【質疑内容】
1 事実関係
(1) 令和X年4月1日に死亡した甲の相続財産には、〇〇市〇〇町〇丁目〇番に所在する土地(以下「本件土地」といいます。)が含まれていたところ、本件土地は、都市計画法第7条《区域区分》に規定する市街化区域内に所在しており、また、その東側が幅員約4mの道路(以下「本件東側道路」といいます。)に接面しています。
(2) 本件東側道路は、不特定多数の者の通行の用に供されていませんが、令和X年分の財産評価基隼書によれば、本件東側道路には60,000円の路線価が設定されています。
2 質疑事項
本件土地の価額の評価に当たって、本件東側道路に設定された路線価をどのように解して評価すればよいでしょうか。
【回答内容】
1 関係法令等
(1) 評価通達関係
イ 評価通達14《路線価》は、「路線価」は、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線(不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいいます。以下同じ。)ごとに設定する旨定めています。
ロ 評価通達14-3《特定路線価》は、路線価地域内において、相続税、贈与税又は地価税の課税上、路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合には、当該道路を路線とみなして当該宅地を評価するための路線価(以下「特定路線価」といいます。)を納税義務者からの申出等に基づき設定することができる旨定めています。
(2) 建築基準法関係
イ 建築基準法第42条第1項は、同法第3章《都市計画区域等における建築物の敷地、構造、建築設備及び用途》の規定において「道路」とは、次の(イ)ないし(ホ)のいずれかに該当する幅員4m(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、6m。)以上のもの(地下におけるものを除きます。)をいう旨規定しています。
(イ) 道路法による道路(第1号)
(ロ) 都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による道路(第2号)
(ハ) 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は建築基準法第68条の9第1項の規定に基づく条例の制定若しくは改正により同法第3章の規定が適用されるに至った際現に存在する道(第3号)
(ニ) 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの(第4号)
(ホ) 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの(第5号)
ロ 建築基準法第43条《敷地等と道路との関係》第1項は、建築物の敷地は、道路(次の(イ)及び(ロ)に掲げるものを除きます。)に2m以上接しなければならない旨規定しています。
(イ) 自動車のみの交通の用に供する道路
(ロ) 地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第12条の11の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限ります。)内の道路
ハ 建築基準法第43条第2項は、同条第1項の規定は、次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する建築物については、適用しない旨規定しています。
(イ) その敷地が幅員4m以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省令で定める基準に適合するものに限ります。)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの(第1号)
(ロ) その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの(第2号)
(3) 特定路線価の設定の申出手続関係
特定路線価の設定の申出手続において、名古屋国税局のホームページには、「特定路線価設定申出書の提出チェックシート」が掲載されているところ、その注書の1は、特定路線価は、原則として「建築基準法上の道路等」に設定している旨、「建築基準法上の道路等」とは、建築物の建築に必要とされる道路等であり、①「建築基準法第42条第1項第1号~5号又は第2項」に規定する道路、②「建築基準法第43条第2項1号又は2号」の規定に該当する又は該当することが確実と認められる建築物の敷地に面する道をいう旨記載されています。(https://www.nta.go.jp/about/organization/nagoya/topics/tokutei_kobetsu/tokutei_rosenka.htm)
2 裁判例等
国税不服審判所平成28年5月6日裁決は、要旨、次のとおり裁決しています。
(1) 評価通達15ないし20-5((注)現行の評価通達では20-7)は、路線価方式により宅地を評価する一連の定めであるところ、評価通達14は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ごとに路線価を設定する旨定めるのみで、ここにいう「道路」を建築基準法上の道路に限定する定めは置かれていない。
(2) この点、請求人らは評価通達にいう「路線」は建築基準法上の道路に限られる旨主張し、その根拠として平成17年7月1日の裁決(沖裁(諸)平17第1号)を掲げるが、当該裁決は、河川区域内に存する河川管理上の通路に付された路線価を正面路線価として評価すべきか否かについて争われたものであり、建築基準法上の道路に限られる旨を判断したものではないから、当該裁決をもって請求人らの主張を採用することはできない。
また、請求人らは「〇〇〇〇」((注)裁決においてはマスキングされていますが、「特定路線価設定申出書の提出チェックシート」を示すものと思われます。)を根拠として、特定路線価の設定については建築基準法上の道路以外の道路を対象としていない旨主張するが、特定路線価は、「路線価」が付されていない道路のみに接している宅地を評価する必要がある場合に、当該道路を路線とみなして路線価を設定するのであって、特定路線価を設定するよう申し出る対象と評価通達14に定める「路線」の定義内容が異なることは当然であるから、特定路線価に関する事項をもって評価通達14に定める「路線」の要件を限定する根拠とはならず、請求人らの主張を採用することはできない。
3 回答
評価通達14は、路線価は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ごとに設定する旨定めており、ここに定める「道路」を建築基準法上の道路に限定する定めはないことから、路線価を設定する道路とは、公道であるか否か、法律上の道路であるか否か、舗装されているか否か、車両が通行できるか否か、あるいは道路幅員等とは無関係に、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ということになります。
しかしながら、実際の路線価図における路線価の設定の状況をみると、必ずしも、上記のような状況にはないものが少なからず見受けられることから、不特定多数の者の通行の用に供されていない道路(例えば行き止まりの道路)に路線価が設定されている場合に、当該路線価をどのように解するかという問題が生じます。すなわち、当該道路は、不特定多数の者の通行の用に供されていない道路であるため、評価通達14の定めにより、本来、路線価の設定の対象となる道路には当たらないことから、当該道路に設定されている路線価をどのように解すべきかという問題です。
(1) 本件東側道路が建築基準法上の道路に該当しない場合
本件東側道路が建築基準法上の道路に該当しない場合には、本件東側道路は、①評価通達14に定める路線価を設定すべき道路には該当しないこと及び②仮に、本件東側道路に路線価が設定されていなかったとしても、「特定路線価設定申出書のチェックシート」の注書の1のとおり、特定路線価の設定の対象となる道路にも当たらないことから、路線価の設定自体が誤りであると解さざるを得ません。
したがって、本件東側道路に路線価が設定されていないものとして本件土地を評価することとなるものと考えられます。
(2) 本件東側道路が建築基準法上の道路に該当する場合
本件東側道路が建築基準法上の道路に該当する場合には、本件東側道路は、不特定多数の者の通行の用に供されている道路ではなく、かつ、建築基準法上の道路に該当することから、路線価を設定せず、本件東側道路のみに接している宅地を評価する必要が生じた場合に、納税義務者からの申出等に基づき特定路線価を設定するのが本来のあり方であったものと考えられます。
そして、本件東側道路のみに接している宅地を評価する必要が生じた場合に特定路線価を設定することを考慮すれば、本件東側道路が路線価の設定の対象となる道路には当たらないことを前提として、納税義務者の利便性等を考慮し特定路線価と同等(同様)のものをあらかじめ設定していたものと解するのが自然であり、合理的であると考えられます。
以上のように解するとすれば、本件東側道路に設定された路線価の評定において、不合理と認められる特段の事情がない限り、本件東側道路に設定された路線価を基に画地調整を行って評価することになるものと考えられます。
なお、特定路線価は、路線価の設定されていない道路のみに接している宅地を評価するための路線価であることから、路線価の設定されていない道路と路線価の設定されている道路とに接している宅地の評価に当たっては、その路線価の設定されでいない道路に設定された特定路線価についての評価通達16《側方路線影響加算》に定める側方路線影響加算、評価通達17《二方路線影響加算》に定める二方路線影響加算又は評価通達18《三方又は四方路線影響加算》に定める三方又は四方路線影響加算の適用はありません。
【参考】
◎ 不特定多数の者の通行の用に供されている道路について
財産評価基本通達逐条解説における評価通達24《私道の用に供されている宅地の評価》を参考として、不特定多数の者の通行の用に供されている道路の例を具体的に挙げると、次のようなものがあります。
① 通り抜けできる道路
② 行き止まりの道路であるが、その道路を通行して不特定多数の者が地域等の集会所、地域センター及び公園などの公共施設や商店街等に出入りしている場合などにおけるその道路
③ 道路の一部に公共バスの転回場や停留所が設けられており、不特定多数の者が利用している場合などのその道路
作成日:令和7年9月24日
