【質疑内容】
1 事実関係
(1) 甲は、令和X年2月1日に死亡した乙の相続財産について、民法第958条の2《特別縁故者に対する相続財産の分与》第1項の規定に基づき、相続財産の分与により土地(以下「本件土地」という。)などを取得しました。
(2) 甲は、令和X+1年12月1日に、本件土地を譲渡しました。
2 質疑事項
甲は、令和X+1年分の所得税及び復興特別所得税の申告に当たり、譲渡所得の金額の計算上、本件土地の取得時期及び取得費について、乙からの遺贈により取得したものとして、所得税法第60条《贈与等により取得した資産の取得費等》第1項の規定により、甲が引き続き本件土地を所有していたものとみなされるか否か。
また、本件土地の譲渡について、租税特別措置法(以下「措置法」という。)第39条《相続財産に係る譲渡所得の課税の特例》第1項の規定を適用することができるか否か。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 民法関係
民法第958条の2第1項は、同法第958条《権利を主張する者がない場合》の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる旨規定しています。
(2) 相続税法関係
相続税法第4条《遺贈により取得したものとみなす場合》第1項は、民法第958条の2第1項の規定により同項に規定する相続財産の全部又は一部を与えられた場合においては、その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第3章《財産の評価》に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす旨規定しています。
(3) 所得税法関係
イ 所得税法第33条《譲渡所得》第1項は、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう旨規定し、同条第3項は、譲渡所得の金額は、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする旨規定しています。
ロ 所得税法第38条《譲渡所得の金額の計算上控除する取得費》第1項は、譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする旨規定しています。
ハ 所得税法第60条第1項柱書及び同項第1号は、居住者が贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)により取得した同法第59条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》第1項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす旨規定しています。
【参考】
所得税法第9条《非課税所得》第1項柱書及び同項第17号は、相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)に係るについては、所得税を課さない旨規定しています。
(4) 措置法関係
措置法第39条第1項は、相続又は遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。以下この条において同じ。)による財産の取得(相続税法又は措置法第70条の5《農地等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例》、第70条の6の9《個人の事業用資産の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例》、第70条の7の3《非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例》若しくは第70条の7の7《非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の課税の特例》の規定により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。)をした個人で当該相続又は遺贈につき相続税法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があった日の翌日から当該相続に係る同法第27条《相続税の申告書》第1項又は第29条《相続財産法人に係る財産を与えられた者等に係る相続税の申告書》第1項の規定による申告書(これらの申告書の提出後において同法第4条第1項に規定する事由が生じたことにより取得した資産については、当該取得に係る同法第31条《修正申告の特則》第2項の規定による申告書)の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格の計算の基礎に算入された資産の譲渡をした場合における譲渡所得に係る所得税法第33条第3項の規定の適用については、同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする旨規定しています。
2 回答
(1) 特別縁故者が相続財産の分与により取得した資産の取得費等について
所得税法第60条第1項第1号に規定する贈与、相続又は遺贈に、相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされるものが含まれるか否かですが、この点について、同法第60条第1項第1号には、同法第9条第1項第17号と異なり、相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされるものを含む旨の規定はないことから、同法第60条第1項第1号に規定する贈与、相続又は遺贈には、相続税法の規定により相続、遺贈又は贈与により取得したものとみなされるものは含まれないものと解されます。
すなわち、所得税法上、特別縁故者が相続財産の分与として取得した財産については、遺贈により取得したものとみなす旨の規定がないことから、遺贈により取得したものとみることはできません。
したがって、特別縁故者である甲が相続財産の分与として取得した本件土地について、所得税法第60条第1項の規定により、甲が引き続き本件土地を所有していたものとみなされず、その分与を受けた時に、その時の価額(時価)により取得したこととなります。
(2) 措置法第39条第1項の規定の適用について
措置法第39条第1項は、相続又は遺贈による財産の取得について、その括弧書において「相続税法・・・の規定により相続又は遺贈による財産の取得とみなされるものを含む。」と規定しています。
したがって、甲は、本件土地の譲渡について、ほかの要件を充足する限り、措置法第39条第1項の規定を適用することができます。
作成日:令和8年4月22日
