等に対してする方法その他政令で定める方法によりすることその他政令で定める事項が定められているものをいう旨規定しています。

() 特定口座開設届出書の提出後に、当該金融商品取引業者等への買付けの委託(当該買付けの委託の媒介、取次ぎ又は代理を含む。)により取得をした上場株式等又は当該金融商品取引業者等から取得をした上場株式等で、その取得後直ちに当該口座に受け入れるもの(措置法第37条の11の3第3項第2号イ)

() 当該金融商品取引業者等以外の金融商品取引業者等に開設されている当該居住者の特定口座(以下、このロにおいて「他の特定口座」という。)から、政令で定めるところにより、当該他の特定口座に係る特定口座内保管上場株式等の全部又は一部の移管がされる場合(当該特定口座内保管上場株式等の一部の移管がされる場合にあっては、当該移管がされる特定口座内保管上場株式等と同一銘柄の特定口座内保管上場株式等は全て当該移管がされる特定口座内保管上場株式等に含まれる場合に限る。)の当該移管がされる上場株式等(措置法第37条の11の3第3項第2号ロ)

() 上記()及び()に掲げるもののほか政令で定める上場株式等(措置法第37条の11の3第3項第2号ハ)

措置法第37条の11の3第7項は、金融商品取引業者等は、その年において当該金融商品取引業者等に開設されていた特定口座がある場合には、財務省令で定めるところにより、当該特定口座を開設した居住者の氏名及び住所、その年中に当該特定口座において処理された上場株式等の譲渡の対価の額、当該上場株式等の取得費の額、当該譲渡に要した費用の額、当該譲渡に係る所得の金額その他の財務省令で定める事項を記載した報告書(以下「特定口座年間取引報告書」という。)2通を作成し、その年の翌年1月31日までに、1通を当該金融商品取引業者等の当該特定口座を開設する営業所の所在地の所轄税務署長に提出し、他の1通を当該居住者に交付しなければならない旨規定しています。

措置法第37条の11の4《特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等に対する源泉徴収等の特例》第1項は、居住者に対し国内においてその営業所に開設されている特定口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡の対価の支払をする金融商品取引業者等は、当該居住者から、政令で定めるところにより、その年最初に当該特定口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡をする時までに、当該金融商品取引業者等の当該特定口座を開設する営業所に特定口座源泉徴収選択届出書(この項の規定の適用を受ける旨その他財務省令で定める事項を記載した書類をいう。以下同じ。)の提出があった場合において、その年中に行われた当該特定口座(以下「源泉徴収選択口座」という。)に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡により同条第2項に規定する源泉徴収選択口座内調整所得金額が生じたときは、当該譲渡の対価の支払をする際、当該源泉徴収選択口座内調整所得金額に100分の15の税率を乗じて計算した金額の所得税を徴収し、その徴収の日の属する年の翌年1月10日までに、これを国に納付しなければならない旨規定しています。

措置法第37条の11の4第3項は、居住者の源泉徴収選択口座を開設している金融商品取引業者等は、当該源泉徴収選択口座においてその年中に行われた同条第2項に規定する対象譲渡等により、当該対象譲渡等に係る同項に規定する源泉徴収口座内通算所得金額が同項に規定する源泉徴収口座内直前通算所得金額に満たないこととなった場合には、その都度、当該居住者に対し、当該満たない部分の金額に100分の15を乗じて計算した金額に相当する所得税を還付しなければならない旨規定しています。

措置法第37条の11の5《確定申告を要しない上場株式等の譲渡による所得》第1項柱書及び第1号は、その年分の所得税に係る源泉徴収選択口座を有する居住者で、当該源泉徴収選択口座につき、その年中にした当該源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡につき同法第37条の11の3第1項の規定に基づいて計算された当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を有するものは、その年分の所得税については、同法第37条の11第1項に規定する上場株式等に係る譲渡所得の金額若しくは同法第37条の12の2《上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除》第2項若しくは同条第6項に規定する上場株式等に係る譲渡損失の金額の計算上、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を除外したところにより、所得税法第120条《確定所得申告》から同法第127条《年の中途で出国をする場合の確定申告》まで及び措置法第37条の12の2第9項において準用する所得税法第123条《確定損失申告》第1項の規定を適用することができる旨規定しています。

租税特別措置法施行令(令和3年政令第119号による改正前のもの。以下「措置法施行令」という。)第25条の10の2《特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例》第1項前段は、措置法第37条の11の3第1項に規定する特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算は、同項の居住者が有するそれぞれの特定口座ごとに、当該特定口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得と当該特定口座内保管上場株式等以外の株式等の譲渡による譲渡所得とを区分して、当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を計算することにより行うものとする旨規定しています。

また、措置法施行令第25条の10の2第1項後段は、同項前段の計算において、所得税法第38条第1項の規定によりその者のその年分の当該特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額の計算に係る同法第48条の規定並びに所得税法施行令第2編第1章第4節第3款(同令第118条(上記1(4))を含む。)及び同令第167条の7《株式交換等による取得株式等の取得価額の計算等》第4項から第7項までの規定の適用については、措置法施行令第25条の10の2第1項各号に定めるところによる旨規定し、同項第2号は、当該居住者の有する同一銘柄の上場株式等のうちに当該特定口座内保管上場株式等と当該特定口座内保管上場株式等以外の上場株式等とがある場合には、これらの上場株式等については、それぞれその銘柄が異なるものとして、所得税法施行令第2編第1章第4節第3款及び同令第167条の7第4項から第7項までの規定を適用する旨、措置法施行令第25条の10の2第1項第3号は、一の特定口座において一の日に2回以上にわたって同一銘柄の特定口座内保管上場株式等の譲渡があった場合には、当該一の日におけるこれらの譲渡については、これらの譲渡のうち最後の譲渡の時にこれらの譲渡があったものとみなして、所得税法施行令第118条の規定を適用する旨それぞれ規定しています。

措置法施行令第25条の10の2第14項は、措置法第37条の11の3第3項第2号ハに規定する政令で定める上場株式等は、措置法施行令第25条の10の2第14項各号に掲げる上場株式等とする旨規定し、同項第17号は、居住者が有する上場株式等以外の株式等で、その株式等の上場等の日の前日において当該居住者が有する当該株式等と同一銘柄の株式等の全てを、その上場等の日に特定口座(当該居住者がその特定口座を開設している金融商品取引業者等の営業所の長に対し、当該株式等の取得の日及び取得に要した金額を証する書類その他の財務省令で定める書類を提出した場合における当該特定口座に限る。)に係る振替口座簿に記載若しくは記録をし、又は当該特定口座に保管の委託をする方法により受け入れるものを掲げています。

租税特別措置法施行令の一部を改正する政令(平成17年政令第103号)附則(以下「平成17年改正令附則」という。)第11条《平成17年4月1日から平成21年5月31日までの間の特定口座への上場株式等の保管の委託に関する経過措置》第4項は、特定口座において処理された特例上場株式等の同条第3項に規定する取得費の額の計算の基礎となる取得価額及び取得の日が同項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める取得価額及び取得の日と異なる場合には、当該特定口座を開設する金融商品取引業者等の営業所の所在地の所轄税務署長がその異なることについて当該営業所の長の責めに帰すべき理由があると認める場合を除き、当該特定口座において措置法第37条の11の4第1項に規定する源泉徴収選択口座内調整所得金額又は同条第3項に規定する満たない部分の金額として計算された金額は、当該特例上場株式等の平成17年改正令附則第11条第3項各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める取得価額及び取得の日を基礎として計算されたものとみなす旨規定し、同条第5項は、同条第4項に規定する異なる場合において、その異なることにより所得税の負担を減少させる結果となるときは、当該特定口座に係る新法第37条の11の5第1項各号に掲げる金額については、同条の規定は適用しない旨規定しています。

「租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて(法令解釈通達)」(平成14年6月24日付課資3-1ほか国税庁長官通達。以下「措置法通達」という。)37103711共-13《株式等の取得価額》は、株式等を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、所得税法第38条第1項及び同法第48条の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、譲渡をした同一銘柄の株式等について、当該株式等の譲渡による収入金額の100分の5に相当する金額(以下「概算取得費」という。)を譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費として計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする旨定めています。

措置法通達37103711共-15《株式等を取得するために要した負債の利子》は、一般株式等に係る譲渡所得等の金額又は上場株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除する株式等を取得するために要した負債の利子の額は、株式等に係る譲渡所得等の基因となった株式等を取得するために要した負債の利子で、その年中における当該株式等の所有期間に対応して計算された金額とする旨定めています。

措置法通達3711の3-14《株式等に係る譲渡所得等の課税の特例に関する取扱い等の準用》は、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得等の金額の計算については、37103711共-1から37103711共-12まで、37103711共-1437103711共-18から37103711共-21まで、37103711共-2437111から371113まで及び3712の2-1の取扱いを準用する旨定めています。

 

2 裁判例等

国税不服審判所令和6年4月22日裁決は、要旨次のとおり判断しています。

(1) 特定口座制度が創設された経緯等

特定口座制度は、株式等の譲渡益課税について、平成15年1月1日以降、源泉分離選択課税制度が廃止され、申告分離課税に一本化されたことに伴い、申告分離課税になじみのなかった個人投資家の申告事務の負担軽減の観点から創設された制度であり、金融商品取引業者等に開設した特定口座を通じて行われる一定の上場株式等の譲渡に係る所得金額の計算・源泉徴収・申告不要等の各特例から構成されています。

(2) 特定口座制度に係る各規定

特定口座は、居住者が金融商品取引業者等との間で上場株式等保管委託契約を締結して開設する口座であり(措置法第37条の11の3第3項第1号)、既に開設された特定口座に新たに受け入れることのできる上場株式等は、原則として、その特定口座において行われた取引により取得した上場株式等に限られるものとされています(同項第2号イ)。

そして、金融商品取引業者等が特定口座で受け入れた上場株式等である特定口座内保管上場株式等を、居住者が同口座内で譲渡した場合には、その譲渡による譲渡所得の金額は、当該特定口座内保管上場株式等以外の株式等の譲渡による譲渡所得の金額と区分して計算し(措置法第37条の11の3第1項。以下、この計算方法を「区分計算」といいます。)、居住者が特定口座を複数有する場合には、それぞれの特定口座ごとに計算することとされています(措置法施行令第25条の10の2第1項前段)。その上で、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額の計算に当たっては、2回以上にわたって取得した同一銘柄の株式等の取得費については、所得税法施行令第105条第1項第1号に掲げる総平均法に準ずる方法により計算するとされているところ(所得税法第48条第3項及び所得税法施行令第118条第1項)、同一銘柄の上場株式等のうちに特定口座内保管上場株式等と当該特定口座内保管上場株式等以外の上場株式等とがある場合には、これらの上場株式等については、それぞれその銘柄が異なるものとするほか(措置法施行令第25条の10の2第1項第2号)、一の特定口座において一の日に2回以上にわたって同一銘柄の特定口座内保管上場株式等の譲渡があった場合には、当該一の日におけるこれらの譲渡については、これらの譲渡のうち最後の譲渡の時にこれらの譲渡があったものとみなして、所得税法施行令第118条の規定を適用するとされています(措置法施行令第25条の10の2第1項第3号)。

また、特定口座内の取引に係る所得については、居住者において、源泉徴収を選択することも可能であり(措置法第37条の11の4第1項)、源泉徴収を選択した場合には、上場株式等に係る譲渡所得の金額の計算上、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を除外して申告をすることができるとされています(措置法第37条の11の5第1項)。

(3) 特定口座制度に係る各規定の解釈

上記(1)及び(2)からすると、特定口座制度は、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額に係る区分計算の特例と、特定口座においてした上場株式等の譲渡による所得に係る源泉徴収や申告不要の特例等とが相まって、個人投資家の所得計算や申告手続に係る負担軽減の基礎となっている制度であるといえ、このような特定口座制度の下においては、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算上取得費に算入する金額は、その特定口座内における上場株式等の受入れに係る記録を基礎として、金融商品取引業者等において、特定口座内保管上場株式等に関する固有の計算方法により一元的に計算することが予定されているというべきです。

そして、居住者が特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得について源泉徴収を選択し、源泉徴収選択口座において生じた譲渡所得の金額を申告することを選択した場合における取得費の計算方法に関して法令が上記(2)以外に別段の規定を設けていない以上、上記解釈はかかる場合にも妥当し、上記(2)の各規定と異なる方法による取得費の計算は予定されていないもの、換言すれば、法は、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、居住者において同所得の金額の計算上取得費に算入する金額の計算をすることを予定していないものと解するのが相当です。

(4) 措置法通達等の定めについて

以上の解釈を踏まえれば、措置法通達3711の3-14が、概算取得費による取得費を認める旨を定めた措置法通達37103711共-13を準用していないことは、特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額の計算に当たり、概算取得費を取得費とすることを認めない趣旨であると解するのが相当であって、この理は、上記(3)で述べた、法は、源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額を申告するに当たり、居住者において同所得の金額の計算上取得費に算入する金額の計算をすることを予定していないとの解釈に沿うものです。

また、所得税基本通達3816は、措置法通達37103711共-13と同様に、土地建物等以外の資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算上、概算取得費による取得費を認める旨定めていますが、措置法通達における準用についての上記検討によれば、上記所得税基本通達の定めが源泉徴収選択口座に係る特定口座内保管上場株式等の譲渡による譲渡所得について申告をする場合において適用されると解することはできないというべきです。

 

3 回答

上記2の(1)ないし(4)によれば、甲が譲渡した上場株式等について、令和X年分の上場株式等の譲渡所得の金額の計算上、概算取得費を取得費とすることはできないものと考えられます。

 

 

作成日:令和7年9月24