(通)66-01_国税通則法第66条ただし書に規定する「正当な理由」(相続財産の全容が判明しなかった場合)

 

【質疑内容】

1 事実関係

(1) 令和X年4月1日に死亡した甲(以下、甲の死亡により開始した相続を「本件相続」といいます。)の共同相続人は、いずれも甲の子である乙、丙及び丁の3名であるところ、乙、丙及び丁は、いずれも本件相続の開始日に甲が死亡した事実を知りました。

(2) 乙、丙及び丁は、国税庁のホームページを調べるなどした結果、甲の相続財産のうち、土地の価額のみで本件相続に係る基礎控除額を超えることを知りましたが、甲の相続財産の全容が判明しなかったため、法定申告期限までに、遺産分割協議をせず、また、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」といいます。)の申告書も提出しませんでした。

(3) その後、相続財産の全容が判明したことから、乙、丙及び丁の間において、全ての相続財産を乙が相続することを主な内容とする遺産分割協議が成立し、乙は、自主的に本件相続税の期限後申告書を提出しました。

2 質疑事項

甲の相続財産の全容が判明しなかったことが国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しますか。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 国税通則法(以下「通則法」といいます。)関係

イ 通則法第66条《無申告加算税》第1項は、次の()又は()のいずれかに該当する場合には、当該納税者に対し、次の()又は()に規定する申告、更正又は決定に基づき通則法第35条《申告納税方式による国税等の納付》第2項の規定により納付すべき税額に100分の15の割合(期限後申告書又は次の()の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、100分の10の割合)を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定し、そのただし書は、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない旨規定しています。

() 期限後申告書の提出又は通則法第25条《決定》の規定による決定があった場合(第1号)

() 期限後申告書の提出又は通則法第25条の規定による決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合(第2号)

ロ 通則法第66条第7項は、通則法第65条《過少申告加算税》第5項の規定は、通則法第66条第1項第2号の場合について準用する旨規定しています。

ハ 通則法第66条第8項は、期限後申告書又は同条第1項第2号の修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正又は決定があるべきことを予知してされたものでない場合において、その申告に係る国税についての調査通知がある前に行われたものであるときは、その申告に基づき通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額に係る通則法第66条第1項の無申告加算税の額は、同項から同条第3項までの規定にかかわらず、当該納付すべき税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする旨規定しています。

(2) 相続税法関係

イ 相続税法第27条《相続税の申告書》第1項は、相続又は遺贈により財産を取得した者は当該被相続人からこれらの事由により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額がその遺産に係る基礎控除額を超える場合において、その者に係る相続税の課税価格に係る相続税額があるときは、その相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内に課税価格、相続税額その他財務省令で定める事項を記載した申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨規定しています。

ロ 相続税法第30条《期限後申告の特則》第1項は、同法第27条第1項の規定による申告書の提出期限後において同法第32条《更正の請求の特則》第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたため新たに同法第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、期限後申告書を提出することができる旨規定しています。

ハ 相続税法第32条第1項柱書及び同項第1号は、相続税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、同法第55条《未分割遺産に対する課税》の規定により分割されていない財産について民法(904条の2《寄与分》を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったことにより当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額が過大となったときは、その事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額につき更正の請求をすることができる旨規定しています。

ニ 相続税法第51条《延滞税の特則》第2項第1号ハは、相続又は遺贈により財産を取得した者が、同法第32条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたことによる期限後申告書又は修正申告書を提出したことにより納付すべき相続税額については、同法33条《納付》の規定による納期限の翌日からこれらの申告書の提出があった日までの期間は、国税通則法第60条《延滞税》第2項の規定による延滞税の計算の基礎となる期間に算入しない旨規定しています。

ホ 相続税法第55条本文は、相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(904条の2を除きます。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする旨規定しています。

ヘ 相続税法基本通達51-5《延滞税の計算の基礎となる期間に算入しない部分の相続税額又は贈与税額》は、期限後申告書若しくは修正申告書の提出又は更正若しくは決定により納付すべき相続税額のうちに、相続税法第51条第2項又は第3項に掲げる事由以外の事由に基づくものが含まれている場合には、当該納付すべき相続税額から同条第2項又は第3項の事由がないものとして計算される納付すべき相続税額を控除した相続税額について、同条第2項又は第3項の規定を適用する旨定めています。

 

2 裁判例等

(1) 大阪高等裁判所平成5年1119日判決

大阪高等裁判所平成5年1119日判決は、要旨、次のとおり判断しています。

イ 納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、相続財産の一部のみが判明し、その部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、判明した相続財産につき、とりあえず自主的に申告しなければならず、これにより相続税の納税義務を確定させるべきであり、残余の相続財産が後日判明したときは修正申告によることとし、したがって、平均的な通常の納税者を基準としても、相続財産の全容が把握できないからといって、それを理由に、法定申告期限までに相続税の申告をしないことは許されないというのが税確保の観点からみて、立法の趣旨であるといわなければならない。

ロ 国税通則法は、納税者の行なうべき申告義務に違反した者に対し、行政上の制裁として、各種の加算税を課し、これにより誠実な納税申告書の早期提出を促し、間接的にせよ不正な申告事態を防止するとともに、国民の納税義務の適正かっ円滑な履行を確保し、健全な申告秩序の形成を図ろうとしているものと解される。

ところで、申告が遅延するについては種々の理由があることであるから、無申告加算税賦課の制裁を課するのが納税者に酷であるという特段の事情のある例外的な場合が予想されるので、国税通則法は、第66条第1項ただし書において、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合には、無申告加算税を課さないこととしている。

したがって、これを相続税法に則していうと、期限内申告書を提出しなかったことにつき、無申告としての行政制裁を課されないのは、平均的な通常の納税者を基準として、当該状況下において、納税者が相続税を申告することが期待できず、法定申告期限内に申告をしなかったことが真にやむを得ない事情のある場合に限られるものと解するのが相当であり、相続財産の一部とはいえ、これを把握し、納税者として相続税の申告をしなければならないと認識すべきであった場合には、そもそも、国税通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由があると認められる場合」に当たらないのである。

ハ 無申告加算税の課税要件が備わった場合(納税者が納税申告すべき場合であるにも拘らず全く申告しなかった場合)、国税通則法第66条第1項本文は、当該納税者に対し「納付すべき税額」に一律10%(現行法では15%)を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課することを規定しており(したがって、これによらない課税は違法となる)、期限内申告書の提出がなかったことについての「正当な理由」があると認められない以上は、納税者が認識できなかった相続財産に係る相続税額を無申告加算税額算出の基準額から除外するとの規定はないのであって、税務署長には、この点に関する裁量はないというべきである。

すなわち、法は、無申告につき正当な理由がある場合には制裁を課さないが、納税者に相続財産の一部が判明し、それが基礎控除額を超えて申告すべき場合には、判明した分についてとりあえず申告をしたならば、その者に対し、全相続財産についての無申告加算税を課さないこととする一方、判明した分さえ申告しない者に対しては、残余の相続財産についての事情の如何を問わず、全相続財産を基にした「納付すべき税額」に所定の率を乗じた金額の制裁を課することとしているのであって、これにより、無申告という事態を防止するための実効性をあげ、一部分だけでも期限内に誠実な納税申告書を提出するよう国民に促すとともに、その納税義務の適正かつ円滑な履行を確保し、健全な申告秩序の形成を図ろうとしているものである。

(2) 国税不服審判所平成元年6月8日裁決

国税不服審判所平成元年6月8日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。

イ 被相続人の遺産総額は遺産に係る基礎控除額を超えており、かつ、請求人は相続の開始時に・・・掲げた財産を法定相続分に応じて承継したのであるから、本件調停成立前においても、この財産について請求人には、・・・納付すべき相続税額・・・が算出される。・・・本来的相続分(法定相続分として取得できる部分)について、その相続の開始があったことを知った日から6月以内(現行法では10月)・・・に期限内申告書を提出しなければならない者に該当するというべきである。

ロ 相続税法第30条の規定によれば、同法第27条第1項の規定による申告書の提出期限後において同法第32条第1号から第4号(現行法では第1号から第6号)までに規定する事由が生じたため新たに同法第27条第1項に規定する申告書を提出すべき要件に該当することとなった者は、期限後申告書を提出することができることとされている。

・・・のうち法定相続分である4分の1に相当する額・・・については、被相続人の死亡と同時にこれを承継したものと認められることから本件申告書は相続税法第30条に規定する期限後申告書とは認められないが、・・・後発的相続分(本件調停成立により取得した部分)・・・については、本件調停成立により、・・・初めて取得したものであると認めるのが相当である。

そうすると、本件申告書は、本来的相続分と後発的相続分とが同一書面に記載されていると認められ、後発的相続分については、相続税法第51条第2項第1号の規定の趣旨に照らし、同法第30条に規定する期限後申告書の性格を有していると認めるのが相当である。

ハ 無申告加算税は、納税者自らその責任と計算において、課税標準及び納付すべき税額を算出し、これを申告して第一次的に納付すべき税額を確定させるという申告納税制度の下で、適正な申告をその法定申告期限内に行わない者に対し、無申告加算税の賦課という制裁を加えて、申告秩序の維持向上を図るべく措置されているものと解される。

また、相続税法第30条に規定する期限後申告書を提出できる場合などのように、申告期限後に生じた納税者の責めに帰さない事由により納付すべきこととなった相続税額については、上記行政上の制裁に値しないものとして、無申告加算税を課すべきでないと解するのが相当である。

本件申告書は、・・・後発的相続分については、 相続税法第30条に規定する期限後申告書の性格を有しているものと認められ、請求人には、当該後発的相続分を申告期限内に申告すべき義務はなかったというべきであるから、・・・無申告加算税の趣旨に照らせば、当該後発的相続については、無申告加算税を賦課するという行政上の制裁の必要性はないと解され、このことから期限内申告書の提出がなかったことについて国税通則法第66条第1項ただし書に規定する正当な理由があると認められる場合に該当するというべきである。

(3) 国税不服審判所平成26年4月17日裁決

国税不服審判所平成26417日裁決は、要旨、次のとおり判断しています。

イ 相続税法第30条第1項の規定によれば、法定申告期限内においては、納付すべき相続税額がなく、その後同法第32条第1項第1号から第6号までに規定する事由が生じたために新たに納付すべき相続税額があることとなった者については、期限後申告書を提出することができる旨定めている。

このような場合については、期限内に申告書が提出されなかったことについて行政上の制裁を課す必要がなく、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する。

ロ 相続税法第30条第1項の規定は、同法第27条第1項の規定による申告書提出期限内において納付すべき相続税額がない場合について規定したものである。しかし、法定申告期限において遺産が未分割であったが、法定相続分に従って課税価格を計算すれば納付すべき税額があったにもかかわらず、期限内申告書を提出しなかった納税者についても、遺産分割によって増えた相続分に係る税額については、法定申告期限後に生じた納税者の責めに帰することのできない事由により納付すべきこととなったものといえるから、上記行政上の制裁を加える必要がないことからすれば、同税額に相当する部分については、国税通則法第66条第1項に規定する「正当な理由があると認められる場合」該当するものとして、無申告加算税を課すべきでない。

 

3 回答

本質疑において検討すべきは、①相続財産の全容が判明しなかったことが国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否かですが、上記2の(1)ないし(3)のとおり、大阪高等裁判所平成5年1119日判決と、国税不服審判所平成元年6月8日裁決及び同平成26年4月17日裁決(以下、当該各裁決を併せて「各先行裁決」といいます。)とが異なる判断をしていることから、②無申告加算税の基礎となる税額の範囲(一部について「正当な理由」を認める余地があるか否か。)についても併せて検討することとします。

(1) 相続財産の全容が判明しなかったことが国税通則法第66条第1項ただし書に規定する 「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否かについて

イ 国税通則法第66条に規定する無申告加算税は、無申告による申告納税義務違反の事実があれば、原則としてその違反者に対し課されるものであり、これによって、当初から適正に申告した納税者とこれを怠った納税者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、無申告による申告納税義務違反の発生を防止し、適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置です。

この趣旨に照らせば、国税通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」とは、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合をいうものと解されます。

ロ 相続税法第27条第1項は、同項の規定に基づき法定申告期限までに適正な相続税の申告書を提出するため、納税者としては、相続財産の全容を正確に把握していることが必要であり、したがって当然に相続財産を調査し、その全容を把握するよう努力すべきことを法は求めているものと解されます。

しかしながら、必ずしも法定申告期限内に相続財産の全容を把握することができるとは限らないので、法は、申告後において、相続税額に不足を生じたり、あるいは過大となったときには、修正申告又は更正の請求をすることができるものとしています。

ハ 上記イ及びロの国税通則法第66条及び相続税法第27条第1項の解釈を踏まえると、納税者が相続財産の全容を把握するため、種々の調査をし、情報入手の努力をした結果、法定申告期限までに相続財産の一部しか判明しなかったとしても、その判明した部分だけで遺産に係る基礎控除額を超える場合には、納税者は、判明した相続財産につき期限内申告書を提出しなければならないと解するのが相当です。

したがって、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められないと解するのが相当です。

(2) 無申告加算税の基礎となる税額の範囲(一部について「正当な理由」を認める余地がるか否か。)について

イ 通則法第66条の文理解釈

通則法第66条第1項は、同項第1号の期限後申告書の提出(又は決定)があった場合又は第2号の期限後申告書の提出(又は決定)があった後に修正申告書の提出(又は更正)があった場合に、当該申告、決定又は更正に基づき通則法第35条第2項の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する旨規定し、通則法第66条第1項ただし書は、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、無申告加算税を課さない旨規定しています。

また、通則法第66条第7項は、期限後申告書の提出(又は決定)があった後に修正申告書の提出(又は更正)があった場合に、同法第65条第5項の規定を準用する旨規定していますが、期限後申告書の提出(又は決定)があった場合に同項の規定を準用する旨の規定はありません。すなわち、期限後申告書の提出(又は決定)があった場合には、文理解釈上、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由がない限り、納付すべき税額の全額に所定の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税が課されることとなります。

ロ 各先行裁決

() 大阪高等裁判所平成5年1119日判決は、①相続財産の一部とはいえ、これを把握し、納税者として相続税の申告をしなければならないと認識すべきであった場合には、通則法第66条第1項ただし書の「正当な理由があると認められる場合」に当たらないのであり、期限内申告書の提出がなかったことについての「正当な理由」があると認められない以上は、納税者が認識できなかった相続財産に係る相続税額を無申告加算税額算出の基準額から除外するとの規定はないのであって、税務署長には、この点に関する裁量はないというべきである旨、②納税者に相続財産の一部が判明し、それが基礎控除額を超えて申告すべき場合には、判明した分さえ申告しない者に対しては、残余の相続財産についての事情の如何を問わず、全相続財産を基にした「納付すべき税額」に所定の率を乗じた金額の制裁を課することとしている旨判断しているところ、これは上記イの文理解釈に即した判断といえます。

() 他方、国税不服審判所平成26年4月17日裁決は、相続税法第30条第1項の規定による期限後申告書の提出があった場合については、期限内に申告書が提出されなかったことについて行政上の制裁を課す必要がなく、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するとした上で、法定申告期限において遺産が未分割であったが、法定相続分に従って課税価格を計算すれば納付すべき税額があったにもかかわらず、期限内申告書を提出しなかった納税者についても、遺産分割によって増えた相続分に係る税額については、法定申告期限後に生じた納税者の責めに帰することのできない事由により納付すべきこととなったものといえるから、同税額に相当する部分については、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するものとして申告加算税を課すべきではない旨、大阪高等裁判所平成5年1119日判決と異なる判断をしています(国税不服審判所平成元年6月8日裁決も同旨です。)

() 各先行裁決は、相続税法第30条に規定する期限後申告書が提出された場合には、期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当することを前提として、納税者が提出した期限後申告書は、相続税法第30条に規定する期限後申告書には該当しないものの、遺産分割等によって増えた部分については、相続税法第51条第2項第1号の規定及び相続税法基本通達51-5の定めの趣旨に照らし、相続税法第30条に規定する期限後申告書の性格を有しているものと考えて判断したものと推察されます。このように、各先行裁決は、期限後申告書の提出により納付すべき税額の一部について通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する旨判断しています。

しかしながら、各先行裁決は、上記イの通則法第66条の文理解釈に即して判断したものとはいえないものと考えられます。また、通則法第66条第1項ただし書の規定の適用の有無は、期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があるか否かにより判断すべきであり、納税者が、法定申告期限までに把握した相続財産の価額が遺産に係る基礎控除額を超えることによって相続税の申告書の提出を要すると認識し、又は認識し得た場合において、その把握した相続財産に係る期限内申告書を提出しなかった場合には、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しないと解するのが相当と考えられます。

(3) 回答

乙は、本件相続税の法定申告期限前に、甲の相続財産のうち、土地の価額のみで基礎控除額を超えることを認識していたのであるから、本件相続税の申告が必要であることを認識していたものと認められます。

そうすると、本件相続の法定申告期限において、相続財産の全容が判明していなかったとしても、乙は、当該法定申告期限までには基控除額を超える甲の相続財産を把握し、本件相続税の申告書を提出しなければならないと認識していたにもかかわらず、その判明した相続財産に係る本件相続税の申告書を当該法定申告期限までに提出しなかったのであるから、乙が期限内申告書を提出しなかったことについて、通則法第66条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認めらないものと考えられます。 

 

 

作成日:令和7年9月24