相続税の調査は、一般的には、調査官2名以上が被相続人又は相続人の自宅を訪れ、調査官から、おおむね午前中に、被相続人、相続人及びその他親族の経歴等や相続財産の状況等について、各種多様なことを聴取され、午後には、相続財産や債務等に関する各種書類の現物を確認されます。また、調査官は、必要であると判断した場合には、相続人等の許可を得た上で、証拠保全のため、これらの各種書類等をコピーしたり、デジタルカメラで撮影をしたりするほか、貸金庫がある場合には、貸金庫まで同行され、その中を確認されます。
なお、相続税の調査の事前連絡後調査の実施日までの間は、貸金庫を開けない方が無難です。銀行には開閉記録が残り、後日、調査官は、必ず開閉記録を調べます。事前連絡後調査の実施日までの間に貸金庫の開閉記録があった場合には、調査官に、何か隠したのではないかと疑われるおそれがあります(どうしても貸金庫を開ける必要がある場合には、調査官へその旨伝えた方がよいと思います。)。
調査官から聴取されたことについては、正直に答え、決して嘘をつかないようにしてください。また、知らないことは知らない旨、覚えていないことは覚えていない旨答えてください。調査官は、相続税の調査に当たって、事前に綿密な準備調査を行っており、準備調査により知っていることもあえて聴取してくるので注意してください。
さて、本題です。
被相続人や相続人の状況により聴取の内容に濃淡はありますが、相続税の調査において聴取されることは、おおむね次の項目で、その究極の目的は、相続財産の申告漏れ、債務等の過大計上、あるいは申告漏れなどに繋がる手掛かりを探るためです(以下においては、主に項目のみを例示的に列挙します。)。
1 被相続人の経歴等
(1) 被相続人の父母、祖父母その他親族からの相続等
被相続人の父母、祖父母その他親族からの相続財産又は贈与を受けた財産があるか否か(当該財産がある場合、遺産分割協議書、遺言書又は贈与契約書などがあるか否か、当該財産が被相続人の相続財産として申告されているか否か、申告されていない場合当該財産はどうなったか)など。
(2) 被相続人の本籍地、出身地、事業に係る営業所の所在地、住所移転の状況等
被相続人の本籍地、出身地、事業に係る営業所はどこか、そこに相続財産があるか否か、被相続人に住所移転があるか否かなど。
(3) 被相続人の職歴
被相続人の過去の職歴、その際の収入の状況及び支出の状況など。
2 被相続人の趣味・嗜好等
被相続人の趣味・嗜好は何か(貴金属、書画骨董、自動車、ゴルフ会員権等の所有の有無)、日記帳や備忘録、メモ等があるか否か、パソコンやタブレット、スマホに記録等があるか否か、交友関係及び香典帳など。
3 相続人及びその親族関係等
(1) 相続人及びその家族等
被相続人の父母、祖父母、兄弟、子、孫等相続人及びその親族関係、それらの者の住所、生年月日、職業(勤務先、学校等)、収入の状況など。
(2) 被相続人との間の贈与又は貸借
被相続人と親族との間での贈与の有無(贈与がある場合、贈与により取得した財産は何か、贈与税の申告の有無など)、金銭貸借の有無(金銭貸借がある場合、金銭消費貸借契約書又は借用書の有無、貸借の目的、貸借の金額、返済計画、返済状況など)。
4 被相続人の死亡時の状況等
死亡原因、病名、発病時期、病状、入院先、入院期間、医療費の支払者、高額療養費や入院給付金等医療費の補填の有無、入院時及び死亡時の財産管理の状況、老人ホームなどの施設への入所状況(老人ホームなどの施設へ入所していた場合には、入所先、入所時期、入所期間中の被相続人の財産管理は誰が行っていたか)など。
5 財産の管理・運用の状況等
(1) 取引金融機関
被相続人及びその親族それぞれについて、取引している(又は取引していた)銀行、証券会社、生命保険会社などはどこか、担当者の有無(担当者がいる場合、担当者は誰か)など。
(2) 賃貸不動産
被相続人及びその親族それぞれについて、所有する賃貸不動産に係る管理の状況(管理者、賃料の入金先預貯金口座、保証金や敷金の有無など)。
(3) 現金
現金について、確認したのは誰か、保管場所はどこか、どのような方法で確認したのか(現金が多額の場合、いつ、どこの金融機関から出金した現金か、多額の現金を保有していた理由、その現金をどうしたか)など。
(4) 預貯金
被相続人及びその親族のそれぞれについて、相続開始前及び相続開始後の預貯金口座の管理・運用の状況(預貯金口座に係る通帳、届出印、キャッシュカードなどの保管者、保管場所、使用者、貸金庫の有無など)。
(5) 有価証券
被相続人及びその親族のそれぞれについて、相続開始前及び相続開始後の証券口座の管理・運用の状況(証券口座に係る売買の注文者、届出印、証券カードなどの保管者、保管場所、使用者など)。
(6) 生活費
被相続人及びその親族のそれぞれについて、生活費は月どの程度要しているか(又は要していたか)、その負担者は誰か、冠婚葬祭や大学の入学金などの臨時的な支出の有無、これらの負担者は誰か、親族以外に被相続人が経済的な援助をしていた者の有無など。
6 相続財産の調査の状況等
相続財産の調査について、いつ、誰が、どのような方法(どのような書類)で確認したか、相続人全員で調査をしたのか(それとも誰かが代表して調査をしたのか)、その他、相続開始前の高額な出金の使途、相続開始直前に出金した現金は確認したか、名義預金等の検討をしたかなど。
7 遺言書の有無及び遺産分割協議の状況等
(1) 遺言書
遺言書の有無(遺言書がある場合、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の別、作成時期、内容、内容に対する相続人の主張、家庭裁判所の検認の有無など)。
(2) 遺産分割協議の状況等
遺産分割協議の時期、相続人の遺産分割の方向性に関する主張など(遺産分割協議が成立している場合、遺産分割協議のとおりに相続財産の名義変更などの手続が行われているか)。
未分割の場合には、未分割の理由、相続争いの有無、家庭裁判所における調停(又は審判)の状況など。
(3) 形見分け
形見分けの有無(形見分けがある場合、いつ、どこで、誰が、どのような形見分けの品を受け取ったかなど)。
8 相続税の申告書の作成等
相続税の申告書の作成や相続財産の評価をしたのは税理士か、それとも相続人か(相続人の場合、誰か、どのように相続税の知識を得たか)、相続税はそれぞれ相続人が自己の資金で納税しているかなど。
作成日:令和7年12月3日
