【質疑内容】
甲は、内縁関係にある乙の日常生活に要する生活費を負担していますが、この場合、乙に贈与税が課税されますか。
【回答内容】
1 関係法令
(1) 民法関係
イ 民法第549条《贈与》は、贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる旨規定しています。
ロ 民法第760条《婚姻費用の分担》は、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する旨規定しています。
(2) 相続税法関係
イ 相続税法第1条の2《定義》柱書及び同条第1号は、この法律において、扶養義務者という用語の意義は、配偶者及び民法第877条《扶養義務者》に規定する親族をいう旨規定しています。
ロ 相続税法第21条《贈与税の課税》は、贈与税は、同法第2節《贈与税》及び第3節《相続時精算課税》に定めるところにより、贈与により財産を取得した者に係る贈与税額として計算した金額により、課する旨規定しています。
ハ 相続税法第21条の3《贈与税の非課税財産》第1項柱書及び同項第2号は、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものの価額は、贈与税の課税価格に算入しない旨規定しています。
2 回答
相続税法第21条に規定する贈与税の課税原因となる贈与とは、民法第549条以下に規定する贈与と同義に解すべきであり、贈与者がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、受贈者が受諾をすることによって成立する契約をいうと解されます。そして、贈与税が相続税の補完税として、贈与によって財産が移転する機会にその財産に対して課税する趣旨であることからすると、贈与に該当するか否かについては、その実質に着目して判断するのが相当です。
内縁関係は、夫婦ではないものの、準婚関係として法的に保護に値する場合があり、その場合には、民法第760条に規定する婚姻費用分担義務も類推適用されるべきであると考えられます。他方において、贈与は、片務性や無償性から、内縁関係を含む親密な関係の者の間で行われることが多く、租税回避の手段として用いられる危険性もあることからすると、納税者が財産の移転を内縁関係に基づく婚姻費用分担義務の履行であると認めるには、納税者は、当該財産移転当時、交付者と被交付者との間で内縁関係が成立していることに加え、当該財産移転当時、交付者が被交付者に対して内縁関係に基づく婚姻費用分担義務を負っており、かつ、移転財産額が、婚姻費用分担義務の範囲内であること及び交付者が実際に婚姻費用分担義務の履行として当該財産を移転したことを認めるに足りる特別の事情があることを要するものと考えられます。
(1) 婚姻費用分担義務の履行と認められる場合
婚姻費用分担義務の履行と認められる場合には、婚姻費用分担義務の履行を対価として財産が移転したものと考えられることから、無償取引ではなく、そもそも贈与には当たらないため、贈与税は課税されないものと考えられます。
(2) 婚姻費用分担義務の履行とは認められない場合
相続税法第1条の2柱書及び同条第1号は、この法律において、扶養義務者という用語の意義は、配偶者及び民法第877条に規定する親族をいう旨規定し、同法第21条の3第1項柱書及び同項第2号は、扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるものの価額は、贈与税の課税価格に算入しない旨規定しているところ、同法第1条の2第1号に規定する配偶者とは、法律上の婚姻関係にある者に限られ、内縁関係の配偶者は含まれないものと解されます。
そうすると、婚姻費用分担義務の履行と認められない場合には、相続税法第21条の3第1項第2号には当たらないため、贈与税が課税されるものと考えられます。
作成日:令和7年9月24日
