04-01_特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

  

【質疑内容】

甲は、令和X年2月1日に死亡した乙の相続財産について、民法第958条の2《特別縁故者に対する相続財産の分与》第1項の規定に基づき、令和X+2年5月1日に、相続財産の分与により土地及び預貯金などを取得しましたが、この場合の相続税の課税関係について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 民法関係

民法第958条の2第1項は、同法第958条《権利を主張する者がない場合》の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる旨規定しています。

(2) 相続税法関係

イ 相続税法第4条《遺贈により取得したものとみなす場合》第1項は、民法第958条の2第1項の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第3章《財産の評価》に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす旨規定しています。

ロ 相続税法第29条《相続財産法人に係る財産を与えられた者等に係る相続税の申告書》第1項は、同法第4条第1項に規定する事由が生じたため新たに同法第27条《相続税の申告書》第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、同項の規定にかかわらず、当該事由が生じたことを知った日の翌日から10月以内(その者が国税通則法第117条《納税管理人》第2項の規定による納税管理人の届出をしないで当該期間内にこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨規定しています。

(3) 相続税法基本通達関係

イ 相続税法基本通達4-3《相続財産法人から与えられた分与額等》は、民法第958条の2の規定により相続財産の分与を受けた者が、当該相続財産に係る被相続人の葬式費用又は当該被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合において、これらの金額を相続財産から別に受けていないときには、分与を受けた金額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該分与された価額として取り扱う旨定めています。

ロ 相続税法基本通達4-4《分与財産等に加算する贈与財産》は、民法第958条の2の規定により相続財産の分与を受けた者が、同通達19-2《法第19条第1項の規定の適用を受ける贈与》に定める加算対象期間内に被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、相続税法第19条《相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額》第1項の規定の適用があることに留意する旨定めています。

 

2 回答

(1) 特別縁故者に対する相続財産の分与と相続税

相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、相続財産法人となり(民法第951条《相続財産法人の成立》)、①家庭裁判所による相続財産の清算人の選任並びに当該選任をした旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨の公告(民法第952条《相続財産の清算人の選任》)、②清算人による相続債権者及び受遺者に対し一定の期間内にその請求の申出をすべき旨の公告(民法第957条《相続債権者及び受遺者に対する弁済》)の後、相続人としての権利を主張する者がないときは、家庭裁判所から、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を分与されることがあります。

そして、家庭裁判所から相続財産の分与を受けた特別縁故者については、民法に規定する本来の遺贈ではないものの、相続税法第4条第1項の規定により、被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されることとなります。

(2) 相続税の課税時期及び評価時点

相続税法第4条第1項は、民法第958条の2第1項の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす旨規定しているところ、被相続人からの遺贈とみなしていることから、課税時期は、相続開始日となりますが、評価時点(課税財産の価額)は、財産の分与を受けた時の価額となります。すなわち、適用される法令は、相続開始日の法令となりますが、評価時点は、分与時(具体的には審判確定日)の価額となります。

(3) 相続税の申告書の提出期限

相続税法第29条第1項の規定により、相続財産の分与を受けた特別縁故者は、分与を受けたことを知った日(具体的には審判確定日)の翌日から10月以内(特別縁故者が納税管理人の届出をしないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときは、当該住所及び居所を有しないこととなる日まで)に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。すなわち、相続税の申告書の提出期限は、納税管理人の届出をしないでこの法律の施行地に住所及び居所を有しないこととなるときを除き、分与を受けたことを知った日(具体的には審判確定日)の翌日から10月以内となります。

(4) その他の留意事項等

イ 債務控除

相続税法第13条第1項は、「相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限ります。以下この条において同じ。)により・・・その者の負担に属する部分の金額を控除した金額による」と規定していることから、相続財産の分与を受けた特別縁故者が、その財産に係る被相続人の葬式費用や被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払ったとしても、相続税の課税価格の計算上、債務控除をすることはできません。

しかしながら、相続税法基本通達4-3の定めにより、相続財産の分与を受けた特別縁故者が負担した被相続人の葬式費用又は被相続人の療養看護のための入院費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合には、これらの金額を相続財産から別に受けていないときには、分与を受けた金額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該分与された価額として取り扱われることとなります。

なお、特別縁故者が、相続財産の分与に係る弁護士費用や訴訟費用等を負担していたとしても、当該費用等は、被相続人の債務ではなく、被相続人に係る葬式費用でもないことから、当該費用等を分与財産の価額から控除することはできません。

ロ 遺産に係る基礎控除額

相続人としての権利を主張する者がないときに、特別縁故者に対する相続財産の分与がされることから、(第1順位から最終順位までの相続人全員が放棄した場合を除き、)一般的には、相続税法第15条《遺産に係る基礎控除》第1項に規定する遺産に係る基礎控除額は、3,000万円となります。

ハ 相続税額の加算(相続税額の2割加算)

相続税法第18条《相続税額の加算》第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、・・・」と規定しているところ、特別縁故者は、被相続人の一親等及び配偶者以外の者であることから、特別縁故者に係る相続税額は、相続税法第17条《各相続人等の相続税額》の規定により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額となります。

ニ 暦年贈与加算及び贈与税額控除

特別縁故者が相続の開始前7年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、相続税法基本通達4-4の定めにより、相続税法第19条《相続開始前7年以内に贈与があった場合の相続税額》の規定が適用されることから、相続税の課税価格の計算上、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算することとなり、また、贈与税額控除を適用することができます。

ホ 未成年者控除及び障害者控除

相続税法第19条の3《未成年者控除》第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者(第1条の3第1項第3号又は第4号の規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の民法第5編第2章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)に該当し、・・・」と規定しており、また、同法第19条の4《障害者控除》第1項は、「相続又は遺贈により財産を取得した者(第1条の3第1項第2号から第4号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第1項に規定する相続人に該当し、・・・」と規定しているところ、特別縁故者は、相続人ではないことから、未成年者控除及び障害者控除のいずれも適用することはできません。

ヘ 相次相続控除

相続税法第20条《相次相続控除》は、「相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した場合において、・・・」と規定しているところ、特別縁故者は、相続人ではないことから、相次相続控除を適用することはできません。

ト 外国税額控除

相続税法第20条の2《在外財産に対する相続税額の控除》は、「相続又は遺贈(第21条の2第4項に規定する贈与を含む。以下この条において同じ。)によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、・・・」と規定しており、また、相続税法上、特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合には、当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなされることから、外国税額控除を適用することができます。

チ 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例

租税措置法第69条の2《在外財産等についての相続税の課税価格の計算の特例》第1項は、「相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下第70条の8の2までにおいて同じ。)」と規定していることから、同法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》第1項の適用対象となる宅地等は、相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)に限られているところ、相続税法第4条第1項の規定により、特別縁故者に対する相続財産の分与は遺贈とみなされてはいるものの、措置法第69条の4第1項の規定において、相続税法において遺贈とみなされるものを含むなどと規定されていない以上、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を適用することはできません。

  

作成日:令和8年4月22日