(所・贈)-22_信託に係る課税関係(特定委託者(みなし受益者)が存在する場合)

 

【質疑内容】

甲は、賃貸の用に供している土地(以下「本件土地」といいます。)を有していたところ、甲及び乙は、委託者を甲、受託者を乙、受益者を甲の孫となる者(現在は胎児である。)及び信託財産を本件土地として信託契約(以下「本件信託契約」といいます。)を締結しました。

なお、甲は、相続税法第9条の2第1項に規定する特定委託者及び所得税法第13条第2項に規定するいわゆるみなし受益者に該当します。

この場合の課税関係について説明してください。

 

【回答内容】

1 関係法令等

(1) 相続税法関係

イ 相続税法第9条の2《贈与又は遺贈により取得したものとみなす信託に関する権利》第1項は、信託(退職年金の支給を目的とする信託その他の信託で政令で定めるものを除きます。以下同じ。)の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等(受益者としての権利を現に有する者及び特定委託者をいいます。以下同じ。)となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与(当該委託者の死亡に基因して当該信託の効力が生じた場合には、遺贈)により取得したものとみなす旨規定しています。

ロ 相続税法第9条の2第2項は、受益者等の存する信託について、適正な対価を負担せずに新たに当該信託の受益者等が存するに至った場合(同条第4項の規定の適用がある場合を除きます。)には、当該受益者等が存するに至った時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の受益者等であった者から贈与(当該受益者等であった者の死亡に基因して受益者等が存するに至った場合には、遺贈)により取得したものとみなす旨規定しています。

ハ 相続税法第9条の2第4項は、受益者等の存する信託が終了した場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となる者があるときは、当該給付を受けるべき、又は帰属すべき者となった時において、当該信託の残余財産の給付を受けるべき、又は帰属すべき者となった者は、当該信託の残余財産(当該信託の終了の直前においてその者が当該信託の受益者等であった場合には、当該受益者等として有していた当該信託に関する権利に相当するものを除きます。)を当該信託の受益者等から贈与(当該受益者等の死亡に基因して当該信託が終了した場合には、遺贈)により取得したものとみなす旨規定しています。

ニ 相続税法第9条の2第5項は、同条第1項の「特定委託者」とは、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除きます。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除きます。)をいう旨規定しています。

ホ 相続税法施行令第1条の7《信託の変更をする権限》第1項は、相続税法第9条の2第5項に規定する政令で定めるものは、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り信託の変更をすることができる権限とする旨規定し、相続税法施行令第1条の7第2項は、相続税法第9条の2第5項に規定する信託の変更をする権限には、他の者との合意により信託の変更をすることができる権限を含むものとする旨規定しています。

(2) 所得税法関係

イ 所得税法第13条《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》第1項本文は、信託の受益者(受益者としての権利を現に有するものに限ります。)は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなし、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなして、この法律の規定を適用する旨規定しています。

ロ 所得税法第13条第2項は、信託の変更をする権限(軽微な変更をする権限として政令で定めるものを除きます。)を現に有し、かつ、当該信託の信託財産の給付を受けることとされている者(受益者を除きます。)は、同条第1項に規定する受益者とみなして、同項の規定を適用する旨規定しています。

ハ 所得税法施行令第52条《信託財産に属する資産及び負債並びに信託財産に帰せられる収益及び費用の帰属》第1項は、所得税法第13条第2項に規定する政令で定める権限は、信託の目的に反しないことが明らかである場合に限り信託の変更をすることができる権限とする旨規定し、所得税法施行令第52条第2項は、所得税法第13条第2項に規定する信託の変更をする権限には、他の者との合意により信託の変更をすることができる権限を含むものとする旨規定しています。

 

2 回答

(1) はじめに(信託とは)

信託とは、委託者が、金銭や不動産など自身の財産を、受託者に託し、受託者が委託者の決めた目的に従って、受益者のために管理・運用・処分などを行う制度です。

(2) 信託設定時

甲は、相続税法第9条の2第1項に規定する特定委託者に該当することから、相続税法第9条の2第1項の規定により、信託の効力が生じた場合において、適正な対価を負担せずに当該信託の受益者等となる者があるときは、当該信託の効力が生じた時において、当該信託の受益者等となる者は、当該信託に関する権利を当該信託の委託者から贈与により取得したものとみなされます。

しかしながら、委託者と特定委託者は、いずれも甲という同一の者であり、また、甲が信託財産である本件土地を拠出していることから、特に課税関係は生じません。

なお、本件信託契約に係る信託期間中に、甲の孫である丙が出生し権利を有する受益者となった場合には、その時に甲から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されます。

(3) 信託期間中

甲は、所得税法第13条第2項に規定するいわゆるみなし受益者に該当することから、所得税法第13条第1項本文の規定により、信託の受益者は当該信託の信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされ、かつ、当該信託財産に帰せられる収益及び費用は当該受益者の収益及び費用とみなされます。

したがって、甲は、信託財産である本件土地に帰せられる収益及び費用について、所得税が課税されます。

(4) 信託終了時

所得税法第13条第1項本文の規定により、本件信託契約の受益者である丙は、信託財産に属する資産及び負債を有するものとみなされ、みなし受益者が信託財産である本件土地を受け取る場合には、信託終了時には、特に課税関係は生じません。

なお、甲以外の者が適正な対価を負担せずに信託財産である本件土地を受け取る場合には、甲から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されます。

(5) 甲の孫となる者が出生し権利を有する受益者となった場合

本件信託契約に係る信託期間中に甲の孫となる者が出生し権利を有する受益者となった場合には、相続税法第9条の2第2項の規定により、その時において、出生した孫は、信託に関する権利を甲から贈与により取得したものとみなされて贈与税が課税されるほか、信託財産である本件土地に帰せられる収益及び費用について、所得税が課税されます。 

 

 

作成日:令和7年9月24