89-02_増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価

 

【質疑内容】

増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 地方税法関係

イ 地方税法第349条《土地又は家屋に対して課する固定資産税の課税標準》第1項は、基準年度に係る賦課期日に所在する土地又は家屋(以下「基準年度の土地又は家屋」といいます。)に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋の基準年度に係る賦課期日における価格(以下「基準年度の価格」といいます。)で土地課税台帳若しくは土地補充課税台帳(以下「土地課税台帳等」といいます。)又は家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳(以下「家屋課税台帳等」といいます。)に登録されたものとする旨規定しています。

ロ 地方税法第349条第2項本文は、基準年度の土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定し、そのただし書は、基準年度の土地又は家屋について第二年度の固定資産税の賦課期日において次に掲げる事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定しています。

() 地目の変換、家屋の改築又は損壊その他これらに類する特別の事情(第1号)

() 市町村の廃置分合又は境界変更(第2号)

ハ 地方税法第349条第3項本文は、基準年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格(第二年度において同条第2項項ただし書に掲げる事情があったため、同項ただし書の規定によって当該土地又は家屋に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準とされた価格がある場合においては、当該価格とすします。以下本項において同じ。)で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨指定し、そのただし書は、基準年度の土地又は家屋について第三年度の固定資産税の賦課期日において同条第2項各号に掲げる事情があるため、基準年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定しています。

ニ 地方税法第349条第4項は、第二年度において新たに固定資産税を課することとなる土地又は家屋(以下「第二年度の土地又は家屋」といいます。)に対して課する第二年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定しています。

ホ 地方税法第349条第5項本文は、第二年度の土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に係る第二年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定し、そのただし書は、第二年度の土地又は家屋について、第三年度の固定資産税の賦課期日において同条第2項各号に掲げる事情があるため、第二年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合においては、当該土地又は家屋に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定しています。

ヘ 地方税法第349条第6項は、第三年度において新たに固定資産税を課することとなる土地又は家屋(以下「第三年度の土地又は家屋」といいます。)に対して課する第三年度の固定資産税の課税標準は、当該土地又は家屋に類似する土地又は家屋の基準年度の価格に比準する価格で土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとする旨規定しています。

(2) 固定資産評価基準(令和6年度のもの)

イ 固定資産評価基準第2章《家屋》第4節《経過措置》の四の本文は、固定資産税に係る令和6年度における在来分の家屋の評価に限り、次に掲げるいずれかの低い価額によってその価額を求めるものとする旨定め、そのただし書は、令和6年1月1日において地方税法第349条第2項第1号に掲げる事情(損壊その他これに類する特別の事情を除きます。)がある家屋で、当該事情が令和5年1月2日以降に生じたものについては次の()によってその価額を求めるものとする旨定めています。

() 第1節《通則》から本節三までによって求めた家屋の価額

() 当該家屋の令和5年度の価額(令和5年度の家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に価格として登録されたものをいいます。)

ロ 固定資産評価基準第2章第4節の五は、固定資産税に係る令和7年度又は令和8年度における在来分の家屋のうち、令和7年1月1日又は令和8年1月1日において地方税法第349条第2項各号に掲げる事情(改築その他これに類する特別の事情を除きます。)があるもので、当該事情がそれぞれ令和6年1月2日又は令和7年1月2日以降に生じたものの評価については、次に掲げるいずれかの低い価額によってその価額を求めるものとし、令和7年1月1日又は令和8年1月1日において同項第1号に掲げる事情のうち改築その他これに類する特別の事情があるもので、当該事情がそれぞれ令和6年1月2日又は令和7年1月2日以降に生じたものの評価については、次の()によってその価額を求めるものとする旨定めています。

() 第1節から本節三までによって求めた家屋の価額

() 当該家屋の令和6年度の価額(令和6年度の家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に価格として登録されたものをいいます。ただし、令和7年度に本節によって求めた価額がある家屋について令和8年度において同節によって価額を求める場合にあっては、令和7年度において同節によって求めた価額をいいます。)

ハ 固定資産評価基準第2章第4節の六は、市町村長は、固定資産税に係る令和6年度における在来分の家屋のうち、令和6年1月1日において地方税法第349条第2項各号に掲げる事情のあるもので、令和6年度の価額を本節四によって求めることが、当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認める場合又は令和6年度における在来分の家屋のうち、これらの事情のあるもの以外のもので、令和6年度の価額を本節四によって求めることが、固定資産税の課税上極めて不適当と認める場合においては、第1節から本節三までによって求めた家屋の価額に基づき、各個の家屋相互間の価額との均衡を考慮してその価額を求めることができるものとする旨定めています。

ニ 固定資産評価基準第2章第4節の七は、市町村長は、固定資産税に係る令和7年度又は令和8年度における在来分の家屋のうち、令和7年1月1日又は令和8年1月1日において地方税法第349条第2項各号に掲げる事情のあるもので、その令和7年度又は令和8年度の価額を本節五によって求めることが、当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認める場合においては、第1節から本節三までによって求めた家屋の価額に基づき、各個の家屋相互間の価額との均衡を考慮してその価額を求めることができるものとする旨定めています。

(3) 相続税法関係

相続税法第22条《評価の原則》は、同法第三章《財産の評価》で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨規定しています。

(4) 財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)関係

イ 評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》は、評価通達に評価方法の定めのない財産の価額は、この通達に定める評価方法に準じて評価する旨定めています。

ロ 評価通達89《家屋の評価》及び評価通達別表1は、家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいいます。以下同じ。)に1.0の倍率を乗じて計算した金額によって評価する旨定めています。

(5) 国税庁ホームページの質疑応答事例「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」(以下「本件取扱い」といいます。)

国税庁は、そのホームページの質疑応答事例に本件取扱いを掲載しているところ、その内容は次のとおりです。(https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/19/01.htm

増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の家屋の価額は、増改築等に係る部分以外の部分に対応する固定資産税評価額に、当該増改築等に係る部分の価額として、当該増改築等に係る家屋と状況の類似した付近の家屋の固定資産税評価額を基として、その付近の家屋との構造、経過年数、用途等の差を考慮して評定した価額(ただし、状況の類似した付近の家屋がない場合には、その増改築等に係る部分の再建築価額から課税時期までの間における償却費相当額を控除した価額の100分の70に相当する金額)を加算した価額(課税時期から申告期限までの間に、その家屋の課税時期の状況に応じた固定資産税評価額が付された場合には、その固定資産税評価額)に基づき評価基本89又は評価通達93《貸家の評価》の定めにより評価します。

なお、償却費相当額は、評価通達89-2《文化財建造物である家屋の評価》の(2)に定める評価方法に準じて、再建築価額から当該価額に0.1を乗じて計算した金額を控除した価額に、その家屋の耐用年数(減価償却資産の耐用年数等に関する省令に規定する耐用年数)のうちに占める経過年数(増改築等の時から課税時期までの期間に相当する年数(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は、1年とします。))の割合を乗じて計算します。

 

2 裁判例等

国税不服審判所平成281117日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。

請求人らは、相続財産である家屋(本件家屋)に相続開始前に施された工事(本件工事)は、主として本件家屋のバリアフリー化を企図した生活に通常必要な修繕であり、本件家屋の価値を高めるための改築とはいえないから、財産評価基本通達(評価通達)89《家屋の評価》(本件通達)を適用する基礎となる本件家屋の固定資産税評価額(本件家屋評価額)は、相続開始時の状況に応じて付されたものである旨主張する。

しかしながら、本件工事は、本件家屋の既存の基礎、柱、梁及び屋根を残し、それ以外の部分については解体・撤去した上で、新たに外壁、床、建具、天井、室内壁等を構築し、内装の仕上げをし、設備を設置するなど、家屋全般にわたり改築を施されたものであり、その工事請負代金に照らしても、その価値を相当に増加させるものであったと認められる。しかるに、本件家屋評価額は、本件工事が施された後も現在に至るまで変更がなく、本件工事による価値の増加が本件家屋評価額に反映されていないことからすれば、本件家屋は、本件相続開始日において、増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋であったと認めるのが相当である。このような場合、本件通達の定めにより評価しても、適正な時価を算定することはできないから、本件家屋は、評価通達5《評価方法の定めのない財産の評価》の定めに基づき、家屋に固定資産税評価額が付されていない場合等の評価方法を定めた評価通達89-2《文化財建造物である家屋の評価》の定めを参考に評価することが合理的である。

 

3 回答

(1) 増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合の当該家屋の評価方法については、評価通達に定められていないため、評価通達5を適用することとなるところ、国税庁においては、当該家屋の評価方法について、従来から本件取扱いを示しています。

そして、本件取扱いを適用して評価する場合とは、増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合です。

本件取扱いを適用して評価すべきか否かについて、増築とは基本的には家屋の床面積が増加することをいうことから、問題となることは比較的少ないのですが、問題となるのは改築等の場合です。

(2) 地方税法第349条の規定及び固定資産評価基準第2章第4節の定めによれば、在来分の家屋の改築が、固定資産税の課税標準の基礎となった価格によることが不適当であるか又は当該市町村を通じて固定資産税の課税上著しく均衡を失すると市町村長が認める場合には、改築後の家屋に類似する家屋に比準する価格で評価することとされているところ、家屋の改築については、固定資産税逐条解説に、「改築とは、家屋の主要構造部である壁、柱、床、梁、屋根、天井、基礎又は建築設備等について行われた更新で、その更新のための支出が簡単な修理、修繕等のために支出される程度のものではなく、資本的支出と認められるものをいう。」とされていますが、地方税や固定資産評価基準では、改築の定義はなく、また、具体的は判断基準は示されていません(したがって、改築による固定資産税評価の改定は、各市町村によって区々となっているように思われます。)。

また、固定資産税評価における改築は、建築基準法に規定する建築確認が必要な建築行為等と一致するものではありません。

(3) 固定資産税は、シャウプ勧告を契機として行われた昭和25年の地方税制度の根本的改革に伴い創設されたもので、固定資産(土地、家屋及び償却資産)の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づき、資産価値に応じて、所有者に対し課税する財産税です。

また、建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とするものです。

そして、相続税は、被相続人の財産を相続又は遺贈により取得した相続人等に対して、その取得した財産の価額を基に課される租税で、相続税の持つ機能として、①所得税の補完機能や②富の集中抑制機能があるといわれており、相続税法においては、金銭に見積もることができる経済的価値のある全ての財産が相続税の対象となる財産となります。

このように、①固定資産税、建築基準法及び相続税では、その趣旨や目的等が異なること及び②相続税法においては、金銭に見積もることができる経済的価値のある全ての財産が相続税の対象となる財産となることからすれば、固定資産税評価における改築に該当するか否か、固定資産税評価が改訂されたか否か、あるいは建築基準法に規定する建築確認申請を要するか否か等に関わりなく、増改築等により客観的な経済的価値が増加し、当該増加分による価額が固定資産税評価額に反映されていない場合には、本件取扱いが適用されるものと考えられます(もっとも、単に雨漏りの修繕をしたとか、壁のひび割れを補修したにすぎないような場合、すなわち、原状回復のために支払った費用があったとしても、当該費用の支出をもって、客観的な経済的価値の増加があったとはいえないものと考えられます。)。

 

 

作成日:令和7年9月24