【質疑内容】
家族名義預金等の帰属の判断基準について説明してください。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 相続税法第2条《相続税の課税財産の範囲》第1項は、同法第1条の3《相続税の納税義務者》第1項第1号又は第2号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する旨規定し、同法第2条第2項は、同法第1条の3第1項第3号又は第4号の規定に該当する者については、その者が相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものに対し、相続税を課する旨規定しています。
(2) 相続税法第11条の2《相続税の課税価格》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者が同法第1条の3第1項第1号又は第2号の規定に該当する者である場合においては、その者については、当該相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額をもって、相続税の課税価格とする旨規定し、同法第11条の2第2項は、相続又は遺贈により財産を取得した者が同法第1条の3第1項第3号又は第4号の規定に該当する者である場合においては、その者については、当該相続又は遺贈により取得した財産でこの法律の施行地にあるものの価額の合計額をもって、相続税の課税価格とする旨規定しています。
2 回答(裁判例を参考とした家族名義預金等の帰属の判断基準)
(1) 東京地方裁判所平成20年10月17日判決
東京地方裁判所平成20年10月17日判決は、要旨、次のとおり判断しており、家族名義預金の帰属の重要な判断基準の一つとなっています。
イ ある財産が被相続人以外の者の名義となっていたとしても、当該財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったと認められるものであれば、当該財産は相続税の課税の対象となる相続財産となる。そして、被相続人以外の者の名義である財産が相続開始時において被相続人に帰属するものであったか否かは、当該財産又はその購入原資の出捐者、当該財産の管理及び運用の状況、当該財産から生ずる利益の帰属者、被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運用をする者との関係、当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯等を総合考慮して判断するのが相当である。
ロ 財産の帰属の判定において、一般的には、当該財産の名義がだれであるかは重要な一要素となり得るものではある。しかしながら、我が国においては、夫が自己の財産を、自己の扶養する妻名義の預金等の形態で保有するのも珍しいことではないというのが公知の事実であるから、本件丁名義預金等の帰属の判定において、それが丁名義であることの一事をもって丁の所有であると断ずることはできず、諸般の事情を総合的に考慮してこれを決する必要があるというべきである。
ハ 一般に、財産の帰属の判定において、財産の管理及び運用をだれがしていたかということは重要な一要素となり得るものではあるけれども、夫婦間においては、妻が夫の財産について管理及び運用をすることがさほど不自然であるということはできないから、これを殊更重視することはできず、丁が丙名義で丙に帰属する有価証券及び預金の管理及び運用もしていたことを併せ考慮すると、丁が本件丁名義預金等の管理及び運用をしていたということが、本件丁名義預金等が丙ではなく丁に帰属するものであったことを示す決定的な要素であるということはできない。
(2) 家族名義預金等の帰属の判断基準
上記(1)のとおり、東京地方裁判所平成20年10月17日判決では、家族名義預金等の帰属の判断基準について、
① 当該財産又はその購入原資の出捐者
② 当該財産の管理及び運用の状況
③ 当該財産から生ずる利益の帰属者
④ 被相続人と当該財産の名義人並びに当該財産の管理及び運営をする者との関係
⑤ 当該財産の名義人がその名義を有することになった経緯
等を総合考慮して判断するのが相当である旨判示しています。
作成日:令和7年9月24日
