【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に死亡した甲の相続財産には、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(以下「本件土地」といいます。)が含まれていたところ、本件土地は、都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化区域内に所在しており、また、その東側が幅員約6mの市道〇号線(以下「本件東側道路」といいます。)に、その西側が幅員約3mのいわゆる里道(法定外道路であり、以下「本件西側道路」といいます。)にそれぞれ接面しています。
(2) 本件西側道路は、不特定多数の者の通行の用に供されていますが、建築基準法上の道路には該当しません。
(3) 令和X年分の財産評価基隼書によれば、本件宅地は路線価地域に所在しており、本件東側道路には100,000円の路線価が、本件西側道路には40,000円の路線価がそれぞれ設定されています。
2 質疑事項
本件土地の価額の評価に当たって、本件西側道路について、財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)17《二方路線影響加算》に定める二方路線影響加算をする必要がありますか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 評価通達関係
イ 評価通達7《土地の評価上の区分》は、土地の価額は、原則として、宅地、田、畑、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地及び雑種地の地目の別に評価する旨定め、また、その注書は、地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則第68条《地目》及び第69条《地目の認定》に準じて行う旨定めています。
ロ 評価通達13《路線価方式》は、路線価方式とは、その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、評価通達15《奥行価格補正》から20-7《容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価》までの定めにより計算した金額によって評価する方式をいう旨定めています。
ハ 評価通達14《路線価》は、評価通達13の「路線価」は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいいます。以下同じ。)ごとに設定する旨定めています。
ニ 評価通達14-3《特定路線価》は、路線価地域内において、相続税、贈与税又は地価税の課税上、路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には、当該道路を路線とみなして当該宅地を評価するための路線価(以下「特定路線価」といいます。)を納税義務者からの申出等に基づき設定することができる旨定めています。
ホ 評価通達16《側方路線影響加算》は、正面と側方に路線がある宅地の価額は、次の(イ)及び(ロ)に掲げる価額の合計額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する旨定めています。
(イ) 正面路線(原則として、評価通達15の定めにより計算した1㎡当たりの価額の高い方の路線をいいます。以下同じ。)の路線価に基づき計算した価額
(ロ) 側方路線(正面路線以外の路線をいいます。)の路線価を正面路線の路線価とみなし、その路線価に基づき計算した価額に付表2「側方路線影響加算率表」に定める加算率を乗じて計算した価額
へ 評価通達17は、正面と裏面に路線がある宅地の価額は、次の(イ)及び(ロ)に掲げる価額の合計額にその宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価する旨定めています。
(イ) 正面路線の路線価に基づき計算した価額
(ロ) 裏面路線(正面路線以外の路線をいいます。)の路線価を正面路線の路線価とみなし、その路線価に基づき計算した価額に付表3「二方路線影響加算率表」に定める加算率を乗じて計算した価額
(2) 不動産登記事務取扱手続準則関係
不動産登記事務取扱手続準則第68条の(3)は、宅地の地目は、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地について定める旨定めています。
(3) 建築基準法関係
イ 建築基準法第42条第1項は、同法第3章《都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途》の規定において「道路」とは、次の(イ)ないし(ホ)のいずれかに該当する幅員4m(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、6m。)以上のもの(地下におけるものを除きます。)をいう旨規定しています。
(イ) 道路法による道路(第1号)
(ロ) 都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による道路(第2号)
(ハ) 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は建築基準法第68条の9第1項の規定に基づく条例の制定若しくは改正により同法第3章の規定が適用されるに至った際現に存在する道(第3号)
(ニ) 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの(第4号)
(ホ) 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの(第5号)
ロ 建築基準法第43条《敷地等と道路との関係》第1項は、建築物の敷地は、道路(次の(イ)及び(ロ)に掲げるものを除きます。)に2m以上接しなければならない旨規定しています。
(イ) 自動車のみの交通の用に供する道路
(ロ) 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第12条の11の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限ります。)内の道路
ニ 建築基準法第43条第2項は、同条第1項の規定は、次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する建築物については、適用しない旨規定しています。
(イ) その敷地が幅員4m以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限ります。)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの(第1号)
(ロ) その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの(第2号)
(4) 特定路線価の設定の申出手続関係
特定路線価の設定の申出手続において、名古屋国税局のホームページには、「特定路線価設定申出書の提出チェックシート」が掲載されているところ、その注書の1は、特定路線価は、原則として「建築基準法上の道路等」に設定している旨、「建築基準法上の道路等」とは、建築物の建築に必要とされる道路等であり、①「建築基準法第42条第1項第1号~5号又は第2項」に規定する道路、②「建築基準法第43条第2項1号又は2号」の規定に該当する又は該当することが確実と認められる建築物の敷地に面する道をいう旨記載されています。(https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/topics/tokutei_kobetsu/tokutei_rosenka.htm)
2 裁判例等
国税不服審判所平成28年5月6日裁決は、要旨、次のとおり裁決しています。
(1) 評価通達15ないし20-5((注)現行の評価通達では20-7)は、路線価方式により宅地を評価する一連の定めであるところ、評価通達14は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ごとに路線価を設定する旨定めるのみで、ここにいう「道路」を建築基準法上の道路に限定する定めは置かれていない。
(2) この点、請求人らは評価通達にいう「路線」は建築基準法上の道路に限られる旨主張し、その根拠として平成17年7月1日の裁決(沖裁(諸)平17第1号)を掲げるが、当該裁決は、河川区域内に存する河川管理上の通路に付された路線価を正面路線価として評価すべきか否かについて争われたものであり、建築基準法上の道路に限られる旨を判断したものではないから、当該裁決をもって請求人らの主張を採用することはできない。
また、請求人らは「〇〇〇〇」((注)裁決においてはマスキングされていますが、「特定路線価設定申出書の提出チェックシート」を示すものと思われます。)を根拠として、特定路線価の設定については建築基準法上の道路以外の道路を対象としていない旨主張するが、特定路線価は、「路線価」が付されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に、当該道路を路線とみなして路線価を設定するのであって、特定路線価を設定するよう申し出る対象と評価通達14に定める「路線」の定義内容が異なることは当然であるから、特定路線価に関する事項をもって評価通達14に定める「路線」の要件を限定する根拠とはならず、請求人らの主張を採用することはできない。
3 回答
(1) 評価通達16及び評価通達17の趣旨
正面と側方に異なる二系統の路線がある宅地又は正面と裏面に異なる二系統の路線がある宅地は、利用開口部が大きくなって出入りの便が良くなるほか、採光、通風にも有利になるため、側方路線又は裏面路線の影響を受け、正面路線だけに接する宅地よりも価額が高くなることから、これを財産価値の増加要因とみて、そのような宅地の価額については、評価通達16又は評価通達17のとおり、側方路線影響加算又は二方路線影響加算をして評価することとしています。
(2) 路線価の設定の対象となる道路
評価通達14、評価通達16及び評価通達17の各定めからすれば、側方路線影響加算又は二方路線影響加算をすべきか否かは、結局のところ、路線価の設定の対象となる道路とは何かによることとなり、その考え方には、次のイ及びロの考え方があるものと思われます。
なお、道路とは広く一般公衆の通行の用に供されている物的施設をいうものと解されるところ、それには法律上公物としての性質を認めて特殊の法的規制を加えた公道と、その開設、維持、管理等について若干の保護、助成等のための規制を設けられた私道、あるいは何らの規制を設けられていない私道が存在します(参考:国税不服審判所平成15年5月21日裁決)。
イ 不特定多数の者の通行の用に供されている道路とする考え方
評価通達14は、路線価を設定する道路の要件として、「不特定多数の者の通行の用に供されている道路」のみを定めており、これ以外の要件を付加していないことから、路線価を設定する道路とは、不特定多数の者の通行の用に供されている道路のみであるということになり、この考え方によれば、公道であるか否か、法律上の道路であるか否か、舗装されているか否か、車両が通行できるか否か、あるいは道路幅員等とは無関係に、不特定多数の者の通行の用に供されている道路であれば、路線価を設定することとなります。
ロ 上記イのうち建築基準法上の道路とする考え方
評価通達13に定める路線価方式は、宅地の評価を前提としており、また、評価通達7の注書は、地目の判定は、不動産登記事務取扱手続準則第68条及び第69条に準じて行う旨定めているところ、同準則第68条の(3)において、宅地とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地である旨定めていることから、路線価方式とは、建物の敷地及びその維持若しくは効用を果たすために必要な土地である宅地の評価に適用されるものであり、この考え方によれば、不特定多数の者の通行の用に供されている道路であり、かつ、建築基準法上の道路に、路線価を設定することとなります。
そして、特定路線価の設定の申出手続において、名古屋国税局のホームページには、「特定路線価設定申出書の提出チェックンート」が掲載されているところ、実務上、特定路線価は、原則として「建築基準法上の道路等」に設定しているものと考えられます。
(3) 回答
評価通達14は、路線価は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ごとに設定する旨定めており、ここに定める「道路」を建築基準法上の道路に限定する定めはありません。
そうすると、評価通達17に定める「路線」は、建築基準法上の道路に限定されないところ、本件西側道路は不特定多数の者の通行の用に供されている道路であるため、評価通達14に定める路線に該当します。
したがって、本件土地の価額は、評価通達17に定める二方路線影響加算をして評価することとなります。
【参考】
◎ 不特定多数の者の通行の用に供されている道路について
財産評価基本通達逐条解説における評価通達24《私道の用に供されている宅地の評価》を参考として、不特定多数の者の通行の用に供されている道路の例を具体的に挙げると、次のようなものがあります。
① 通り抜けできる道路
② 行き止まりの道路であるが、その道路を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センター及び公園などの公共施設や商店街等に出入りしている場合などにおけるその道路
③ 道路の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられており、不特定多数の者が利用している場合などのその道路
作成日:令和7年9月24日
